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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

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2020.07.13
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カテゴリ:反原発・脱原発
さいたま訴訟で、尋問と現地調査の日程が決定​​

 7月8日・水曜日・14時~、さいたま地方裁判所101号法廷で「福島原発事故責任追及訴訟」(通称「福島原発さいたま訴訟」/岡部純子裁判長/)の第30回口頭弁論が行われたので、原子力規制委員会定例会を傍聴した後、さいたま地裁まで移動して傍聴してきました。

※:福島第一原発事故によって、福島県から埼玉県内に避難してきた方達、29世帯・96人が、責任の明確化・謝罪・損害賠償を求めて2014年3月に東電と国を提訴したもの​​。4次提訴まで有るが、全てを併合して審理​(世帯数・人数は「弁護士白書・2019年版」より)。

(リンク)​弁護士白書・2019

 この際の報告集会では、6月の進行協議、及び、当日の進行協議で決まった内容が報告されました。
 さいたま訴訟は、類似訴訟に比べて提訴が遅かった事もあり、これまで書面の応酬が続いてきましたが、一挙に動きが有りました。2回の進行協議を経て、下記の日程が決まったそうです(現地調査以外は、何れもさいたま地裁101号法廷)。

●9月2日・水曜日・13:30 専門家証人尋問(辻内琢也・早稲田大学教授[人間科学部])/主尋問・反対尋問合わせて160分程度を予定

●10月19日・月曜日 現地調査(「現地進行協議」の扱い)

●原告本人尋問(何れも水曜日・10:30~17:00を予定)
 9月30日・11月11日・12月9日・2021年1月13日・2月24日・3月24日/期日ごとに4~5名の原告が「世帯代表」として出廷予定

 ​但し、今後のコロナウィルスの感染拡大の状況によっては日程が取消・変更・延期となる可能性は有ります。
 又、最も広い101号法廷であっても、「間隔を空けての着席」が定められており、傍聴席は18席しか有りません(第30回期日では満席になりました)。傍聴は抽選になる可能性が高いですし、マスク着用も求められます。長時間、マスク着用で、身動きも声を立てることも出来ない状態になるでしょうから、傍聴するなら、ある程度、肉体的なきつさは覚悟が必要だと思います。

 日程の確認や傍聴の手続きについては、事前に「支援する会」に確認した方が無難でしょう。

(リンク)​福島原発さいたま訴訟を支援する会


​これまでの経緯を網羅した、原告代理人提出の「第76準備書面」​

 第30回の期日では、原告側代理人が、提出した第76準備書面の概要を口頭で陳述しました。
 この書面は、これまでの争点やキーワードを網羅したもので、被告国と、原告側の主張の対比もできるものでした。
 さいたま訴訟に限らず、福島第一原発関係の集団訴訟の主要な争点である「事故における国の責任論」について理解を助けるものでもあるので、下記に、弁護士の氏名を除いて、全文を引用・紹介します。

 
句読点と段落は読み易いように変更し、脚注(※1~10)と下線を私にて追記しました。意見書中の「規制権限を行使すべきだった国の責任者」とは、具体的には経済産業大臣を指します。

 参考資料はクリックすると拡大します。無断転載・引用はご遠慮下さい。

​====引用、ここから====​

第76準備書面 令和2年(2020年)7月8日
 原告ら訴訟代理人 弁護士 Y.K

1 本件の争点について


 本件では、経済産業大臣の2002年長期評価(※1)に基づく津波予測について想定される津波が到来すれば原発の安全性を損なうおそれが有ったのに、電力事業者に対して適時・適切に津波対策を講じるよう規制権限を行使しなかったことが国賠法上の違法行為であるかが争点となっています。

 原告の主張は、2002年に公表された長期評価の知見によれば、福島第一原発が「想定される津波により原子炉の安全性を損なうおそれがある場合」(技術基準令62号4条1項/※2)に該当し、技術基準に違反する状態であったにもかかわらず、国が技術基準適合命令を発しなかった規制権限不行使が違法であるというものであり、その規制権限不行使の違法の判断枠組みとして最判(※3)の基準を適用すべきと主張しています。被告国はこれとは異なる枠組みで判断すべきと主張しています。

