京都訴訟控訴審も「国の賠償責任認めず」+「東電の重過失を認めず」
※2025/1/16 控訴審の判決要旨を追加原発賠償京都訴訟・控訴審で判決言い渡し 2024年12月18日・水曜日・11時から、大阪高等裁判所202号法廷で「原発賠償京都訴訟」(※)の控訴審判決公判(牧賢二裁判長)が行われました。※ 2011年3月11日に発生したフクイチ核災害により、京都府へ避難を余儀なくされた住民57世帯175名が、国と東電に対して事故の責任の明確化と約8億5000万円の賠償支払いを求めた集団訴訟。2013年9月17日以降、複数回に渡って京都地裁へ提訴した(第1~3次提訴)。 2017年9月29日に結審し、2018年3月15日、京都地裁(浅見宣義裁判長)は国と東電に対し、連帯して原告110名へ約1億1000万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。 原告・被告とも判決内容を不服として大阪高裁へ控訴し、2024年5月22日に結審していた。 私は前日の夜から大阪に宿泊し、当日午前10時10分から傍聴整理券交付の列に並びました。 傍聴席64席に対して160人が並んで倍率2.5倍でしたが、当選しました。 フクイチ核災害起因の集団訴訟で判決を傍聴するのは、10月16日の広島地裁以来、約2ヶ月振りでした(福島原発ひろしま訴訟)。 2022年6月17日に、最高裁が先行していた類似の集団訴訟4件(「生業・第一陣」「千葉・第二陣」「愛媛」「群馬」)について、「国の賠償責任を否定する」判決を下して以来、集団訴訟では同じ判決が続いており、最高裁判決も含めると、ひろしま訴訟まで14回連続で国の賠償責任が否定されています。(リンク/最高裁判決の全文)●国の賠償責任を認めなかった6月17日の最高裁判決(22年6月19日の拙ブログ記事) しかも、その理由は「地震調査研究推進本部の『長期評価』による予測津波よりも、実際に来襲した津波は規模が大きく、襲来方向も予測と異なっていた。長期評価に基づいて、国が東電に防護措置を命じていたとしても、事故発生が防げなかった可能性が相当高く、国の規制権限不行使と被害との間には因果関係が認められない。従って、国に賠償責任は無い」というものです。 更に最高裁を含めて、多くの判決は、フクイチの津波対策を「敷地の海側を覆う防潮堤」に限定していて、建屋の水密化(開口部の閉塞、等)や電源関係設備の高台移転や複数系統化については「当時はその考え方は一般的ではなかった」等という理由でまともに取り合っていません。 私には、裁判体が事実を公平且つ独立して審理した結果ではなく、「国を免責したい」という結果ありきで判決を下し続けているように見えます。私の感覚がおかしいのでしょうか? この国は三権分立であり、司法が行政の追認機関や承認機関と化してしまえば、国民は行政の裁量権の中で生きていくことになり、行政の言いなりにならざるを得ません。 司法が行政に追随したり、阿っている(と、思われる)現状を変えるには、「国の賠償責任が退けられ続けている」流れを何処かで断ち切らなければなりません。 京都訴訟控訴審では、口頭弁論の度に原告や支援者が裁判所一周パレードを行い、地裁段階から原告の多くが顔出し・名前出しで訴訟を継続してこられました。類似の集団訴訟の中でも知名度が高く、原告数も多く、控訴審では珍しいことに原告の本人尋問も実施しています。 そのような経緯もあり、私は、京都訴訟控訴審の判決では、フクイチ核災害を招いた国の賠償責任が認められるかと思って傍聴しました。15回連続の「国の賠償責任認めず」、更に「東電の重過失とは言えない」 判決当日、被告席には、国・東電とも2人ずつ計4人が座りました。 傍聴席は12席が「関係者席」として割り当てられていました。原告・被告とも6席ずつだったようです。左前方(裁判官席から見て左)には被告の関係者が6名座っていたように見えました。 記者席が14席で、ほぼ満席でした。 当日はテレビカメラによる撮影が認められており、法廷の最後方に三脚に乗ったテレビカメラがセットされていました。 