1178305 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

haruhasi

haruhasi

Calendar

Comments

haruhasi@ ややこしい記事を読んで下さり、有難うございます きなこ様  度々、コメントを頂戴して有…
きなこ@ Re:フクイチの汚染水(処理水)放出までの経緯 2012年11月~23年8月(10/13) 詳しい経緯のまとめ、ありがとうございま…
春橋哲史@ 提出、お疲れ様です 押田様  コメントを有難うございます。 …
押田真木子@ Re:5日間で4件のパブコメを提出して(12/29) 「23文字・最短20秒」ありがとうございま…
春橋哲史@ 新たなトリチウム分離等の技術について きなこさんへ  コメントを有難うございま…

Archives

2024.11.30
XML
カテゴリ:フクイチ 働く人

2024年度・上期のフクイチへの入域人数は約1万人​​​

 当記事は長文且つ情報量が膨大で、リンクの数も多いことを予めお断りしておきます。書き切れない部分は、拙ブログの別記事にまとめています。

(リンク)
●​原子力複合体にとって、協力企業従業員は「人」ではないのか​ ​​​​(20年1月8日)

●​故・大角さんの配偶者さんの訴えは棄却​(20年7月6日)

●​フクイチ過労死訴訟・判決と審理の振り返り(22年10月5日)

●​「フクイチの安全衛生管理対策のガイドライン」に関するレク​(22年12月22日)

●​​原発・被曝労働に関して読了した本~23年7月末時点~​(23年7月31日)

​​​ フクイチ(東京電力・福島第一原子力発電所)では、様々な作業が被曝しながら進められています。どれも、リスク把握・低減に関連します。
 作業が止まったり、出来なくなれば、フクイチの放射性物質が放置されることになります。

 やめられない被曝労働を続けているのは、ロボットではなく、生身の人間です。
 働く人は、全員が、誰かの息子、誰かの孫、誰かの友達です。そして多くの場合、誰かのパートナー、誰かの父親です。
 拙ブログでは、数字や計画の記事が多くなりがちですが、「基本は人」であることは常に念頭に置いています。

 2024年度・上期までのフクイチへの放射線業務従事者の入域人数・被曝線量と、24年11月までの死傷者数です。
 全て、東電の公表を元にしていることをお断りしておきます。
 最新の数字を先に紹介します。詳細はグラフ1をご確認下さい。

​●24年度・上期のフクイチへの放射線業務従事者の入域人数・被曝線量人数
 (雇用形態を問わず)入域人数:9998人(内、東電社員1326人[13.3%])
 
(同)月間入域平均人数:7571人
 (同)最大累積被曝線量:15.5mSv(協力企業従業員)
 (同)累積被曝線量が5mSv超の人数:686人(内、東電社員33人[1.7%])

●2011年3月11日~24年度・上期のフクイチへの放射線業務従事者の入域人数
 
(雇用形態を問わず)累計:19万7436人
   東電社員:2万4698人(約12.5%)
   協力企業従業員:17万3338人(約87.5%)
 (雇用形態を問わず)内、年間被曝線量が5mSv超の人数:累計5万1924人

●参考 
23年度のフクイチ以外の実用発電用原発への放射線業務従事者の入域人数
 (雇用形態を問わず)4万4675人
 (
雇用形態を問わず)内、年間被曝線量が5mSv超の人数:93人

​​​(注1:1Sv[シーベルト]=1000mSv[ミリシーベルト]/1mSv=1000μSv[マイクロシーベルト]/日本の法令では、一般公衆の年間被曝線量は最大1mSvになるように定められている)
​​(注2:放射線業務従事者の年間被曝許容量は5年間で100mSv[年間20mSv]。詳細は資料3を参照)


約13年半で死者は22人、熱中症を含めた負傷・体調不良者は500人超

 発災以来の作業員の死傷・熱中症人数の詳細はグラフ2をご確認下さい。

発災以降のフクイチでの死傷者数(~2024年11月)
 死亡:22人(東電社員2人+協力企業従業員20人)
 熱中症:133人
 負傷:387人(重傷32人+負傷等355人)​​
 (注:「重傷」とは、「14日以上の休み・後遺障害を伴うもの」。「負傷」には、「体調不良・意識不明」を含む)

 協力会社(元請・下請)の労働者が死傷した場合、東電は「(東電と)直接の雇用関係に無い」「作業との因果関係が認められない」等を理由に、詳細は公表しません。公表したとしても、元請からの報告をベースとしており、独自に調査もしません。
「協力会社の従業員が、寮で就寝中に亡くなっていたのが発見された」というような例は、集計すらされません。

 負傷についても、構内で申告せず、退勤後に病院を受診する場合は集計されません。東電公表の数字は「把握できる最低限の件数・人数」でしょう。他に裏付けのある数字が無いので、東電の公表を追うしかありません。

 フクイチでは、発災以来、東電が公表・認めているだけで21人が亡くなっています。その内、2人のご遺族が裁判に訴えましたが、何れも元請け・東電の法的責任は認められませんでした​(資料1の※1・2を参照)。

 改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご家族に哀悼の意を表し、負傷された皆様にお見舞い申し上げます。


数少ない朗報(?)

