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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

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2018.09.16
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カテゴリ:反原発・脱原発
​​​​​​​​​​​​​​​​​3.11以来の外部電源喪失

 9月6日3:07に発生した北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)によって、戦後日本で初めて、管内全域での「ブラックアウト」が発生しました(注)。

注:震源地近くの苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所の発電機が停止したのを契機として発生。北電は、1号機が停止した午前3:25を「ブラックアウト」の発生時刻としている。停電したのは、供給(発電側)が減ったことで、需要(消費者)とのバランスが崩れ、送電網の周波数が乱れた為。

 この「ブラックアウト」によって、北海道電力唯一の原子力発電所である泊原発の外部電源が失われました。原発の外部電源が喪失したのは、日本では3.11以来の事です。
 泊原発の使用済み燃料ピットには合計1527体の核燃料が保管されており、冷却が必要です。ブラックアウト発生と同時に、DG(ディーゼル発電機)が起動し、冷却は継続できました。

 その後、6日の13時までには泊原発の3基とも外部電源が回復しました。

 北海道電力は泊原発の外部電源喪失の経緯や状況について自ら説明していないので、原子力規制委員会の緊急時情報ホームページから、経緯を追ってみます。


泊原発の外部電源喪失から回復まで

 第一報が同ホームページにアップされたのは6日5:23で、4時現在の情報として、以下が記載されています(以下、引用文は分かり易くするために赤文字とします)。

<北海道電力・泊(PWR)>
北海道:最大震度3
泊村:震度2
1から3号機:定検停止
●外部電源喪失により非常DG起動中

 第二報は、6:45にアップされ、6時半現在の情報として以下が記載されています。

【外部電源喪失による復旧状況】
● 3時25分 外部電源喪失(275kV泊幹線、275kV後志幹線、66kV泊幹線の6回線)
非常用ディーゼル発電機6台起動
 ・現在、使用済燃料プールの冷却は正常に行われている。
 ・非常用ディーゼル発電機の燃料は7日間確保済み。
 ・燃料油タンク周辺の点検で異常は確認されていない。

 この時点で、非常用DGの燃料は7日分が確保されていることが伝えられています。

 以後、13:26アップの第4報まで続き、13時までに全3基の外部電源が回復したことが伝えられました。第4報は画像のキャプチャを掲載します。元のサイトはこちら。




​​​​ 時系列で分かり易いと思います。
 以上が、泊原発の外部電源喪失から回復までの経緯です。

 因みに、原子力規制委員会の緊急メールサービスは登録しておくと、何かあった時に、自分から規制委員会のサイトにアクセスせずとも、情報を入手できるので便利です。登録をお勧めします。


泊の外部電源喪失の「危険度」はどの程度だったのか

 前置きが長くなりました。やっと本題です。

 泊の外部電源喪失が伝えられて以降、私は、ネットで様々な情報や意見が交換される様子を見ていましたが、それらの意見・情報交換の多くは間違っているものでした。
 規制委員会が公表している情報を見れば分る事なのに、外部電源が復旧した後でも、「外部電源が失われた」「燃料プールが危険だ」と騒いでいる人達がいました。

 私は規制委員会のサイトのURLを張り付けてツイートしたのですが、殆ど拡散されませんでした。

 外部電源回復を知らないのでは、危機感を持つのは当然ですが、調べられることを調べもしないのはいただけません。ツイッターやFBでの書き込みには、「もう少し落ち着いたら」と言いたくなるようなものも多かったです。

 では、仮に、外部電源の復旧が遅れる・或いは目途が立たない状態だったとして、泊原発の使用済み燃料ピットはどれだけ危険だったのでしょう? この点は、12日・水曜日の原子力規制委員長の定例記者会見で、更田委員長が回答した事で判明しました。記者会見の議事録から、該当部分を抜粋して引用します。更田委員長の回答は青文字とします。

9月12日の会見の動画はこちら

====引用、ここから====

(読売新聞のミウラ記者の質問に対する更田委員長の回答、抜粋)
 北海道電力の対処ですけれども、泊原子力発電所に限るものですけれども、そもそも新規制基準は外部電源が失われることを前提として電源対策を求めていて、泊発電所は適合性審査で許可を受けたわけではありませんけれども、非常用発電機の作動によって電源は供給され続けたと。
 それから、一部に使用済燃料プールを御心配される向きもありましたけれども、使用済燃料プールの燃料、特に冷却が物すごく長い期間、進んでいることもあって、1月から2月程度、冷却装置が停止していても、水を足さなければならないような状況になるまでに月オーダーの時間があるということで、使用済燃料プールの冷却に関して言えば、電源が失われて、仮に非常用電源すら失われたとしても、ゆっくり、じっくり対処すればいいという状況になったのは事実で、また、泊発電所自体は震源から遠いということ
もあって、スクラム設定値よりも2桁というか、数ガル程度の地震に見舞われたということなので、事実問題として泊発電所に問題は発生しなかった。

(雑誌『科学』のタナカ記者の質問、抜粋)
 使用済核燃料プールについて、市民が多く関心を持つのは当然のことで、福島第一原発のときも4号機の使用済燃料プールの危機があったわけで、これはまさに僥倖によって、たまたま幸運によって救われたという状況にあったと思うのです。それで、先ほど委員長のお答えの中で、時間の目安をおっしゃってくださいました。1月から2月程度。これを言ってくださったのは大変よかったと思うのですけれども、ただ、1月、2月程度というのは非常に幅があるのですけれども、そういう計算は随時なさっていて、これぐらいというのははっきりおっしゃるべきなのではないかと思うのですけれども、どうですか。