牧裁判長以下、3名の裁判官は10時57分に入室し、そこから撮影が2分間行われました。 この頃には原告席は溢れんばかりの人数になっていて、傍聴席も満席でした。私語もやみ、法廷内は僅かな物音以外は静かでした。 テレビカメラが回っている間、牧裁判長は微笑を浮かべているようにも見えました。胸中、何が去来していたのでしょうか。 10時59分に撮影終了が合図され、テレビクルーが静かに手早く退室します。 11時丁度に牧裁判長が開廷を宣言し、「判決言い渡しを行います」の言葉から始まりました。 判決要旨の言い渡しの大半は、「原告番号○○番」という主語から始まるもので、私には、半分以上は理解できなかったかも知れません。 とは言え「原判決の国の敗訴部分を取り消す」「東電の故意又は重過失とは言えない」はメモできました。 私は「またか」と思いました。 10月のひろしま訴訟に続いて「東電の重過失とは認められない」の登場です。 判決言い渡しに10分余。言い渡しが終る頃、女性の声で「不当判決!」の声が飛びましたが、裁判官達は何も顧みずに法廷を後にしました。 通路が混んでいたので、私はゆっくりと法廷を後にしました。 2階から1階への階段に向かったところ、法廷に出入りする廊下で、原告や弁護士の皆さんが輪になって立ち話をしているのが見えました。 上告するかどうかの話し合いだったのでしょう。 私はトイレに寄ってから高裁の建物を出ました。 裁判所向かい側の公園で予定されていた集会に向かう原告の皆さんの足取りは重く、表情は沈んでいました。当然でしょう。「国に賠償を求める理由が無い」と判決されたのです。 避難の相当性も認められず、国連特別報告者による報告も全て一蹴されました。 以後、記者会見や報告集会の様子は割愛します。 おしどりマコケンさんのツイキャス動画が保存されているので、リンクしておきます。(リンク)●判決前集会(約30分)●判決後集会とパレード(約70分)●中央公会堂での記者会見と報告集会(約2時間) 判決で、私が重要視した内容は次の通りです(報告集会で配布されたものと、後にWebにアップされたものからの抜粋。読み易いように文章を変更し、簡略化しています。判決要旨は当記事の真ん中ほどに記載しました)。●東電は原告166名の内、92名に対して約1億1000万円を支払うこと(判決要旨4頁)。●東電に故意又は重過失があったとは認められないので、慰謝料を増額する理由は無い(判決要旨3頁)。●一審の国の敗訴部分は取り消す。長期評価に基づいて国が東電に津波対策を命じ、東電が対策を講じていたとしても、予測されていた津波と実際に来襲した津波は規模と方向が大きく異なっていたので、事故発生が防げなかった可能性が相当高い。従って、国の規制権限不行使とフクイチ事故で生じた被害には因果関係が認められない。よって、国への賠償請求は理由がない(判決要旨2~3頁)。●放射性物質が放出されたことによる避難の相当性が認められるのは2011年12月まで。個別の状況によってはそれ以降も避難を開始する相当性が認められる場合はあるが、何れの場合も避難が認められる期間は避難開始から概ね2年間(判決要旨3~4頁)。●当時はドライサイトコンセプト(防潮堤か、敷地の嵩上げによって海水が原発敷地内に流入しないようにすること)の考え方で各種対策が検討されていた。建屋の全面的な水密化は、海水が敷地に流入することを前提とした考え方であり、そのような手法が当時の技術的水準で一般的に採用されていたとは評価し難い。従って、国はドライサイトコンセプトを維持できるかどうかで対策の是非・内容を判断せざるを得なかったのであり、建屋の水密化を命じる根拠があったとは言えない。 又、他の原子力事業者が建屋を水密化し、東電自らもそれを検討した経緯はあるが、何れも局所的・限定的なものであり、実施したとしても、本件事故を回避できたとは言い難い(判決本文29~36頁)。●長期評価は学者の間で必ずしも一致した見解ではなかった。