 一方で、朗報(らしきもの)も有ります。
 私は、2022年以降、毎年1月頃に、施設見学会でフクイチに行っているのですが、今年(24年1月下旬)に見学した際、入退域管理棟1階のER(救急救命室)出入口に、モニター付きインターホンが設置されているのを目視しました。

 2022・23年に見学した際は扉に「叩いて知らせて下さい」という旨が掲示されていました。
 モニター付きインターホンが設置されたのは、傷病者を運んできた際の対応の迅速化という意味で、一歩前進でしょう。

 先に記載した「フクイチ過労死訴訟」の控訴審で、21年9月に弁論終結・和解勧告をした仙台高裁の小林裁判長は「(ERの扉を)叩いて知らせるのが、最新の技術が集まっている原発構内でのことなのか」という旨を発言していました。
 この発言は弁論終結・和解勧告の中でなされたもので、判決ではありませんが、フクイチ構内の救急救命体制への批判として真っ当なものでしょう。

 故・猪狩忠昭さんのご遺族が東電・宇徳を提訴したのは、「フクイチ構内の労働環境を少しでも改善したい」という願いも込められていました。
 猪狩さんの死後、フクイチでは、「安全ハンドブックの作成と配布」「カメラ機能をオフにした携帯電話の貸し出し」が開始されており、恐らく2023年中と思われますが、構内のER出入り口にモニター付きインターホンも設置されました。
 過労死訴訟は原告敗訴でしたが、構内の労働環境・働く人を守る環境は、少しずつですが改善されています。
 特に、ERのインターホンについては、猪狩さんのご遺族が提訴した効果の一つではないかと、私は勝手に推測しています。

 当然、「一人の命が失われなければ設置できないものなのか」という大きな疑問は有ります。東電(正確には、原子力利活用の推進側)が「働く人の健康や命をどう捉えているのか」。その答えが、フクイチ過労死訴訟の判決確定後の「モニター付きインターホンの設置」ではないでしょうか?
 人間一人の命が失われ、高裁の裁判長に指摘されてから、やっと設置するのですね。

 フクイチの収束作業は「働いて下さる人がいるからこそ」成り立ちます。
 今後も、労働環境や安全衛生面のリリースや動向には、アンテナを高くしておきます。 


入域人数が増加

 フクイチへの放射線業務従事者の入域人数は、2014年度をピークに7年連続で減少してきましたが、22年度に8年振りに増加に転じました。
 入域人数が増えているのは、高線量廃棄物を扱ったり、原子炉建屋内外での業務が増えているのが原因と推測されます。
 それでいて、東電社員は入域人数の1割強という比率は変わっていません。

 高線量廃棄物を扱う業務は今後も増えていくでしょうし、原子炉建屋に立ち入る・接近しての業務も同様でしょう。
 東電・政府・国会は、「働く人」の確保・採用を、これからも協力会社(元請け・下請け)に任せ続けるつもりでしょうか?

 今後の入域人数がどのように推移するのか、予断を持つことは避けますが、世界最大の核災害の現場を支えている人材の約9割が協力会社の雇用で、入域人数が増えても、その分を東電社員でカバーできていないのです。
 何れは人材確保が困難になり、収束作業が滞る原因になるのではないかと危惧します。

「世界最大の核災害の現場での被曝労働」なのですから、生涯の健康診断・医療費の減免措置等を講じ、みなし公務員に相当する安定した身分を約束するような法的措置を講ずるべきでしょう。人道的な見地からも、収束を安定的に進めるという見地からも、「協力企業従業員任せ」は速やかに脱却すべきです。

 被曝労働や原発での労働が、全てではないにしても過酷且つ杜撰な管理であることは、フクイチ核災害前から指摘されています。当記事の冒頭に、関連書籍一覧をまとめた記事へのリンクも貼りました。
 数字に表れている「過酷さ」「杜撰さ」は、氷山の一角と思われます。
「フクイチをどうする」「原発への賛否」と言った、政策論や大所高所からの議論も大事ですが、「被曝しながら、勤務している会社によっては賃金を中抜きされながら、或いは死傷事故を隠蔽されながら、働いて下さっている方達のお蔭で、核災害の現場が回せている」ことは、大前提として押さえておかなければいけません。

