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元SF小説家・春橋哲史のブログ

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2018.06.03
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カテゴリ:福島第一原発
​​​​​​​​ この記事は、元々は6月3日にアップしたものですが、6月6日に協力会社(=下請け)作業員1名が亡くなったことを受けて、グラフ等を作り直して、6月9日に更新しました。このような更新はしたくなかったです。​

 当記事の末尾に、2017年度下半期に福島第一で起きた「ヒヤリハット」の事例(重大な人身事故・設備破損に繋がりかねなかったもの)を紹介する文章とリンクを追記しました。福島第一の危うさ・東電の管理の水準が良く分かると思います。


 フクイチ(福島第一原発)の労働人数・被曝線量等の2017年度までの数字が、ほぼ確定したので、グラフ等を更新しました。

 あくまでも、東電の公表であることにご留意下さい。勤務時間外の死亡や、敷地内の医療室を使わずに外部の医療機関を受診している場合などは、集計されません。
 通勤時にも被曝している筈ですが、その被曝線量も集計されていません。毎日・12ヶ月通うと、累積で無視できない数字になると思うのですが、把握する仕組みがありません。

 このような、命と身体に関わる事を数字だけで片付けるのは良くない事だと分かってはいます。死亡人数が少なかったとしても、家族や友人にとっては、そんな事は問題ではありません。出勤した家族が、二度と帰らないのです。一人だから、命の重みが軽くなるのではありません。

 負傷にしても、後遺症が残ったりして、生活に不自由が生じたり、その後の仕事探しに苦労するかも知れません。
 時間の関係で、どうしても、数字だけの紹介になりますが、「命や身体に関わる事を、数字だけで済ませてはいけない」という思いを持った上で、当記事を書いた事をご理解願えれば幸いです。

 グラフ・ポンチ絵の無断転載・利用は御遠慮下さい。

 当記事の末尾には、日本全国の原発の放射線業務従事者の人数と被曝線量もグラフにして掲載しました。


入域人数と被曝線量

グラフ1 「福島第一原発に放射線作業従事者として入域した人数と被曝線量 年度毎推移(~18年度第一四半期)」/人数(左目盛)・mSv(右目盛)
●左目盛は「人数」(折れ線)・右目盛は「mSv」(縦棒)
●平日入域人数平均は各月に公表される​「廃炉・汚染水対策の概要」​より。
●月間入域人数は18年4月27日公表の​「表10 月別線量分布表等」​に基づいて春橋計算。
1116年度の最大被曝線量・平均被曝線量・5mSv越え人数・年度入域人数・東電社員と協力企業社員人数は、18年1月31日公表の​「表11 年度別累積線量分布表」​​に基づく。
●17年度の上記数字は、18年4月27日公表の​「表11 年度別累積線量分布表」​より。
●18年度第一四半期の数字は、東電の日報・不適合の公表・中長期ロードマップ進捗の概要より。
●2007~09年度の数字は、「原子力施設運転管理年報・平成25年版(平成24年度実績)(独立行政法人原子力安全基盤機構)」​より(PDFの428頁。右下の表)。
●放射線管理区域外である大型休憩所のコンビニの店員や、駐車場の整理要員等は含まれていない。
●2010年度は、「事故前」と「事故後」を切り分けた数字が見付からなかった為、割愛。



2017年度の数字を抜き出すと、

 放射線業務従事者の年度入域人数:1万3942人(東電社員比率・約11%)
  東電社員1529人(平均被曝線量1.14mSv/人)+協力企業社員1万2413人(同2.86mSv/人)    
 (雇用形態を問わず)月間入域平均人数:8696人
 (雇用形態を問わず)平日入域平均人数:5216人
 (雇用形態を問わず)最大被曝線量:32.32mSv
 (雇用形態を問わず)被曝線量が5mSv越えを記録した人数:2338人

  となります。
(注:1Sv[シーベルト]=1000mSv[ミリシーベルト]/1mSv=1000μSv[マイクロシーベルト]/日本の法令では、一般公衆の年間被曝線量は最大1mSvになるように定められている)


発災以来の作業員の死亡・負傷・熱中症件数
~死者は公表分を集計すると19人~

  続いて、作業員の死亡・負傷・熱中症の四半期毎件数一覧です。東電が公表・認めているだけで、作業員の死者は、2011年3月11日から17年10月26日の間で、19人になります(東電自身は「19人」という数字は公表しておらず、私が福島第一の日報を全て確認してリスト・グラフを作成しました)。

2011~13年度の死亡・負傷・熱中症一覧

2014年度の死亡・負傷・熱中症発生状況

2015年度の死亡・負傷・熱中症件数一覧

2016年度の負傷・熱中症件数一覧

2017年度の負傷・熱中症件数一覧


グラフ2 福島第一原発での死亡・負傷・熱中症件数(四半期毎)






グラフ3
「廃炉作業を行う事業者に対する福島労働局の指導監督結果(201117年)」


厚生労働省福島労働局 発表(2015年11月20日発表)

同・2016年4月13日発表

同・2017年9月11日​発表

同・2018年2月22日発表

 福島労働局の報告書は、地味ですが重要です。関係官庁の中で、「人を守る」仕事をしているのは、労働局だけと言って良いでしょう。2017年も、労働条件を明示していない、割増賃金を支払っていない、電離則(電離放射線障害防止規則)違反等の指導事例が発生しています。



構内の放射線データ

給食のメニュー

働く人のインタビュー一覧


参考:実用発電用原子力発電所(福島第一原子力発電所を除く)における放射線業務従事者の線量分布(実効線量)と合計人数の年度毎推移 (200716年度/単位:人)


