海賊八幡船・・・(6)
八幡船は賊ではない村上入道は鹿門の来たことを喜んで迎えます。入道「我らの念願が叶い、磯野丹後守殿のお子をこの島へお迎え申すとは、八幡大 菩薩のお導き、村上入道この上もない喜びでござる」鹿門「私は堺の商人、壺屋道休の息子です。・・・海賊になるために来たのではな い。妹の安否が気遣われるんだ、返してください」鹿門を止めようと口を挿んだ黒白斎に向かい「うるさい」といい、鹿門「俺は大将にかけ合っているんだ、引っ込んでろ」「そうは参りません」という黒白斎。入道は、突然の境遇の変り方で混乱されるのも無理はない、というと、立ち上がり窓を開けに行き、鹿門を呼び寄せます。 窓から見えた雄大な海に一瞬動ひきつけられた様子の鹿門に入道が話します。入道「この海の彼方には、父君の活躍されたルソン、シャムなどの広々とした国が あるのだ」 鹿門「その南の国々では、八幡船に荒されて、手を焼いていると聞いたぞ」それについて入道は「それこそ父君を滅ぼした右衛門太夫のニセモノの仕業で、八幡船は賊ではない。通商交易を本来の目的としたりっぱな水軍なのだ」と鹿門にいいます。 入道がもう一方の窓を開けて、海に浮かんでいるものを指さします。入道「今度、あなたのために新しく造っためくら船だ。・・・あれこそ、父君の意 志を継ぐめくら船、誠の八幡船じゃ。・・・鹿門殿、入道の頼みじゃ、あの 船の頭領になってくだされ。そして、八幡、和光と盗賊のように思い恐れて いる人々へ、八幡船本来の姿を示すことが、亡き丹後守へ対して我ら水軍あ げてのはなむけじゃ、頼む」 それに対して、鹿門は怒ります。鹿門「やめてくれッ、・・・そんなことは老人の感傷だ、夢だ。俺の運命を狂わし てまで遂げられてたまるか」 それを聞いて新蔵人が「なに」というと、鹿門「大将だなんて、ちっとも話が分からないじゃないか」そういって3人を見ると、「もう頼むものか」と怒鳴り、表へ駆けだして行きます。鹿門を追って行こうとした新蔵人と黒白斎に入道が「追うな」といいます。村の方に走って行くとめくら船の頭領と島の人たちが喜び取り巻くのをかわし、鹿門の足は海岸線を走り、引き寄せられるようにたどり着いたところは・・・・・・思いもかけぬ場所だったのです。 続きます。Ж Ж Ж Ж Ж Ж Ж Ж Ж Ж