(更田委員長の回答、抜粋)
(燃料集合体の)冷却が進むから、計算の細かい数字は変わっていくけれども、泊原子力発電所は7年半以上停止をしていて、非常に厳密に言ったら、それまでの運転サイクルに、どういった燃料がどれだけの燃焼度になって取り出されているかということが関係しますけれども、私たちは、新規制基準に適合していない原子力発電所であっても、使用済燃料プールにある燃料プールがどのくらいの期間、冷却が行われなくても安全を保つことができるのかということは確認しています。そうでなければ、それこそ命令をかけて何らかの手だてを打っているわけです。
 今回の泊発電所については、地震の後、内部で、私は感覚として1月以上というのは持っていたのですけれども、それが果たしてどのくらいなのかということで、評価結果を既に持っているものを尋ねたところ、その評価結果がおおよそ2カ月程度というものでした。ただし、この評価の結果は、冷却が失われて、だんだんプールの温度が上がってきて、水位が下がってきて、TAF(春橋注/TAF:燃料集合体の頂部)という発熱部分の一番上のところ、そこまで水位が落ちてくるのに2カ月ということなので、そうなると、例えば、遮へい上の問題等々はあるので、もちろん、それより早く水を足してやることが必要。
 ですから、具体的に言うと、1月ぐらいの期間の猶予の中で、仮に非常用発電機もだめ、ガスタービンもだめ、電源車もだめという状況を考えてやったとしたら、消防車か何かで、ラインはつくってあるので、水を入れてやればセーフというのが認識です。

(毎日新聞のスズキ記者)
 今回の泊原発の外部電源喪失の事象を通じてちょっと感じたことなのですけれども、外部電源と聞くと、やはり一般の方はすぐに脊髄反射のように、福島原発と同じような事故が起きたのではないかということを感じる人もやはり多いみたいで、うちの記事を見て読者からもそういう意見が寄せられたりもしています。(後略)

(更田委員長の回答、抜粋)
 使用済燃料プールが1月ないし2か月程度余裕があるというのも、運転の状況によって、取り出した使用済燃料がまだ例えば1炉心分なり、3分の2炉心分使用済燃料プールにあれば、数字が2か月が1.5か月になるかもしれないしというようなところで、細かいところはいろいろあるのだろうけれども、ごくざっくりと言っているのは、全ての電源が仮に失われた、内部の電源も全て失われたとしても、使用済燃料プールというのは、そんなに即座に対処を必要とするものではないということは、事業者がまずきちんとした説明をするべきだろうと思いますし、私たちも一定の説明は、説明責任と言うとちょっと大げさだけれども、状況を説明するときの補足情報として伝えてもいいのかなとは思います。

====引用、ここまで====

 更田委員長が言っているのは、

① 燃料の崩壊熱は十分に減衰しており、仮に冷却が止まっても、冷却水を蒸発させるような事態になるには、1ヶ月以上の余裕が有る。
② 非常用DGが使えなくても、電源車の利用や消防車等による注水も可能。

 ということです。

 記者会見では、グリッド(送電網)に関する遣り取りも行われています。
 総合すると、ブラックアウトによって、より大きな危険に曝されていたのは、病院や酪農など、命や生業に関わる部分の方であったと言えます。

 以下、私の結論です。結果論を承知で書くと、
「泊原発の燃料ピットは心配しなくて良いとまでは言わないが、病院や酪農家など、他に電気を必要とする施設や職業を先ず心配すべき状況だった」と言えます。

 
全く説明していない北海道電力と、最大の教訓

 但し、更田委員長のような説明は、本来、北海道電力が率先して行うべきでした。北電のサイトを確認しましたが、泊の外部電源喪失とそれに伴うリスクの内容は、全く説明されていません。
 私は、北電のこのような体質が最も大きな問題であり、今回、それが炙り出されたと思っています。
 原子力施設に関する一義的責任は事業者に有ります。その施設が「通常ではない状態」に陥ったのですから、「どういう状態」で、「どういう手段を講じて」いて、「リスクが顕在化したらどういうことになる」のか、「それを防ぐ為に何をしている」、「時間的猶予はこのくらい」と、一人称で説明すべきでしょう。

 私は、原発そのものに反対ですが、今回の一件で、北電への不信感は増大しました。原子力だけでも危ないのに、その危ないものに関する説明をきちんと果たしていないのです。二重の意味で、北電は原子力からさっさと撤退すべきです。

 もう一点、私が、今回の件で最大の教訓と思っているのは、更田委員長の記者会見で判明したように、燃料集合体は冷やしておくのが現状で最も望み得る安全対策であり「原発は動かさないのが最も安全」ということです。
 泊原発が適合性審査合格し、稼働していたら、こんなに落ち着いてはいられなかったでしょう。燃料棒の崩壊熱が十分減衰していて、1ヶ月以上の余裕があったのは幸いでした。若し、稼働中で緊急停止し、非常用電源が1週間しかもたないという状況であれば、泊原発周辺の住民の脱出が始まり、混乱に拍車がかかっていたかも知れません。

 原発(=核発電)は動かさず、燃料集合体は冷やしておくのが一番です。

 核発電所が少しでも「正常でない状態」になれば、周辺だけでなく、国全体に混乱を(場合によっては恐怖も)惹き起こします。それもこれも、取り返しのつかない事故を起こしかねない危険性を内包しているからです。

 こんなものを使う合理性は、何処をどう探しても見付からないでしょう。

 核発電は、やはり、使うべきではありません。私は、核発電の利活用に改めて反対します。


春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)​​​​​​​​​ ​​​​​​​​​​

※ 9/17 文章の一部を修正。





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Last updated  2018.09.17 21:56:27
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