 今回提出した第76準備書面は、下山憲司教授(※4)の意見書を紹介しつつ、本件において適用されるべき規制権限の不行使の違法の判断枠組みについての被告国の主張の問題点を論じたものになります。
 第76準備書面は、第56・58・68・69準備書面に続く内容となりますので、以下、これらで論じた主張にも適宜触れつつ、第76準備書面の概要を述べます。


2 「長期評価」による津波地震の想定によって、福島第一原発が「津波により原子炉の安全を損なうおそれがある場合」(技術基準令62号4条1項)に該当するに至ったか否かの判断

 被告国は、本件に関する国賠法上(※5)の違法性を判断するにあたっては、これまで最高裁が、国に事業者の活動について規制権限を不行使しなかった結果市民が損害を受けた際の国賠請求訴訟で用いられてきた違法性判断枠組みではなく、原子炉の設置に反対する市民が起こした設置許可処分の取り消しを求める訴訟(伊方原発設置許可処分取消訴訟/※6)の判断規範を本件でも参考にすべきとしています。
 具体的には、
ⅰ)審査基準に合理性が認められない場合、または、ⅱ)審査基準への適合性判断過程に看過し難い過誤、欠落が有る場合に限り、国の賠償責任を認めるべきとして、本件でも2段階の判断過程審査基準を適用し、規制庁に広範な裁量が認められるべきと主張しています。

 しかし、被告国の主張は誤りです。
 上記伊方最判の事案は、原子炉の設置を許可するという行政処分自体の取り消しを求める行政訴訟(事前審査)です。つまり、未だ周辺住民に損害は生じていないものの、当該原子炉の基本設計の安全性に問題があるから当該原子炉の基本設計を安全と判断して設置を許可した国の処分行為を取り消すべき、と言えるかどうかが判断対象となる訴訟類型です。

 これに対し、本件は、国が原子炉の設置を許可したことの妥当性を問題にしているのではありません。
 最高裁は、国が原子炉の運転段階において、科学的知見の進展によって新たに想定される危険に即応して具体的な対策を講じるよう適時適切に事業者を規制すること(後段規制)を前提として、設置許可段階では基本設計安全審査のみで許可処分をなすことを是認しています(段階的規制論)。

 本件では、設置許可処分後の科学的知見の進展によって明らかになった、長期評価の知見により想定される津波による事故を防止するために、国がなんらの規制をしなかったことの責任が問われている後段規制の不作為の違法に関する事後審です。判断対象は、設置許可段階の基本設計の安全性ではなく、運転段階において行うべき安全対策(詳細設計)の具体的設計(建物や重要設備の水密化、高所設置等)です。
 そもそも国賠訴訟と取消訴訟は、判断対象も場面設定も大きく異なる訴訟類型です。これまで最高裁は、規制庁の規制権限不行使の国賠法上の違法性を判断する判例を積み重ねていますが、当該事業の許可処分の適法性にかかる行政訴訟での判断枠組みとパラレル(※7)に検討したものは有りません。

 原子炉の設置許可処分時の安全審査(前段規制)の対象と、運転段階の安全審査(後段規制)の対象は、これまでの原発訴訟において厳然と峻別した議論が蓄積されています。それにもかかわらず、両者を区別せず同一のものであるかのように混合させ、運転段階の後段規制の不作為の違法性が問題となっている本件国賠訴訟において、設置許可処分時の安全審査(前段規制)の適法性審査の判断枠組みを本件で参考にするという被告国の主張は、これまで積み重ねてきた裁判例の考え方を無視するもので、合理性も必然性もありません。

 本件同種事案の各地裁判決でも、行政訴訟における判断過程審査方式を採用されていません。その多くは「長期評価」の知見に基づき津波想定を行えば福島第一原発の敷地高さを超える津波の到来が予見しえたこと、敷地を越えて浸水した場合、原子炉で全交流電源喪失事故が起こる危険性があることを被告らは事故前から認識されていたこと、を判示しています。
 福島第一原発は事故前から「想定される津波により原子炉の安全性を損なうおそれがある場合」(技術基準令62号4条1項/※2)に該当し、これに対する防護措置が採られていなかった以上、技術基準に適合しない状態であったことは明らかです。