又、海抜10mを超える高さの津波が襲来する可能性は10万~100万年に1回とする試算もあった。従って、(直ちにフクイチの運転停止を求めるなど)経産大臣の権限の不行使が、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとまでは言えない(判決本文36~37頁)。 国の賠償責任を認めない判決は、22年6月の最高裁以降、15回連続です。22年4月の「さいたま訴訟判決」を含めれば(さいたま地裁判決で「例え国が対策を命じていたとしても、予測と現実が大きく異なっていたから、事故発生は防げなかった」という論理が登場しました)、16回連続です。 司法界には「行政と対立しない」という暗黙の了解でもできているのでしょうか? 又、私が危惧しているのは、「国を免責する」流れに、「東電の重過失とは言えない」という新たな流れが加わりつつあることです。広島地裁に続いて、大阪高裁でも「東電の重過失とは言えない」が登場しました。2回連続です。良くない流れです。 国を免責するだけでも国民を蔑ろにする判決だと考えますが、そこに、原子力事業者の責任を軽減化する流れが加わったらどうなるでしょう? 今後、万一、核災害が起きても、国は賠償責任を負わず、原子力事業者も最低限の賠償支払いで済みます。これでは、この国は「核発電を利活用したい側」のやりたい放題になりかねません。 電気も行政も、国民(生活者)の為に存在するのです。 特定の業界や利益団体の為に国民(生活者)が存在するのではありません。これでは、話があべこべです。 司法が行政の補完組織になりつつある状況については、もっと書きたいことがありますが、長くなるので、当記事ではここまでにとどめます。(リンク)●判決書・本文(当事者目録を除く)(大阪高等裁判所・第12民事部)●【原発賠償京都訴訟】大阪高裁が控訴審判決 避難指示区域外の避難相当性「2012年1月以降開始は認めぬ」と大幅後退 国の責任も〝6・17最高裁判決〟コピペでまたもや否定(民の声新聞)判決要旨・弁護団・原告・支援する会の声明 続いて、判決要旨と、判決を受けての、弁護団・原告団・支援する会の声明を順に掲載します。 読み易いように改行していますが、文章は変えていません。尚、原告団共同代表は、苗字のみ記載しました。====原発賠償京都訴訟控訴審・判決要旨、ここから====平成30年(ネ)第1445号、同年(ネ)第2537号 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件判決要旨主文1 一審原告らと一審被告東電との間について略2 一審原告らと一審被告との間について 一審原告らの一審被告国に対する請求を全部棄却する。理由の要旨1 事案の概要 本件は、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う津波の影響により、東京電力福島第一原子力発電所から放射性物質が放出され、居住地周辺が放射性物質により汚染されたため、京都府等への避難を余儀なくされたと主張する一審原告らが、その原因は、東京電力ホールディングス株式会社(旧東京電力株式会社。以下「一審被告東電」という。)が津波の到来を予見し、その対策をすべきであったのにこれを怠り、また、経済産業大臣も、電気事業法に基づく技術基準適合命令を発して、一審被告東電に津波対策をさせるべきであったのに、これを怠ったことにあるとして、一審被告東電及び一審被告国に対し、167名の原告(訴えを取り下げた者を除く。1名は一審被告東電に対する訴えのみ取り下げ。)が合計約8億2000万円の損害賠償を求めた事案である。 なお、原審(京都地裁平成30年[2018年]3月15日判決)は、一審被告東電及び一審被告国の責任をいずれも認め、174名の原告らのうち110名について、合計約1億1100万円の連帯支払いを命じており、原告ら及び被告らに(一審被告国、一審被告東電)の双方から控訴がされていた。