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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

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haruhasi@ ややこしい記事を読んで下さり、有難うございます きなこ様  度々、コメントを頂戴して有…
きなこ@ Re:フクイチの汚染水(処理水)放出までの経緯 2012年11月~23年8月(10/13) 詳しい経緯のまとめ、ありがとうございま…
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2020.07.06
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​​フクイチで亡くなった方の遺族が提訴した最初の事例

 フクイチ(東京電力・福島第一原子力発電所)では、発災以来、これまでに社員・協力企業従業員合わせて20人が亡くなっています。

(リンク1)​死傷者・被曝線量に関する当ブログの記事

 確認されている協力企業従業員の最初の死者が、東芝の四次請けで働いていた配管工、大角信勝さんです(2011年5月14日に心筋梗塞で死去)。

 大角さんの死亡に関しては、横浜南労働基準監督署が2012年2月に労災認定をしています(雇用元の会社が神奈川県所在で、横浜南労基署の管轄だった)。

(リンク2)​福島第1原発:収束作業死で労災認定…横浜南労基署​(毎日新聞)

 大角さんの配偶者さん(タイ人のカニカさん)は、労災認定を受けた後、東電・元請け等、計4社を相手に安全配慮義務違反等を理由として損害賠償請求訴訟を起こしました。

 結果的には静岡地裁・東京高裁でも請求は棄却され、原告敗訴に終わりましたが、発災後のフクイチで働いて亡くなった方の遺族が提訴した最初の事例でも有ります。

 従来、私は「フクイチ過労死訴訟」が最初の例だと書いてきましたが、調査不足でした。お詫びして訂正します。

 検索したところ、訴訟の概要と判決をまとめたページが見つかりました。

(リンク3):​概要・判決理由

 核災害の現場で働いて亡くなった事に関する訴訟ですから、原告敗訴とは言え、重要です。

 一読して「多重請負構造は、発注者である東電の責任軽減、或いは免責に繋がっている」「核災害の現場で働く人を守る特別の立法が必要」と思いました(「守る」べき責任を負うのは、東電廃炉推進カンパニーだけではなく、国にもあると思います。そういう意味での立法です。長くなるので、この場ではこれ以上は踏み込みません)。

 概要と判決を、読み易いように適宜編集した上で、掲載します。

 改めて、フクイチで働いて亡くなった皆様のご冥福をお祈りし、ご遺族に哀悼の意を表します。

====概要・判決、ここから====

事件名:損害賠償請求事件​​
いわゆる事件名:東京電力ほか3社事件
争点:4次下請作業員の原発復旧作業中の心筋梗塞視死と安全配慮義務違反が問われた事案(原告敗訴)
裁判年月日:2014年12月25日
裁判所名: 静岡地方裁判所
事件番号: 平成25年(ワ)706号
裁判結果: 棄却
控訴審:東京高裁/2015年5月21日(事件番号:平成27年(ネ)486号)
出典:労働判例1109号15頁/労働経済判例速報2236号3頁

(1)
 2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴って発生した福島第一原子力発電所放射性物質放出事故の復旧作業に従事していた大角信勝が、作業中に死亡したことについて、故・信勝氏の妻である原告が、本件原発を設置、運転してきた東京電力及び上記復旧作業を請け負ったその余の被告らには安全配慮義務違反があり、信勝氏の死亡はこの義務違反によるものであるなどと主張して、損害賠償等を求めて提訴したもの。

(2)
 静岡地裁は、原告の請求にはいずれも理由がないとして、請求を全て棄却した。
 なお、原告は、これを不服として控訴したが、東京高裁は2015年5月21日(平成27年(ネ)486号)に控訴を棄却している。
 又、横浜南労働基準監督署長は、信勝氏の死亡を業務上の災害と認め、原告に対して、遺族補償年金等を支給することを決定している。  

