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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ事故は継続中)

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2018.03.31
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カテゴリ:福島第一原発
​​​​​​ 以前から、当ブログでフクイチ(福島第一原発)について書いてきました。
 又、回数は少ないですが、学習会の講師も務めさせて頂いた事が有ります。その際に、「フクイチを石棺化するのはどうか」という質問を何度か受けました。
 石棺化に関しては、金曜行動でも参加者からお尋ねを頂くことも有り、私の考えもスピーチした事が有りますが、記事として、まとめておきます。


チェルノブイリ原発4号機を覆った石棺は、極めて好い加減なもの

 フクイチ石棺方式を主張・提唱なさる方が根拠にしているのが、1986年4月に過酷事故を起こしたチェルノブイリ原発4号機が、石棺で覆われた事です。
 ですが、この石棺は、建築物としては極めて好い加減なもので、耐震性・耐久性に於いて欠陥を抱えています。地震・津波・火山大国である日本では、到底、通用しない建造物です。

 私は、今年初めにNHKオンデマンドで配信された「チェルノブイリ“鋼鉄シェルター・プロジェクト”のすべて」という番組を観て、その事を知りました(初放送は2017年3月6日。「BS世界のドキュメンタリー」/BBCやNHKを含む国際共同制作チームが独占取材したもの→ 番組のサイト)。

 1986年に建てられた石棺についての番組中での説明は、次の通りです(「」内は春橋が文字起こし)。

​====石棺の説明、ここから====​

ニコライ・スターンバーグ(チェルノブイリ原発・主任技師[当時])の説明
「とにかく、時間が有りませんでした。ですから、本来必要だった、溶接も無し、ボルトも無しという状態だったんです。石棺は、それ自体の重みで立っているだけなんです」


ナレーター
「石棺には、適切な基礎さえありませんでした。瓦礫の上に建てられていたからです。長くはもたないという事は、建設中から分かっていました。 」

ニコライ・スターンバーグ(チェルノブイリ原発・主任技師[当時])の説明
「元々あった、建屋の状態もどうなっているか分かりませんでした。基礎部分も破壊されていたんです。私達は石棺を作り終えると、その寿命について話し合いました。もっても、せいぜい30年と見積もったのです」

​====石棺の説明、ここまで====​

 石棺は、コンクリートと鉄鋼材約30万tを費やし、1986年6月に建設が開始されて11月に完成しました。
 私は恥ずかしながら、チェルノブイリ原発の石棺が劣化しているのは、保守・メンテナンスが出来ないせいだろうと勝手に思い込んでいました。元々、建築物として「欠陥品」だったのですね。

 尚、チェルノブイリ原発の石棺のより詳細な情報は、財団法人「エネルギー総合工学研究所」が2012年3月に経産省に提出した報告書の22~25頁に記載されています。

リンク→「平成23年度発電用原子炉等利用環境調査(スリーマイル島及びチェルノブイリ原子力事故等に関する調査)報告書」

 繰り返しですが、日本は、地震・津波・火山大国です。
 この日本列島で、溶接無し・ボルト締め無し・基礎無しの建築物を、原子炉(しかも、過酷事故を起こし、核燃料の取り出し方法・目途が立てられないもの)を覆うように建てるなど、論外でしょう。リスクを高めるだけで、「百害あって一利なし」の典型的な見本と言えます。

 以上のように、チェルノブイリ原発4号機を覆った石棺は、日本では通用しない工法の建築物です。

 尚、チェルノブイリ原発4号機は、旧来の石棺を含めて覆う、鋼鉄製の巨大シェルターが2017年4月に完成しました。このシェルターは、内側にロボットアーム等が取り付けられており、旧来の石棺を解体できるようになっています。


それでも、フクイチに石棺を主張するとしたら

「フクイチに石棺を」という意見に対しては、「チェルノブイリ原発事故で用いられた石棺は、工法からして、日本では通用しないもの」と指摘して終わりなのですが、それでも、「福島第一に適用できる設計で建築すれば良い」と主張する方はおられるかも知れません。
 念の為、そのような意見に対しても、何点か指摘しておきます。

1.次なる地震・津波の可能性が否定できない為、地震・津波を考慮した強度が必要だが、どの程度の強度にすべきか、根拠が明確に示せない。

2.地下水が建屋に流入している為、地下まで覆う構造にする必要があると思われるが、地下水の流入経路や流入量が実測できておらず、それらの調査期間や調査での被曝線量が未知数。又、使用済み燃料プール等の健全性確保等、地下に埋設されているケーブルで必要なものは迂回させなければいけない。それらの迂回工事にどれだけの期間と人手を要するのか。

3-1.フクイチの1~4号機建屋を覆うように建てる必要があると思われるが、建屋周りは狭隘で、他作業との取り合いを考慮する必要がある。建屋の調査・メンテナンス・汚染水対策の為の工事等が遅延することで、却って、リスク把握・リスク低減を遅らせるのではないか。