2 一審被告国及び一審被告東電の津波の予見可能性 平成14年[2002年]7月に、地震調査研究推進本部(地震調査委員会長期評価部会)から、「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(以下「長期評価」という。)が公表されており、一審被告東電及び一審被告国は、同年の年末頃までには、海抜15.7m程度の高さの津波(平成20年[2008年]試算津波と同等の津波)となることを予見し得たといえる。3 一審被告国の津波の回避可能性 長期評価によって今後発生する可能性があるとされた地震の規模は、津波マグニチュード(Mt)8.2前後であったのに対し、本件地震の規模はMt9.1であり、長期評価に基づいて想定される地震よりも遥かに規模が大きいものであった。また、予見し得た津波による本件原発の主要建屋付近の浸水深は、最大で約5.5mに及んでいる。本件原発の敷地に東側から海水が侵入することは想定されていなかったが、現実には、本件津波の到来に伴い、敷地の南側(南東側)のみならず、東側からも大量の海水が本件敷地に侵入している。 長期評価によって予見し得た津波を前提に本件原発の敷地の浸水を防ぐために設計される防潮堤等は、敷地の南側(南東側)からの海水の侵入を防ぐことに主眼を置いたものとなる可能性が高く、そのような防潮堤等によっては、本件津波の到来に伴って大量の海水が本件原発の敷地に侵入することを防ぐことができなかった可能性が高い。 従って、仮に経済産業大臣が長期評価を踏まえた技術基準適合命令発して、津波による本件原発の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを一審被告東電に義務付け、一審被告東電がその義務を履行していたとしても、本件津波の到来に伴って大量の海水が本件原発敷地に侵入することは避けられなかった可能性が高いから、本件事故と同様の事故が発生するに至っていた可能性が相当にあり、経済産業大臣が技術基準適合命令を発していれば、本件事故又はこれと同様の事故が発生しなかったであろうという関係を認めることはできない。 従って、原告らの一審被告国に対する請求は理由がない。4 一審被告東電の故意又は重過失 一審被告東電は、原告らに対し、原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)に基づく損害賠償義務を負う。しかし、一審被告東電が、本件事故の発生を回避することができなかったことについて、慰謝料増額事由としての故意又は重過失があったとはいえない。5 原告らの避難の相当性⑴ 避難指示等対象区域(旧居住制限区域、緊急時避難準備区域)からの避難には避難の相当性が認められる。⑵ 自主的避難等対象区域からの避難については、平成23年12月31日までに開始されたものについて相当性を認め、平成24年[2012年]1月以降に開始されたものについても個別に相当性を認めることができる場合がある。⑶ これらの区域外の居住者については、①本件原発からの距離、②避難指示等対象区域との近接性、③政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報、④自己の居住する市町村における自主的避難の状況に加えて、⑤避難を実行した時期、⑥居住地と自主的避難等対象区域からの避難者と同等又はこれに準じる場合には、避難の相当性を認める。⑷ 避難継続の相当性が認められるべき期間は、概ね避難の開始から2年間程度を目安とする。6 認定した損害の項目 避難費用(交通費、一時帰宅費用、引越費用)、生活費増加費用(世帯分離による費用増加、家財道具購入費、避難雑費)、逸失利益、精神的苦痛による慰謝料、弁護士費用等を原告ら個別に認める。7 まとめ 以上から、原告らの請求の内、一審被告国に対する請求は全部棄却し、一審被告東電に対する請求は、原告ら166名のうち92名の請求を合計約1億1260万円の範囲で認容し、避難の相当性が認められない原告ら及び損害額の全部について既に弁済を受けた原告らの請求を棄却する。