 前置きが長くなりました。
 以下に、フクイチへの入域人数・被曝線量・死傷者等のグラフ・まとめを掲載します。

​​ グラフ・ポンチ絵はクリックすると拡大します。無断転載・利用は御遠慮下さい。


フクイチの入域人数・被曝線量・死傷者数

 当ブログのグラフ・ポンチ絵は、B5サイズ以上のPC・タブレットで閲覧する事を前提としていることをお断りしておきます。
 見難い場合には、ワードやペイントにコピペしてご覧下さい(Windowsの場合)。
 無断転載・引用はご遠慮下さい。
 記事の末尾には資料5として「2023年度までの日本全国の原発の放射線業務従事者の人数と被曝線量」も掲載しました。
​​
 尚、フクイチには、下記のような事例も有ります。
 働いた人の成果や、無災害はきちんと評価されるべきです。

(リンク)
●​福島第一原子力発電所の排気筒解体工事の事業者に「厚生労働省労働基準局長無災害表彰状」を授与​(2020年12月18日/1・2号共用排気筒の上部解体工事を行った「株式会社エイブル」が福島労働局から表彰)

●日本建設業連合会・土木賞・第1回(2020年)/​福島第一原子力発電所陸側遮水壁(凍土壁)


​グラフ1
「福島第一原発に放射線業務従事者として入域した人数と被曝線量 年度毎推移」​​​(2008~24年度・上期)

●放射線管理区域外である構内のコンビニエンスストアの店員や、駐車場の整理要員等は含まない。
●2010年度分の月間平均入域人数・最大被曝線量・平均被曝線量・5mSv越え被曝人数・年度入域人数・東電社員と協力企業従業員数は21年8月6日の資料に基づく(​リンク​)
●201118年度は19年7月31日の資料に基づく​​(リンク)
●2019年度分は20年6月17日の資料に基づく(​リンク​)
●2020年度分は21年6月14日の資料に基づく(​リンク​)
●2021年度分は22年5月12日の資料に基づく(​リンク​)
●2022年度分は23年4月28日の資料に基づく​(リンク)
●2023年度分は24年4月30日の資料に基づく(​リンク​)
●2024年度・上期分は24年11月29日の資料に基づく(​リンク​)




グラフ2 フクイチの作業員の死傷・熱中症等人数(2011年3月~24年11月)



資料1 福島第一・第二原発での作業員死亡一覧(2011年3月~24年6月)


資料2
2011年3月~24年度の福島第一原発での負傷・体調不良、年度ごと一覧

















資料2の出典一覧


グラフ3:福島労働局による、廃炉に携わる事業所への指導監督結果・年別推移


(出典/PDF)
●​2011~14年​  ●​2015年​  ●​2016年​  ●​2017年​  ●​2018年​  ●​2019年  ●​2020年 ●​2021年  ●​2022年  ●​2023年

資料3:法令・労働環境・装備等​




(リンク)
​​●熱中症予防サイト​(環境省/WBGT値の解説)   

●​不適合の公表アーカイブ​(東電)

●​フクイチで働く人とその家族向けのWebサイト「1 FOR ALL JAPAN」のトップページ

●給食のメニュー

働く人のインタビュー一覧

●​作業安全ハンドブック​(2023年6月版/PDF)


(リンク/福島第一原発の労働環境改善に係わるアンケート/2012~23年)
●​第2回(2012年12月公表)

●​第3回(13年5月)

●​第4回(13年12月)

●​第5回(14年11月)

●​第6回(15年11月)

●​第7回(16年12月)

●​第8回(17年12月)

●​第9回(18年12月)

●​第10回(20年1月)

●​第11回(20年12月)

●​第12回(22年1月)

●​第13回​(22年12月)

●​第14回​(23年12月)


資料4 装備別エリア分け


(リンク)
●作業環境

●構内の放射線データ



資料5
日本の実用発電用原発の放射線業務従事者数・被曝線量別人数(2007~23年度)


出典:●放射線審議会・眼の水晶体の放射線防護検討部会が201712月に作成した​​「眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について(中間取りまとめ)」8頁より。「原子力施設運転管理年報」(平成1924年度。独立行政法人原子力安全基盤機構。)及び「実用発電用原子炉施設、研究開発段階発電用原子炉施設、加工施設、再処理施設、廃棄物埋設施設、廃棄物管理施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について」(平成2529年度。原子力規制委員会)を基に放射線審議会の事務局(原子力規制庁)が調べたもの。


(リンク)
●​原子力施設運転管理年報​(平成13年度[2001年度実績]~25年度[2012年度実績])

●​​​2018年度の放射線管理報告

​​●「放射線管理等報告書」を含む発電所別の文書​​(「放射線業務従事者の線量分布」を含む/年度ごとの入域人数・被曝線量等は年度下期の放射線管理等報告書に記載)


春橋哲史(Xアカウント:haruhasiSF)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2024.12.10 14:32:18
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X