3 「津波により原子炉の安全性を損なうおそれがある場合」において、規制権限行使が義務的なものとなるのは、地震想定を基礎づける知見が「通常的見解といえる程度に形成、確立した科学的知見」による場合に限られるか

 次に、技術基準に適合せず、逸脱があったとしても、(経済産業大臣による)技術基準適合命令による権限行使が義務的なものになるのは、事故の想定が確立した通説的見解に基づく場合に限られるという見解の問題点について述べます。
 この点、例えば名古屋地裁判決(※8)は、遅くとも2006年(平成18年)には敷地高さを超える津波の襲来を予想できたとしつつも、その予見の根拠となる津波襲来の精度・確度は高くはなく、敷地高さを超える津波の到来は切迫したものではなかったとして、規制行政庁や原子力事業者が投資できる資金や人材は有限であることを理由として、どのような規制をいつ行うのかは行政庁の専門的裁量に委ねられているなどとして、国の責任を否定しています。本訴訟で被告国は、第28準備書面においてこの判決を大きく引用、紹介しています。

 しかし「敷地高さを超える津波」が襲来した場合、全交流電源喪失となりうることは溢水勉強会(※9)での資料などからも当時合理的に推定されていました。敷地高を超える津波の到来は、重大事故に至り得る事象であり、原発の敷地が津波で水没するということはまさにクリフエッジ的(※10)な危機です。こうした全交流電源喪失事象を引き起こす敷地高(O.P+10m)を超える津波を福島第一原発立地点にもたらす津波地震の発生確率は、長期評価によれば「今後30年以内で6%程度」と、非常に高いものでした。

 伊方最判は、「万が一にも深刻な災害が起こらないようにする」ため、最新の科学的・技術水準への即応が求められるとしています。
 巨大な危険を内包する原子炉施設の設置を求める事業者と、その危険な工作物(原子炉)の設置を許可しその安全性を維持すべく規制する国としては、原子炉事故により周辺住民に被害が及ばないように、極めて高度な安全注意義務が求められます。
 規制庁は「事前警戒・予防」の考え方により万が一にも事故が起きないよう、科学的知見の進展に即時即応した規制を講じるよう求めた最判の適時は至極当然です。

 そして、確立した科学的知見(つまり基本的な知見)だけで原子炉を規制するのでは、科学的知見の進展に即時即応した原子炉の安全規制を行っているとは評価できません。原子力安全規制は、単に確立した科学的知見に基づいて安全規制を行うのでは足りず、国は客観的・合理的根拠のある科学的知見に対しても日々目を配り、先取り的に安全規制に取り入れるべきことは、法の趣旨から当然です。(なお本件で被告国も、規制の根拠として確立した科学的知見であることが必要とは主張しておらず、長期評価の知見が「審議会等の検証に耐えうる程度の客観的かつ合理的根拠により裏付けられた知見だったと言えるかどうか」を問題としています。)


 なお「長期評価」は被告国が全国の災害対策のために全国から多数の地震学者・津波学者を招聘し、長期間の審議を経て取りまとめている地震予測であり、長期評価の策定は現在まで行われている国の事業です。このように専門家が多数集まり審議の結果取りまとめられ、長期評価として公表された知見には客観的合理性が認められるところ、長期評価に基づき「想定される津波により原子炉の安全性を損なうおそれがある場合」、この技術基準不適合の状態を規制庁が黙認し、規制権限を行使しないという事態は、およそ方が許容するところではありません。

 この点、名古屋地裁判決は「投資できる資金や人材が有限であること」を理由として、経済産業大臣による規制権限行使が義務となるのは、重大事故発生の「切迫性」が認められる場合に限ると判示しています。
 しかし、重大事故の発生が予見しえても、それが切迫するまで放置していてもよいとすれば、危険が切迫してから到来するまでに結果回避措置が講じえず、対策を講じられないまま原発事故による被害が発生するのを傍観するしかないことになりかねません。原子炉の安全規制の適法性の判断枠組みに切迫性の要件を容れるのは不当です。