大阪高等裁判所第12民事部裁判長裁判官 牧賢二 裁判官 島戸真 裁判官 内田貴文====京都訴訟控訴審・判決要旨、ここまで========原告団声明、ここから====原発賠償京都訴訟原告団の御報告と御礼皆さまへ 12月18日に大阪高裁で原発賠償京都訴訟の判決が言い渡されました。 朝早くからの事前集会や判決後のパレード、また記者会見から報告集会まで長時間にわたり参加していただきまして本当にありがとうございました。又、遠くから 完全勝利を祈り続けてくださった皆様も 本当にありがとうございました。 皆さんから多くの期待を寄せていただいた京都訴訟ですが、結果は「国の責任を認めない」更に「京都地裁判決で認容されていた原告の棄却」「原発からの距離や避難開始時期で切り捨てをし、避難の正当性を認めない」など血も涙もないような不当判決でした。 大阪高裁では原告の本人尋問や意見陳述で直接裁判官に訴えましたが、私たち原告の被害の実相とは向き合わないどころか、司法の独立性も欠いた結論ありきの判決でした。これまで多くの方々にご支援いただきながら、署名や1万枚ハガキ大作戦、大阪高裁前アピール行動などにも取り組んでまいりましたが、このような結果となり非常に残念であり、また最高裁判決を追随する内容に憤りを感じています。 判決を聞いた時は呆然として脱力するほど法廷内ではすぐには立ち上がれず、退廷の後も原告達だけが暫く動けずにいました。まだ気持ちの整理もつかない原告も多くおり、全員で上告出来るかどうかはまだ不明ですが、例え少数でも私たちは上告し、今までとは戦いの切り口も工夫しながら闘う所存です。 原発事故被災者全員に対する被害回復、恒久対策実現の獲得を目指し、全国各地の原発賠償訴訟の原告や弁護団、支援者の皆さまと連携しながら諦めずに歩み続けてまいります。 京都地裁提訴から始まったこの裁判は11年を経過しましたが、引き続きご支援くださいますよう心からお願い申し上げます。原発賠償京都訴訟原告団共同代表 萩原、福島、堀江====原告団、ここまで========弁護団声明、ここから====弁護団声明 2024年12月18日、大阪高等裁判所第12民事部(牧賢二裁判長)は、福島第一原発事故避難者京都訴訟について判決を言い渡した。 その内容は、多数の学者等から批判されている2022年6月17日最高裁判所第2小法廷(菅野博之裁判長)判決に盲目的に追従し、国の責任を否定したものであって、極めて不当である。私たちは強い怒りをもって抗議する。 私たちの訴訟は、2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原発事故(以下「本件事故」という)により、福島県等から京都に避難を強いられた57世帯174名(高裁判決時55世帯166名)が国及び東京電力ホールディングス株式会社(以下「被告東電」という)を被告として提訴した損害賠償請求訴訟である。 本訴訟の第一審である京都地方裁判所(浅見宣義裁判長)は2018年3月15日、国及び被告東電の責任を認め、約1億1000万円の賠償を命じたが、双方が控訴し、本日の大阪高裁の判決を迎えたものである。 2022年6月17日の最高裁判所第2小法廷の多数意見は、事故前の国の運用を何ら検証せず、所与のものとし、その運用から想定される対策を仮定し、その対策では事故は回避できないと仮定し、結果は変わらないから責任なしとするもので、司法に期待される役割を放棄したものというほかないものであった。重大事故が想定される場合の防護として、多重防護という発想が求められ、推計の誤差を考慮して安全上の余裕を確保するという発想が求められることからも、不当な内容となっている。 かかる多数意見については、三浦守裁判官が「生存を基礎とする人格権は、憲法が保障する最も重要な価値であり、これに対し重大な被害を広く及ぼし得る事業活動を行う者が、極めて高度な安全性を確保する義務を負うとともに、国が、その義務の適切な履行を確保するため必要な規制を行うことは当然」と述べ、原子力安全規制法令の趣旨・目的を明らかにしたうえで、「長期評価」の信頼性を認め、防潮堤の設置や建屋の水密化の対策により事故を避けられたとする反対意見を付している。 