どっぷりレビュー

2006/02/24(金)22:18

『PROMISE/無極』(2006年) ★★★☆☆

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貧しい身なりの少女が食べ物を探している。顔は汚れて黒ずみ、靴も履いていない。少女は死人の手に握られた饅頭(マンドゥー)を奪って走り出す。 私がタイトルをつけるなら、第一章「それはマンドゥから始まった」。「チャングム」ウォッチャーですとクミョンが作った汁タイプか、チャングムが工夫したスンチェの皮かってところだけど、形は肉まんみたいなの。子供の手には少し大きめで。真ん中に赤い印がついている。 森には鎧を着た兵士たちの死体がいくつも転がっていて。死体だと思った番人の少年が突然、口を開く。驚いてマンドゥを落とす少女に、番人は少女が奴隷になるのと引き換えにマンドゥを返してやるという。約束を信じた少年と裏切った少女。運命に導かれるように彼らは再び出会う。 最初は子役です。この子が成長して誰になるのか、成長した姿を見てもにわかに信じがたいです。だって上には少女と書いたけど少年のようでもあるし。次に現れたとき王妃になってるんですよ。元ホームレスが。 時代設定は3000年前ということですが、現代に近いかもしれないし、未来とも取れるし。何でもありのスペクタクルファンタジー。こういうタイプの映画は細かいことにこだわらず、監督のイメージの世界を素直に受け入れてしまったほうが楽です。 敵味方の鎧から大地が赤と黒。二色に割れる戦闘シーンや、衣装、調度品の色彩感覚は鮮やかで、とても美しかった。 さすが元JAC。鎧を身にまとった真田さんの立ち回りは将軍という名にふさわしい貫禄です。あと15cm身長があれば映えるのになぁ。全編中国語でのセリフ。それだけでも苦労がしのばれます。 そうかといって、大画面で観るCGの荒さはいかんともしがたい。牛の大群はだんだん牛じゃなくなってくるし、人間凧揚げには笑っちゃったよ。屋根を疾走するチャン・ドンゴンももう少し何とかならなかったものか。途中から観たら鳥人間の話かと勘違いしちゃうよ。 少女(傾城/セシリア・チャン)が満神と交わした約束は「本当の愛と引き換えに、この世のすべてを手に入れること」。勝つことを宿命づけられた大将軍(光明/真田広之)は一粒の涙が死に繋がる定め。俊足の奴隷(昆崙/チャン・ドンゴン)は、何かを望むことさえ知らずに生きてきた。 この三人に敵役の無歓(ニコラス・ツェー)。嫌なヤツだけど彼にも意味を持たせたのが最後にいきてきます。ニコラス・ツェー、いいですよ。むしろセシリア・チャンより怪しい美しさがあります。 人間の弱さに対する代償やトラウマを乗り越える苦しみ。内面の葛藤やそこから這い上がろうとするエネルギー。国や時代が違えど、必ず横たわる普遍的なテーマを盛り込んではいるけれど、見た目の奇抜さに目を奪われて、巨匠の描く自由な世界だけが浮いているように見える。一度観ただけでは「無極」の意味さえ、うまく説明できません。 エンドロールの最後。真っ赤な「無極」の文字が印象に残りました。 ■『PROMISE/無極』オフィシャルサイト 日本版 ■『PROMISE/無極』オフィシャルサイト 韓国版 【VCD】 『PROMISE/無極』 メイキングVCD(中国版)

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