 確かに、例えば伝統的な警察規制の適法性審査においては、他の市民の権利侵害発生の「切迫性」が権限行使の適法要件とされています。これは、抽象的危険や治安維持を理由とした警察権の権力行使を許せば、警察権の過剰行使によって市民の自由が不当に制約されてきた歴史的経緯を踏まえ、これを避けるため求められる判断要素であり、「切迫性」(必要性緊急性相当性)は、国家権力による市民の自由の過剰制限を防止するための要件として、警察権行使の適法性判断との関係性においては適正です。


 しかし、警察行政による市民の権利制限の適法性審査と、原発の安全性維持のために付与された原子力規制庁の規制権限の適法性審査とパラレルに論じることはできないのは当然です。電力事業者の経済活動により万が一にも原子炉の重大事故が発生し市民に被害が及ぶことがないよう、国に規制権限を付与した法の趣旨にかんがみれば、原子炉の安全規制の権限不行使の違法性を、警察規制の適法性判断枠組みと同様に判断することは到底できません。



4 長期評価公表後の国の不作為

 本件で被告国は、長期評価の公表直後、保安院は国として「長期評価」が「確立した通説ではない」ものと判断し、規制上「長期評価」を考慮する必要がないと判断したと主張します。
 しかし、これを示す具体的事情として国が主張するのは、長期評価公表直後、保安院が東電に長期評価の知見を考慮した津波対策を検討することを提案したものの、東電から抵抗を受け、その後東電側から長期評価には異論もあると口頭報告を受け、一係員が「わかりました」と返事をしたと、それだけのエピソードに過ぎません。第56準備書面(20頁~)等でも述べた通り、この係員の発言をもとに被告国が組織として長期評価を考慮しなくてもよいと判断したという結論は導きえず、その他国が組織として長期評価は考慮しないと判断したことを裏付ける証拠は何も提出されていません。

 むしろ、上記エピソードは、長期評価の公表直後、被告国が、長期評価の知見を規制に取り入れることを被告東電に提案したものの、それについて東電から抵抗されたため、そのまま放置していたことを直接的に示すものに過ぎず、この国の規制権限不作為が、本件事故の直接の原因となったのです。

 裁判所におかれては、万が一にも深刻な災害が起こらないよう、国の原子力安全規制には最新の科学・技術水準への即応が求められるとした伊方最判の趣旨を十分に踏まえ、原子力安全規制法の趣旨、目的を正しく捉えた判断を為されることを期待いたします。

 以上

​====引用、ここまで====​

脚注

※1 長期評価:参考資料の★1・2を参照

※2 技術基準令:「発電用原子力設備に関する技術基準を定める命令」

※3 最判:「最高裁判決」の略

※4 下山憲司:一橋大学教授大学院法学科教授(行政学)

※5 国賠法:「国家賠償法」の略

※6 伊方原発訴訟:日本で初の原発訴訟。1973年8月、伊方原発(四国電力)1号機の設置許可処分の取り消しを求めて、地元住民が提訴したもの。78年4月、松山地裁は請求を棄却。84年12月、高松高裁は控訴を棄却。92年10月に最高裁は上告を棄却し、原告敗訴が確定した。
 最高裁判決の概要と解説は下記リンクを参照。段階的規制は判決要旨の「4」に記載。
(リンク)​伊方原発訴訟上告審判決​(「ジュリスト」より/PDF)

※7 パラレル:「並列的に」の意

※8 名古屋地裁判決:福島県から愛知県などに避難した42世帯128人が、国と東電に、原発事故の責任の明確化と約14億4000万円の損害賠償を求めた集団訴訟(通称「愛知・岐阜訴訟」)の判決。2019年8月2日付。国の責任は認められなかった。

※9 溢水勉強会:2006年1月に原子力安全保安院と独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)が立ち上げたもの。電事連や電力事業者はオブザーバーとして参加。

※10 クリフエッジ:共通要因による安全機能の広範な喪失で致命的な状態になること。

参考資料


(リンク)
●​長期評価

●​三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について(PDF)

●​巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書​(2006年12月13日提出)

●​上の質問主意書への政府答弁(2006年12月22日決定)

●​第174回国会 2010年4月9日の経済産業委員会の会議録


春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)​​​​​​​​​





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Last updated  2020.07.13 20:27:51
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