そのため、我々は、大阪高等裁判所における審理の中で、多数意見の非論理性、不合理性を指摘し、三浦裁判官の反対意見の正当性を詳細に論証する等、主張立証を尽くしてきた。 しかしながら、本日の大阪高等裁判所の判決の内容は冒頭に述べたとおりである。 国策に追随する硬直的な判断がなされることは、司法に対する国民の信頼を決定的に失わせるものであり、行政の誤りを司法判断でただすことを求めて日本国憲法が定めている三権分立の意味を失わせるものでもあって、まことに遺憾である。 また、いわゆる避難区域外からの避難者を多く占める本訴訟の原告らの救済についても、その認容額が極めて不十分なものにとどまっているのは、本件甚大な被害の実相を無視し、原告ら原発被害者への憲法13条による人権救済も否定したもので、重ねて遺憾と言わざるを得ない。 私たちは、本日の不当判決を、怒りをもって強く非難するとともに、今後も各地の原発国賠訴訟の原告、弁護団、支援者らと連携を強めながら、来るべき上告審も含め、人権の救済を使命とする司法の役割の実現に向け闘いを続ける決意である。2024年12月18日東日本大震災による被災者支援京都弁護団====弁護団、ここまで========原発賠償京都訴訟を支援する会事務局声明、ここから==== 既にご存じのように、12月18日の大阪高裁第12民事部・牧賢二裁判長は、原発事故の国の責任を否定し、避難開始時期を2011年12月末までと制限することで、避難の相当性を否認される原告が出るなど、責任論においても、損害論においても、政権や最高裁に追随する不当判決でした。(中略) なお、原告と弁護団は、これから上告にむけた取り組みを行いますが、支援する会としては、当面、大阪高裁牧賢二裁判長による不当判決に対する抗議の意志を示す行動を行うとともに、最高裁闘争にむけた体制作りと運動をすすめていきますので、引き続きのご支援をお願いします。(中略)●控訴審判決報告集会(仮称) ・日時:2025年2月2日(日)午後2時開始 ・場所:京都弁護士会館地下ホール ・詳細が決まり次第、チラシやウェブサイトなどでお知らせします。====支援する会、ここまで====次の集団訴訟判決は2025年3月26日 判決当日に発せられた弁護団声明にある「各地の原発国賠訴訟(との)連携」ですが、国・東電を相手取った集団訴訟の次の判決は、日程が決まったものがあります。阿武隈会訴訟控訴審(※):2025年3月26日・水曜日15時・東京高裁 です。※阿武隈会訴訟:福島県田村市都路町地区(旧緊急時避難準備区域)への移住者とその予定者30世帯61名が、自然との共生生活等喪失慰謝料、不動産・家財等の賠償を求めて国・東電を訴えたもの(2016年3月10日以降、4次提訴まで。審理は併合)。 2020年10月9日、東京地裁は、国の賠償責任は認めず、東電の重過失を認めず原賠法上の賠償のみを命ずる判決を言い渡した。 原告・東電とも判決を不服として控訴し、東京高裁での審理は2024年12月16日に結審した。(リンク)●阿武隈会訴訟判決に対する声明(弁護団/2020年10月9日) 私は、この控訴審での2024年10月2日の原告本人尋問は傍聴しました。 3月の判決が、国の賠償責任を認めるのか、「東電の重過失」を認めるのか、要注目です。 最後になりますが、原発賠償京都訴訟原告の皆様、弁護士の皆様、これまで走り続けてきたことに最大限の敬意を表します。上告は期限があることですから、書面の作成等で多忙になると思いますが、一段落ついたら、どうか、心身ともに休んで下さい。 私はこれからも「核災害を防げなかった主権者」「東電の電気の消費者であった事」を肝に銘じて行動し、「核技術を動力源・エネルギー源として用いることは法的に恒久的に禁止すべき」ことを求め続けていきます。春橋哲史(Xアカウント:haruhasiSF)