出典:放射線審議会・眼の水晶体の放射線防護検討部会が201712月に作成した「眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について(中間取りまとめ)」8頁より。
●数値は「原子力施設運転管理年報」(平成1924年度。独立行政法人原子力安全基盤機構。)及び「実用発電用原子炉施設、研究開発段階発電用原子炉施設、加工施設、再処理施設、廃棄物埋設施設、廃棄物管理施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について」(平成2528年度。原子力規制委員会。)を基に放射線審議会の事務局(原子力規制庁)が調べたもの。https://www.nsr.go.jp/data/000212892.pdf 

​​

 以下は、6月9日に追記。↓

6月6日にも、新たな死者

 残念ながら、6月6日にも、フクイチで働く協力会社作業員(50代男性)が亡くなりました。東電のリリースと、6月8日の記者会見での質疑を元に、 状況をまとめました。

「6月6日、朝礼後に足場解体業務に当たっていた。午前中にトイレで嘔吐し、昼休み後にも嘔吐。仕事は続け、そのまま同僚たちと退勤。協力企業のバスで、大熊町の事務所に戻った後、1345頃、意識不明となった。協力企業は直ちに119番した模様で、1350頃、東電宛に、福島第一のヘリポートが使用できるかどうか打診があったが、消防の判断で、ドクターヘリは使わないことになった。

 男性は1438に救急車で搬送され、搬送先の病院で同日1602に死亡が確認された。

 故人は持病が有り、薬も服用していた。死因は持病起因と見られ、作業との因果関係が認められなかったので、詳細は公表できない。

 福島第一で、複数回吐いたことは、帰りのバスの中で会社の同僚が故人から聞いたことで、目撃したり相談された人はいない。入退域管理棟にある医療室に相談しなかったのは、本人の判断と思われるが、理由は不明」(まとめ、ここまで)

 発災から、約7年3ヶ月で、東電が公表・認めているだけで、作業員の死者は19人になりました。1年平均2.6人になります。自分の勤務先に置き換えて考えてみると、尋常ではない職場だと思います。


福島第一原発・17年度下半期の「ヒヤリハット」事例

 6月6日に死者数が増えたのに合わせて、所謂「ヒヤリハット」(重大な事故に繋がりかねなかった事例)の事例を調べました。東京電力は、2017年8月以降、福島第一原子力発電所の不適合事象を「パフォーマンス向上会議」の議題としており、審議された不適合事象は東電のサイトで公表されています(サイトへのアップは、会議の翌営業日の16時以降)。
 因みに「不適合」とは、東電のサイトによると、「本来の状態とは異なる状態、もしくは本来行うべき行為(判断)とは異なる行為(判断)。法律等で報告が義務づけられているトラブルから、発電所の通常の点検で見つかる計器や照明の故障など、広い範囲の不具合が対象」だそうです。

 詳細→ ​こちら

 ​不適合の公表

 以下は、2017年度下半期の不適合事象から、私が「ヒヤリハット」と思ったものです(重大な人身・設備故障に繋がりかねなかったもので、事前の確認や発生防止措置が不十分だったと疑われるもの)。引用は、段落を除いて、原文の通りです。

2017年11月10日の会議で審議
「【第三セシウム吸着装置設置における溶接士資格について】第三セシウム吸着装置ろ過フィルタの溶接を行った溶接士は、協力会社社内資格を有していたが公的資格を有していないため、当社「溶接検査共通仕様書」に則していないことを確認。今後、公的資格を有している溶接士が、当該箇所の手直し溶接を実施」

11月30日の会議で審議
「【クローラクレーン旋回時における工事車両との接触について】1号機タービン建屋北東エリアでの1号機原子炉建屋カバー解体工事において、750トンクローラクレーンを旋回させた際、当該クレーンの一部(カウンターウエイト)が工事車両(人は乗っていなかった)に接触した。なお、人身および設備への影響はなかった。原因は、クレーンの旋回範囲内に工事車両が駐車していたことによるものであった。今後、監視の適正化を図る」

2018年2月23日の会議で審議
「【電動工具による負傷について】1号原子炉建屋西側K排水路内補修作業において、電動サンダーの電源ケーブルをコンセントにつないだ際、仮置きしていた当該サンダーが動き、近くにいた協力企業作業員の右足太もも上部に接触し負傷した。構内救急医療室にて、切創による3針縫合の治療を受けた。原因は、電動サンダーのスイッチが通電前より『入』となっていたため」

2月27日の会議で審議
「【構内で車両運転時、ハンドル操作を誤り側溝転落について】巡視点検を終え、車両にて免震重要棟に戻る際、T字路で一時停止後、左折時にハンドル操作を誤り、縁石を乗り越え側溝(深さ約1m、幅約1.6m)に転落。怪我および、油漏れなし。車両は、吊り上げて移動実施済」


 一般作業に於ける安全確保ができていない組織が、別の原発(この場合は柏崎刈羽)の運転が出来る筈がありません。仮に、運転したところで、何かやらかすでしょう。柏崎刈羽に注ぎ込むリソース(予算・人材・資機材)があるなら、世界最大の核災害の現場であるフクイチの作業安全をこそ、真っ先に図るべきでしょう。安全が守れなければ作業は出来ませんし、作業が出来なければ、世界最大の核災害の現場は管理が不可能になります。大量の核廃棄物が保管されている現場が管理不可能になるのは、あってはならないことです。

 末筆ながら、これまでに亡くなったフクイチの作業員の皆様のご冥福をお祈り致します。
 同時に、核災害の現場を守る為に働いて下さっている皆様に、この場を借りて、お礼を申し上げます。  

 これからも、3.11を止められなかった主権者の一人として、フクイチと、フクイチを追い掛けるジャーナリストの活動を確りと見ていきます。


春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)​​​​​​​​​​​

※ 6/12 文言を微修正







Last updated  2018.06.12 11:15:24
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