2024/02/17(土)07:13
海賊八幡船・・・(4)
誰が海賊なんかになるもんかい
磯野丹後守を殺し、右衛門太夫の手から赤ん坊の鹿門と逃げだした道休が呼びかける夢で気がついた鹿門は、大海原の上の青影丸の船中にいました。そして、その過程を思い出したのでしょう、「ちくしょう」といい船室から出ようとしたとき、黒白斎と伝馬が入って来ます。
鹿門「小静は、淡路丸はどうした」
黒白斎「淡路丸は無事に港を抜けて、博多へ向かいました」
鹿門「降ろせッ、何故この船に俺を乗せた」
黒白斎が、亡き父の志を継いでほしいと、いうと、
鹿門「やめろッ、そんな昔話にだまされるか。降ろせ、俺をこの船から降ろせ」
そのとき、頭上から「あはっはっはっ、そうはいかん、あっはっはっは」と笑い声が響いてきます。
鹿門が頭上を見上げると、その男は、船はもはや播磨灘に向かっている、といいます。
「誰だ、おまえは」と聞く鹿門に、その男は「この船の頭領」と答えます。村上水軍の若大将、村上新蔵人です。
この青影丸は八幡船の根城因島に行くと聞き、
鹿門「因島?・・・ちくしょう、どけ」
と、船上に上って行き、
鹿門「海賊、船を止めろ」
と叫びます。
「手数のかかる客人だ」と苦笑する新蔵人に、興奮を抑えきれない鹿門は、
鹿門「これが客の扱いか、人さらいめ」
そういうと、新蔵人を押しのけ、海へとび込もうとする鹿門。「泳いで帰るんだ」と喚く鹿門を「鮫の餌食になりたいか」と強く止める新蔵人に「じゃますんない」と突き飛ばす鹿門に、新蔵人も怒り顔色を変えます。
新蔵人「のぼせるな」
鹿門 「なにぃ」
新蔵人「来い、堺の町で育った細腕を、八幡船の男に叩き直してくれるわ」
鹿門 「海賊などにされてたまるか。堺の商人は腕の仕込みが違うんだ、・・・
来い」
猛烈な取っ組み合いとなります。叩かれたら叩き返す、甲板を動き回り五分と五分の喧嘩が続き、双方ともへとへとで立てなくなりながらも、つかみ合いののしりあうのです。
新蔵人「これしきのことでめくら船の二代目になれると思ったら大間違いだぞ」
鹿門 「寝ぼけんない、誰が海賊なんかになるもんかい」
新蔵人「因島に来て、おれのおやじにいえ」
鹿門 「よーし、連れて行け、海賊の大将ならお前達より少しは話がわかるだろ
い」
そういうと二人は一旦離れますが、まだ懲りないようなので、黒白斎は伝馬から水の入った桶を受け取ると、二人に浴びせかけます。
黒白斎初め乗組員はその様子を見て大笑い、青影丸は因島へ向かって行きます。
続きます。