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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ事故は継続中)

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2020.07.28
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カテゴリ:反原発・脱原発
40年間に渡って「賠償の原資」を回収するスキームが始動

 20年7月17日、10の原子力事業者(電力会社)が、「フクイチ事故以前に、消費者から徴収しておくべきだった原子力賠償に備える負担金の額」(=過去分)を、一斉に経産省に申請しました。


 具体的には、40年間に渡って電気の託送料金を通じて回収するというスキーム(枠組み)で、10事業者とは、北海道電力・東北電力・東京電力ホールディングス・北陸電力・中部電力・関西電力・四国電力・九州電力・日本原電です(当ページ下部に掲載のポンチ絵を参照)。

 経産省は、この申請を7月22日に認可しました。
 これによって、2020年度から40年間に渡り、日本の何処で電力を契約しても、年平均・約610億円の消費者負担が発生し続けます(40年間で約2兆4400億円/610×40年)。

 尚、電力事業者からの申請には「(原発)廃炉円滑化負担金」も含まれていますが、両者を混同すると、話がややこしくなるので、本記事では「賠償負担の過去分」に絞って書きます。

(関連リンク)
●​申請時のリリース​(経済産業省)

●​認可時のリリース​(同)

 残念ながら、「過去分」を託送料金に含める仕組み(=電気料金に上乗せ)は合法です。

 このスキーム(枠組み)は、2016年の秋から末にかけて、経産省が設置した「総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会・電力システム改革貫徹のための小委員会」という有識者会合で練り上げられ、パブリックコメントを経て導入されましため。
 立法措置ではなく、「電気事業法施行規則」の改正で導入された為、経産大臣の裁量で、国会審議・承認抜きで料金が認可できます。

 尚、根拠となるのは「電気事業法施行規則・第45条21の2~4」です。条文そのものは、2017年9月に実施されたパブコメの資料に掲載されています。以下、分かり易いように、漢数字をアラビア数字に変えて引用します。

​●電気事業法施行規則・改正前後の比較​(上段が導入された改正条文)

​====引用、ここから====​

(賠償負担金の回収等)

​​​第四十五条の二十一の二
 一般送配電事業者(中略)は、当該通知に従い、賠償負担金(中略)をその接続供給の相手方から回収しなければならない。

2 一般送配電事業者は、(中略)、各原子力発電事業者ごとに賠償負担金相当額を払い渡さなければならない。

(賠償負担金の額の承認)
第四十五条の二十一の三
 原子力発電事業(中略)を営む発電事業者(中略)は、その運用する原子力発電工作物及び廃止した原子力発電工作物(中略)に係る原子力損害(中略)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力発電事業者が2011年3月11日以前に原価として算定することができなかったものを、一般送配電事業者(沖縄電力株式会社を除く。後略)が行う接続供給によって回収しようとするときは、回収しようとする資金以下この条及び次条において「賠償負担金」という。)の額について、5年ごとに、経済産業大臣の承認を受けなければならない。

​(以後の、申請・承認・通知に関する手続きや書式に関する内容は割愛。詳細はリンクをクリックしてPDFファイルをご確認下さい)​

​====引用、ここまで====​


2016年秋からの動きが「結実」

 経産省がこのような制度を導入するのは、原発を持っていない「新電力」(2016年度の電力小売自由化で参入してきた、新しい電力小売会社)が、原発事故に関する賠償金を支払うスキームが無かった為です。
 経産省の小委員会では「負担の公平化」を御旗として、議論が進められましたが、事故以前に原発を持っていなかった事業者が負担しない(=電力料金での消費者への請求が生じない)のは、寧ろ当たり前でしょう。「原子力発電を金銭面で支えたくない」という消費者の選択肢を奪うことでもあるので、経産省こそ、不公平なことをやっていると思います。

 私は、経産省の小委員会の会合をほぼ全て傍聴し、委員会の「中間とりまとめ」に関するパブコメが実施された際に、金曜行動でも当ブログでも、「制度導入反対の意見提出」を呼び掛けました。

(関連記事)
●​経産省の「貫徹小委員会」中間とりまとめ案に関するパブコメ結果
(当ブログの過去記事・2017年2月12日)

●​決定された中間とりまとめ​(2017年2月/経産省)

●​パブリックコメントの結果と経産省の回答​(私の提出した意見は58~61に掲載)

●​中間とりまとめを決定した合同会議の資料一覧​(2017年2月/経産省)

 とは言え、個人の呼びかけなど、所詮は蟷螂の斧に過ぎません。
「過去分の回収」に関しては、最近の検察庁法改正案反対のようなうねりにはならず、国政選挙の争点にすらなりませんでした。経産省としては数年越しの取り組みが実を結んだ訳で、「してやったり」でしょう。主権者が明確な意思を示さなかったのだから、この結果もやむを得ないと言うべきでしょうか。

「フクイチ事故による国民負担」は、会計検査院や東電の資料を基に集計すると、10年間で17兆円を超えています(※ 下記関連記事参照)。それを更に固定化するスキームが、いよいよ動き出しました。
 軍産複合体ならぬ、原子力複合体がこの国に巣食っていると見紛うような現状は、3.11から10年近くが経っている今でも変わっていません。

※ 関連記事:​フクイチ事故による国民負担は10年間で約17.4兆円​ (当ブログの過去記事)


引っ繰り返せるかどうかは、1億2000万人の意志と行動次第

 原子力複合体(原子力ムラ)が優遇され、国民の富が収奪され続けることに、この国の主権者はいつまで黙っているのでしょうか。

「過去分回収」のスキームは、「電気事業法施行規則」で定められていることなので、理屈の上では、経産省が規則を改廃すれば中止させられます。
 規則の改正を承認するのは経産大臣であり、経産大臣を任命するのは内閣総理大臣であり、内閣総理大臣を選出するのは国会(衆議院)です。国会議員を選ぶのは主権者・国民ですから、主権者が明瞭な意思を表明すれば、撤回させる道は有るでしょう。

 結局は、主権者の意思と行動次第だと思います。

「中間とりまとめ・案」がパブリックコメントにかけられた際(2016年12月19日~17年1月17日)の提出件数は、1400件足らず(正確には1412件)でした。パブリックコメントを提出するのに、有権者である必要すら有りません。人口・約1億2000万人の日本で、僅か1400件しか提出されないという現状が続く限りは、経産省の「やりたい放題」は改まらないでしょう。


参考資料


 ポンチ絵の無断転載・引用はご遠慮下さい。

春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)​​​​​​​​​ ​​​​​







Last updated  2020.07.31 17:48:11
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