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カテゴリ:些末な日常
BGM
=== (全身フルプレートの完全武装……銃器が効かないのなら……!) ザッ……! (何かの武術……?構えが変わったですよ……?) 「はっ!」 (隠れて特訓したとっておき……!私みたいな力が無い人間でも唯一相手に決定打を与える事が出来る技術……!”女性”だからこそ真価を発揮する武術!) (……いや、違うですよ!変わったんじゃなくて構えが”無くなった”……!) ピシャリッ! ゴォオオオオン!!!! 「どう?鎧越しとは言え、しばらく痺れるでしょう?」 (いったぁ~……!やっぱり金属相手じゃこっちにも反動が大きい……) 「おぉ……響く響く……」 (徹底した構えの脱力とスピーディかつ柔らかな動作……システマ使いか……!) 「まだまだ終わらないよ!」 (そう、全身をゴムの様にして放つ、鞭の如き打撃。 硬化した筋肉では決して、習得できない!……だからこそ私が選んだ技術!) ビタァアアン! 「ふふ……ふふふふ……!ハハハハハッ!」 (凄いダイヤの原石を発見してしまったですよー! 一見、鍛えていないような柔らかい肉だからこそ!それは靭やかな竹の様に!そして何よりも……美しい筋肉!) 「りゃぁあ!!」 (くっ!痛いなぁ……!せめてあの鎧さえ無ければ……!) ベチィィイイイ! (あの一見すると、ただの少女の細腕……その実、完全なる比率で磨き上げられた肉!嗚呼、たまらないですよ……垂涎ものですよー……) 「抱き締めたいな!筋肉!」 「……うっ」 (こいつ何なんだろう……攻撃もあまり効いてないみたいだし、気持ち悪い……) じりっ…… (おっと……興奮し過ぎてついつい本音が漏れてしまったですよー……。ま、しかしダイヤとは言え原石は原石。まだまだ輝きを放つには早すぎる、か) ガシッ! 「……むごごごむご!むぐぅぐ!(この卑怯者!鎧を脱げ!)」 「おいおい。真剣勝負に卑怯もクソも無いですよー。さぁて、どうしようっかなー……」 「むぐご。……もごごぎごごごぐぐぐごご(殺して。……捕虜になるくらいなら死んだ方がマシ)」 「……そうか。 と、普通なら言う所だが……ふはははは!残念だったな!心優しいアーサ・グレイシャス様は女子供は手にかけぬのだ! 殺す事の方が簡単だからな!私が強いという証明!生き証人になるですよー!」 (グレイシャス……!確か、帝国の名家……!貴族の文官が何故、こんな泥臭い戦場に!) 「だんまりか?ハハハハッ!アーサ様の懐の深さに声も出ない様だな!」 (私の記憶が正しければ……!アーサ……その名前の、グレイシャス家の息女はまだ……!) ガンッ! 「おっと……イテテ……まだ抵抗する気力がありやがるですか」 「本当に、中身はアーサ・グレイシャス……」 (……やっぱり子供!) 「お?私の事を知っているですか?いやー、私も顔が売れてきたですかねー? そうとも!私がアーサ・グレイシャスですよー! 私の名前はなー、父上が世継ぎにアーサーと名付ける予定だったらしかったのだがなー、女である私が生まれてしまったので、そこで女性名であるアーサに落としたのだそうだ。 ……全くもって、父上ときたらせっかちで困るですよー」 (自分で名乗ってたくせに……) 「何で、その尊い尊い偉い偉いグレイシャス家の貴族令嬢様が、こんな所にいるの……?」 「いや、それがなー。聞くも涙、語るも涙な複雑な事情があったですよー」 ~~~~ ~グレイシャス家 宝物庫 鏡台前~ 「う~ん、やっぱり鎧は美学ですよー。武官でも無いのに我が家にこんな立派なフルプレートがあって幸せですよー。父上の趣味に感謝ですよー。惚れ惚れするですよー」 カポッ 「……それにしても退屈退屈退屈ですよー!書物での筋肉審美も飽きてきたし、何か刺激が欲しいったら欲しいですよー。生のたくましい筋肉が見たいですよー!!」 ピタッ 「……いや、待つですよ。確か、今は戦時中だったハズですよ……って事は生で筋肉が見放題のスペシャルチャンスですよ!そうと解ったら善は急げですよー!!」 ~~~~ 「……と、まぁ、こんな感じでやってきた。幸いフルアーマーでは素性も誤魔化すのが容易でな。簡単に潜り込めたワケですよー。 そしたら、君のような素敵な筋肉ちゃんに出敢えてハッピーハッピーなのですよー」 「……どこまでが本気なの?」 「無論、全部真実ですよ」 「…………何よ、それ……」 「さて、では、自己紹介も終わった所で、私から一つアドバイスだが。 君は、まだまだ浅慮すぎるな。幾ら何でもフルプレートに相手にシステマは無い。……あれは表面のみを叩く技術だ。 内部破壊を主とした古武術系統で無いとダメージは通らないぞ?及第点もあげられないな。 だが、君はまだまだ伸びる。精進しようではないか!」 「……そんなの」 「……自分でも解ってるよ!でも!私には才能が無かったから!……それしか出来ないんだよ! 馬鹿にしないでよ!ふざけないでよ!貴族の道楽でやってきてるアンタなんかにっ!説教なんてされたくない!」 ――自身より年下の、それも恐らく今まで訓練すらまともにしていない、物見遊山で現れた少女。そして、そんな少女にすら勝てない自分。負けた自分。無様な自分。 その悔しさが、惨めさが……堰をきって溢れ出した。 「……”才能”か…………嫌いだな。そういうの」 「みんなみんなみんなみんな……!何で私ばっかり!私なんて役立たず放っておいてよ!何も出来ないって知っているなら干渉してこないでよ!」 「”天才”とか”才能”って言葉は・・言った人間を美化しつつ他人を見下す魔法の言葉であり・・・・最高の侮辱になる。 その、君が言う”才能ある者”が努力していないと何故言い切れる?”天才”は常に楽で、苦悩すらした事の無い人間だと言うのか?」 「持っている人間に……!持たざる者の気持ちが解るワケ無いよ……!」 「……何を言うか。君は持っている側の人間だろう? 人が最も憎み、忌み嫌う人間は!自分達より劣っている人間ではなく、自分達より優れている人間だ!……だから”才能”とか”天才”だとか侮辱の言葉で自身を貶めるな!自分の価値を自身で下げるな! 下らない誹謗、中傷なぞにヘコタレるな!誇りを持つですよ!カリン!」 「うぅ……うわぁああああん!」 ――独りぼっちになってから初めての激励。自身を認めてくれた言葉。 それはどんな褒章よりも少女にとっては貴重で、大切なモノであった。 先程までの悔しさ、そして嬉しさが綯交ぜとなって少女の中で爆ぜ、眠っていた―― ――否。無理矢理、寝かしつけていた感情が溢れ出した。 少女の中で”人間”が生まれ、同時に父母が死んだ瞬間だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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