争点1(信勝氏の死亡は、被告東京電力の安全配慮義務違反によるものか)について
 原告は、「①東京電力が、本件原発事故を発生させた者であり、本件原発事故の復旧作業について責任を負っていること」、②「東京電力が、労衛法29条に定める元方事業者に該当すること」、「③東京電力が電離則1条に定める事業者であること」を根拠として、信勝氏に対して、安全教育義務等の安全配慮義務を負っているところ、これは、ある法律関係に基づいて特別の社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として認められる信義則上の安全配慮義務違反とは異なるものであると主張する。
 しかしながら、「主張①」については、その主張の趣旨は明確でなく、東京電力が本件原発事故の復旧作業について、どのような根拠で、どのような意味における責任を負っているのか、また、ここにいう「責任」が、いかなる理由で、本件原発事故の復旧作業に従事する労働者であった信勝氏に対する安全配慮義務を発生させるのかについて何ら明らかではない。

 次に、労働安全衛生法(以下、労衛法という。)29条に定める元方事業者とは、「事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの」であるところ(労衛法15条)、東京電力は本件工事の発注者であり、原告の主張する元方事業者には当たらないから、原告の「主張②」も前提を欠く。

 信勝氏の死因は心筋梗塞であって、電離放射線を受けたことによって生じた健康上の障害によるものではなく、そもそも、原告の主張する東京電力の安全配慮義務の内容も、電離放射線を受けることによる健康上の障害の防止とは直接関連するものではないのであるから、東京電力が電離則上の「事業者」に該当することが、なぜXの主張する安全配慮義務を発生させるのか、何ら明らかではない。

 原告は、放射線防止のための装備が重装備であり、心筋梗塞等の疾病に罹患するおそれがあるから、電離則はそのようなリスクについても措置を実施することを定めていると主張するが、電離則の規定を通覧しても、原告の主張するような規定はなく、原告の「主張③」は採用できない。

 以上によれば、原告の主張は、いずれも東京電力が信勝氏に対する安全配慮義務を負う根拠となるものではなく、他に、原告の主張する、特別の社会的接触関係を前提としない安全配慮義務を基礎付けるに足りる法的根拠は認められない。
 
 東京電力は、本件工事の全てを東芝に発注しており、東京電力が自ら本件工事の施工や監理を行っていたものと認めるに足りる証拠はなく、信勝氏が、事実上、東京電力の指揮監督を受けて稼働していたものと認めるに足りる証拠もないから、本件の証拠関係を前提として、東京電力と信勝氏が、特別な社会的接触関係に入ったものと認めることはできない。

 信勝氏の死因は心筋梗塞であるところ、原告の主張するような内容の安全衛生教育を行ったからといって、心筋梗塞の発症を回避できたものとは考え難い。

 従って、原告の主張する義務違反と信勝氏の死亡との間に因果関係があるものとは認められない。
 健康診断の際にも、信勝氏に自覚症状はなく、胸部の診察でも異常はみられなかったため、「作業可」との結論とされていることが認められるのであって、このような健康診断の結果に加え、その後も信勝氏はB建設において配管工事等に従事しており、その間、重大な自覚症状等も認められないことからすれば、仮に信勝氏が作業前に健康診断を受けていたとしても、それによって心臓の虚血性変化が診断されたか否かは明らかではなく、また、健康診断の結果、本件工事への参加を中止していたかについても明らかではない。
 
 従って、原告の主張する義務違反と信勝氏の死亡との間に因果関係があるものとは認められない。
 本件において信勝氏が熱中症に罹患していたものと認めるに足りる証拠はなく、信勝氏の心筋梗塞と防護服等による体温の上昇、発汗との医学的な関連性についても、これを認めるに足りる的確な証拠はない。
 原告の主張する、防護服内の温度、湿度の計測や、電動ファン付き防護マスク、クールベストなどの支給を行うことによって、心筋梗塞の発症可能性を有意に低下させられたものとは認められない。
 一般的指導を超えて水分補給の有無を確認することによって、信勝氏の心筋梗塞の発症を妨げた蓋然性があるものとは認められない。
 従って、原告の主張する義務違反と信勝氏の死亡との間に因果関係は認められない。

