AD(H)Dのタイプについて~ダニエル・エイメン編~
「わかっているのにできない脳」の著者、ダニエル・エイメン博士は、精神科医ではありますが、精神医学面ではなく脳神経医学面からADHDにアプローチしています。そのきっかけは、軍医時代の経験です。新型バイオフィールドバック装置の実験結果から、脳波バイオフィールドバックに興味を持つようになり、退役して開業医になったときに装置を購入し患者を診ていました。その探究心はやがて脳波から脳画像へと興味を移してゆき、そして現在でもADHDの診断に使われているSPECTという手法にたどり着きました。エイメン博士はこのSPECTで様々な患者を診察していくうちに、ADHDの人の脳の働きに共通点があることに気がつきました。一般的にADHDは前頭葉の働きに何らかの問題があると言われていますが、エイメン博士はそれに加え、側頭葉や深部辺縁系に問題がある人もADHDとしています。またその問題も、活動過小と過多にわけています。タイプ1 典型的ADD安静時の活動は正常で、集中時に前前頭葉の下部および外側の活動が低下。最も目に付きやすいことから、典型的としています。主症状は「集中困難」「気が散りやすい」「整頓や時間の管理が困難」「多動」「衝動」をあげています。男に多いとされています。タイプ2 不注意型ADD安静時の活動は正常で、集中時に前前頭葉の外側で活動が低下します。主症状は「集中困難」「低意欲」「動作が鈍い」「退屈しやすい」などをあげています。頭の中は多動なのにそれが表に表れないし、疲れやすく活動的でないため、ものぐさ・夢見がち・カウチポテト族などと呼ばれてしまいます。女に多いタイプとされています。タイプ3 過集中型ADD安静時・集中時ともに前帯状回が活動過多です。さらに集中時には前前頭葉の下部および外側の活動低下が加わります。このため注意の切り替えが困難になったり、いやな考えや困った行動にとらわれてしまいます。しつこくて心配性。頑固で融通が利かない。あまのじゃくで議論を吹っかけることがしばしばある(うあああ、まるっと自分の事を書いているようでいやだ~)。アルコールホリックの子孫に見られることが多いそうです。タイプ4 側頭葉型ADD安静時・集中時ともに側頭葉の活動が不足している(まれに過多もある)。さらに集中時には前前頭葉の下部および外側の活動低下が加わります。主症状として「集中困難」「苛々しやすい」「攻撃的」「不吉な発想をする」「気分の変動が激しい」「学習困難」「愛想がない」「衝動的である」など。ADHDに限らず、精神疾患やLDなどの問題にもこの部位は大きく関わっているようです。タイプ5 辺縁系型ADD安静時は深部辺縁系で活動が過剰、前前頭葉の下部および外側の活動が不足。集中時も同様。主症状は「集中困難」「慢性的な低レベルのうつ状態」「思考がマイナス方向に偏る」「悲観的」「エネルギー不足」など。自己意識が全体的に低いようです。研究者の中にはADDとうつが一緒に表れているだけという人もいるそうですが、エイメン博士は、頻繁にこのタイプを目にすること、有効な治療法が共通していることなどから、ADDのタイプの1つに入れています。タイプ6 火の輪型ADD安静時・集中時ともに大脳皮質全域で活動過剰な部分がまだらに広がっている。集中時では悪化することが多い。また帯状回も活動過剰であることが多い。主症状は「集中困難」「気の散りやすさが極端」「怒りっぽい・苛立ちやすい」「感覚過敏」「機嫌が悪いことが多い」「反抗的」「おしゃべり」など。エイメンクリニックでもかなり遅くなってから確定されたタイプです。ADDの中でも特に困難なタイプである人が多いそうです。以前はSPECTを撮れる機械がある病院は少なかったのですが(高いらしいです)、現在はかなり数が増えてきていますので、問診だけでは信用できない人は撮影してみるといいでしょう。脳神経外科で取り扱っているはずです。ただしあらかじめお断りしておきますが、費用は高いですよ。私自身はやっていないので正確な金額は知りませんが、2~5万くらいしたような。参考文献『「わかっているのにできない」脳1』ダニエル・エイメン著ニキ・リンコ訳 花風社刊にほんブログ村