3-2.建屋周りは線量が高く、作業員や重機が被曝する。被曝線量の管理を考慮すると、作業員も大人数が必要となり、防護服や装備品等の廃棄物の量を増やすことになる。

4.石棺完成後は「放射性物質を外に出さない」点では効果があるかも知れないが、万が一、気密性が破れれば、放射性物質の大量放出に繋がりかねない。

5.保守・メンテナンスをどのように行うのか。内側からの作業は、防護したとしても、被曝線量を増やすのではないか。

6.耐用年数をどのくらいと見積もるのか。石棺の耐用年数内に、石棺内の1~4号機建屋を解体できれば良いが、フクイチの建屋が解体できなければ、建屋に悪影響を及ぼさないように、石棺を解体しなければならない。フクイチの建屋やデブリの状況が完全に把握できていない状態で、フクイチの建屋解体期間を明確に示すことは無理。従って、石棺の耐用年数を示すことも無理ではないか。

7.石棺もいつかは解体しなければならず、放射性廃棄物となる。建設や解体で付随的に発生する分も含めて、廃棄物の発生量や処分方法の見通しが立てられるのか。

8.設計から解体までに必要となる期間・費用・資機材・人材等の見積もりを、責任を持って行えるのか。

9.石棺の建設期間が数年単位に及ぶ場合には、その間に使用済み燃料プールからの燃料取り出しや、建屋内滞留水の除去に努めて、リスクを低減させた方が合理的ではないのか。

 以上、私が気になる点を列挙しました。

 反原発・脱原発を唱える著名人の中にも、「石棺方式」を推奨する方達はいますが、その方達は上記のような問いかけに答えられるのでしょうか? 仮に答えられたとしても、ご自身が現場で作業して被曝する訳ではないでしょうし、予算も含めたリソースをご自身で確保できる訳でも無いでしょう。
 発生する廃棄物の処分も、恐らくは30~40年後に「将来世代に委ねる」事になるでしょうから、そういった観点からも、石棺方式は「不確実・無責任」と言えます。それでいて被曝線量を増やし、却ってリスクを高くする可能性も有りますから、石棺方式は採用すべきではありません。


それなら、どうすれば良いのか

 ここまで書くと、「じゃあ、どうすれば良いんだ!」と反論が来るかも知れません。

 これに関しては、基本的には、経産省・東電・規制委員会が進めている方法しかないと思われます。
 即ち、作業員の被曝防護・作業安全を最優先としつつ、

1.建屋滞留水と、周辺地下水の水位を徐々に下げ、

2.並行して建屋内部の調査を行い、不要な設備を撤去し、

3.使用済み燃料プールからの燃料取り出し準備を進め、

4.建屋内外の瓦礫を除去して線量低減に努め、

5.最終的には建屋内外の放射性物質の除去を目指す

 というものです(但し、デブリの取り出しを目指すかどうかは、今の時点で結論を持つべきでないと考えます)。

「急がば回れ」しかないでしょう。作った事の無い施設、運用した事の無い設備を使っても、却って、それらの建設や運用に時間と手間を取られるだけです(既設ALPSも当初は想定通りに機能せず、2015年度に改造工事を行っています)。
 実績・経験のある手法で、できることを安全且つ着実に進めていくべきと考えます。

 但し、改めるべき点は多々あります。
 下請け構造は即刻改めるべきで、作業員は東電の直接雇用か、或いはみなし公務員扱いにして、生涯に渡る放射線管理と、医療費の減免措置を講ずるべきでしょう。
 食堂での食事も、一食380円という有料の提供は止めて、無料にすべきです。

 タンク建設等も、交代制で土日含めて実施し、必要な施設・設備は極力速やかに完成させて、早期のリスク低減に努めなければいけません。その為に人件費が必要なら、国会議員や閣僚の給料や政党助成金を削減してでも、国費から支出すべきでしょう。

 そもそも、東電という一事業者に任せているのが問題で、以前からの私の持論でもありますが、「福島第一原発廃炉公社(仮称)」を設立して原災本部長(内閣総理大臣)が責任を負うようにし、国会がそれを監視する体制にすべきです。

 当記事は石棺方式を論ずるのが目的なので、これ以上、話を広げるのは控えます。

 石棺方式については、以後、当ブログで独立の記事として取り上げることは致しません。存在しない・計画の無い構造物ですから、今回限りとします。
 脱原発・反原発の運動界隈からは「石棺方式」の声が多いので、チェルノブイリ原発の事例を即当てはめようとする発想からして間違っている点、現実的に考えて無理がある点をまとめてみました。

 石棺方式に限らず、全ての作業には、被曝と予算と廃棄物がついて回る事を考えるべきです。
 これらは、社会全体として引き受けなければいけない事です。「東電が~」「安倍政権が~」と言ったところで、解決しません。批判すべきは批判しなければいけませんが、批判だけでも先に進みません。
 考えれば考える程、「3.11の後始末の難しさ」を痛感するばかりですが、国策・民営による核発電推進を容認・黙認してきたのは、私のような主権者ですから、これからも、見つめ続け、考え続けていきます。


春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF) ​​​​​​

※ 9/25 「エネルギー総合工学研究所」の報告書へのリンクを追加






Last updated  2018.09.25 12:26:35
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