 原告の主張する通り、AEDを本件工事の現場の複数箇所に設置するなどして、医療体制ないし患者搬送体制を強化していたとしても、信勝氏を救命することができたかは明らかではなく、原告の主張する義務違反と信勝氏の死亡との間に因果関係があるものとは認められない。

 以上によれば、信勝氏の死亡との因果関係という点からしても、原告の請求には理由がない。


争点2(信勝氏の死亡は、被告東芝[元請]の安全配慮義務違反によるものか)について
 労衛法29条に定める元方事業者であるというのみで、直ちに、下請企業や孫請企業の労働者に対して安全配慮義務を負うものと認めることはできないから、原告の主張は失当である。

 東芝であっても、下請会社の労働者との間で特別な社会的接触関係に入ったと認められる場合には、安全配慮義務を負うというべきである。
 東芝は、本件工事のうち、信勝氏の関与した放射性滞留水回収装置の設計、設置等に関する工事を全て被告Y3に発注しており、東芝が自ら、下請会社の労働者に対して指示等を行っていたものと認めるに足りる証拠はなく、信勝氏が、事実上、東芝の指揮監督を受けて稼働していたものと認めるに足りる証拠もないから、本件の証拠関係を前提として、東芝と信勝氏とが、特別な社会的接触関係に入ったものと認めることはできない。

 原告は、東芝と信勝氏とが特別の社会的接触関係に入った根拠として、「①信勝氏が配管工事に従事していたプロセス主建屋は、東芝の作業場所であったこと」「②信勝氏が着用していた防護服等の装備、工具は東芝が提供したこと」「③東芝が、元方事業者として労働安全衛生に係る特別教育を行っていたこと」「④東芝が、作業工程表(書証略)を作成するなどして労働者の作業工程を管理していたこと」を挙げる。
 しかしながら、
 上記①は、元請会社と下請会社の関係であれば一般的に認められる事象であるし、
 ②については、東芝が防護服や工具を信勝氏に提供したものと認めるに足りる証拠はない。また、③の特別教育は、東芝が元方事業者として法令に基づいて行っていたものにすぎないから、そのことが直ちに特別の社会的接触関係を根拠付けるものではない。④の作業工程表も、その記載内容からすれば、本件工事の全体的なスケジュールを記載した工程表にすぎないから、東芝がこの工程表を確認していたからといって、個々の労働者に対して実質的に指揮監督を行っていたものとは認められない。
 従って、原告の主張を踏まえても、東芝が、信勝氏との間で、特別の社会的接触関係に入ったものと認めることはできない。

争点3(信勝氏の死亡は、被告IHIの安全配慮義務違反によるものか)について
 IHIは、本件工事のうち、放射性滞留水回収装置の設計等を主に行い、これらの設置、据付等に関する工事は全てIHIプラント建設に発注しており、自ら施工を行っていたものでないと認められる。そして、IHIが、自ら下請会社の労働者に対して指示等を行っていたものと認めるに足りる証拠はなく、また、信勝氏が、事実上被告IHIの指揮監督を受けて稼働していたものと認めるに足りる証拠もないから、本件の証拠関係を前提として、IHIと信勝氏とが、特別な社会的接触関係に入ったものと認めることはできない。

争点4(信勝氏の死亡は、被告IHIプラント建設の安全配慮義務違反によるものか)について 
 IHIプラント建設は、本件工事の内、配管工事に係る部分を下請Bに発注しているが、IHIプラント建設が、自ら下請会社の労働者に対して指示等を行っていたものと認めるに足りる証拠はなく、信勝氏が、事実上IHIプラント建設の指揮監督を受けて稼働していたものと認めるに足りる証拠もないから、本件の証拠関係を前提として、IHIプラント建設と信勝氏とが、特別な社会的接触関係に入ったものと認めることはできない。

​====概要・判決、ここまで====​


春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)





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Last updated  2020.07.06 08:55:07
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