"美しき大川橋蔵" 私の想い出***優美*大川橋蔵の時代劇

2017/04/28(金)09:45

「大江戸喧嘩纒」・・・あとがき

その他(24)

大江戸喧嘩纒の撮影の時のちょっとしたお話を少しいたします。 クライマックスシーンは、(5)で書いた火事場シーンだということはお分かりだと思います。火事場の場面は撮り直しがききません。 どよめく群衆を蹴散らすようにめ組の纒が入ってくるところからの撮影がはじまりました。 屋根にかけられた梯子を纒をかかえたひばりさんがのぼり纒を振り始めます。(このようなところはカットされていましたね)煙りと火がひばりさんの身辺を包み、ひばりさんの身体がぐらりと傾いて、危ない、と思ったところへ橋蔵さんがかけつけ、しっかりと橋蔵さんに抱きついたひばりさんがにっこり笑って・・・ここで観客がほっとするという段取りです。 お二人は立て続けに5回も共演していますし、互いにマミイ・トミイと呼び合うほどの名コンビですから、火事場の真ん中でにっこりと微笑みあう呼吸もぴったり一致して、「チエッ、火事よりヨッポド熱いや」とスタッフ達をなげかせたというエピソードがありましたとさ。それはそうですよ・・ひばりさんの橋蔵さまを見つめる目、橋蔵さまがそれを受け止める目、そしてお二人が微笑む。私達だって撮影現場でこのようなお二人が見つめ合いにっこりほほ笑むのを見ていたら、きっと熱くてたまらなかったでしょう。 (6)で書いた半次が臨終の場面でのことです。 たった今息を引きとったばかりの半次役の星十郎さんの目がパチパチと動くので、監督から「固くならないで楽な気持ちで目をつぶっていてくれ、君はもう死んでいるんだから」と注意されると、星さんが「ひばりちゃんと橋蔵さんが、さっきからあまり仲がよさそうにくっついているので、つい気になっちゃって、死んじゃいられませんや」と答えたので、一同大爆笑。和やかな雰囲気のうちに、湿っぽいお通夜シーンの撮影が行われたという何とも愉快なお話でした。 (3)と(5)で書いたところに出て来た梯子のぼりと纒ふりですが、鳶もの映画の花形は何といっても纒持ちですね。 燃えさかる炎の中で火の粉を浴びながら、鮮やかな白い纒を高くふる姿こそ、男の中の男の魅力があります。火消の鳶の世界が今までに数十回となく映画化されてきたのも、スターの男らしい魅力が十二分に発揮されるからだそうです。 皆様も知っているところでは、阪東妻三郎、片岡千恵蔵、市川右太衛門、長谷川一夫、中村錦之助、市川雷蔵、と人気スターは誰でも一回以上纒を振っているということです。 この纒、制作ものでもある程度の重さがありますので、たやすい技ではないのです。纏が重く自由に上げ下ろしができないですし、うまくパラリとひろがってくれないと期待している結果がありません。下手に振り回せば頬を纒で打たれる恐れもあります。梯子をのぼるときも、纒を担いで登るときは両手を使わず纒を肩に担いで登らないとカッコよくありませんし、梯子を駆けあがるときも機敏でないとかっこがつきませんね。 というわけで、橋蔵さまもこの時が初めての経験なので、暇があるときは纏ふりの練習に夢中という状況でした。踊りの素養がありますので、一応形は整うのですが、どうかすると纏に振り回されそうになり「うわーっ、目がまわる」と、橋蔵さまはこぼしていたそうです。 しかし、九段の梯子のぼりのところの場面になると、見事にトントントンと手を使わずに屋根に上がり、多くのスタッフ達を感心させました。 褒められた橋蔵さまは、照れくさそうに頭に手をやったそうです。橋蔵さまは、運動神経がよく、走るのも速いし、ジャンプも高いし、殺陣も、乗馬も、泳ぎも何でも出来る人なのだから出来ないことはない・・・いや、完璧にこなすには、何事も練習です。 実は、橋蔵さまは撮影が終わって帰宅後、宿の階段を利用して、毎夜密かに練習に練習を重ねていたことを知る人は少なかったようです。(宿の人は橋蔵さまが階段を上り下り??何をしているのかと思ったでしょうね)  何事も日々精進ですね。この時の纒の練習、梯子のぼりの練習の成果が、この年の12月封切になった「花吹雪鉄火纒」で立派で素晴らしい纒持ちぶりを見せてくださいました。この作品での梯子のぼり、火事場の屋根の上での纒振り素晴らしいです。そしてこれぞ纒振りと見せつけたのは、ラストの裃姿で片肌抜いての素晴らしい動きながらの長い時間の纒振り。橋蔵さまだから、腰が入っていて力強い綺麗な纒ふりになっています。 youtubeに「火消し若衆」という歌に「大江戸喧嘩纒」の動画を使っているので、雰囲気を少し味わってください。そして、橋蔵さまとひばりさんの火事場の屋根の上でのお二人の甘いラブシーンでのお二人の目の使いかたと、橋蔵さまのカッコいい梯子ののぼりかた、ご覧ください。 (この動画が削除された場合は、ゴメンナサイ🙇)  

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