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2013年02月12日
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カテゴリ:カネミ油症のこと



1.カネミ油症、41年前のレポート

2.カネミ油症、歯のない子どもたち

3.会社に責任があると認めなければ金を支払う

‥からの つづきです。



家




   ガンが 異常発生

 軒に ミズイカがいっぱい干してある Hさんのお宅を訪ねた。

 『カネミ油症についておたずねしたいんですが』 と 言うと、

 『もう、東京からもどこからも多ぜい来ちゃったよ。 どうせ来るんなら
 金でも何でも持ってきてくれれば、わしら助かるがな』 と
 奥にいたおじいさんが 明るく答えた。

 Hさんは、家族8人のうち、顔に吹出物ができていなかった
 おばあさんの他、みんな認定されている。
 カネミ倉庫との示談契約には応じている。

 最近は へ の つんばりも出なくなったというおじいさんは、
 肛門に腫れ物が三回もできた。 手足はしびれるし、
 胃もめっきり弱くなった。 口もねばねばする。
 頭には、できもののため禿げができてしまったそうだ。

 玉の浦町のガンの発生率は、異常なほど高くなっている。
 歯医者のKさんの死亡診断は肺ガンであるし、私たちが帰京してからも
 福江の病院に入院していた油症患者が胃ガンで亡くなっている。

 ガン患者の多くは老人であるが、抵抗力の弱い老人がPCBによって
 致命的な打撃を受けているのは、子どもの場合と同じようだ。

 『あんまり痛いんで、きょうは灸をすえた』 という Hさんのおじいさんは
 まだまだ元気そうだが、いつ原因不明の症状 (たぶん、ガンとでも
 診断されるのだろう) が あらわれるかは わからない。


   不良品と知って、売った?

 人口4000人余の玉の浦には、未認定を含めて
 約1000人の油症被害者がいると言われている。
 なぜ、離島の狭い地域に被害者が集中しているのだろうか。

 町のN商店が福江からドラム缶10本のカネミ油を仕入れ、
 市価330円のものを280円で安売りした。
 油症被害者の中には、この時だけ
 N商店から油を買って食べたという人が多い。

 自家製の椿油を800円で売って、安いカネミ油を買った人もいる。
 B浦には、N商店がライトバンに積んで売りにまわった。

 被害者たちが、N商店を恨んでいるかと思ったらそうでもなかった。
 ともすれば、加害企業への怒りを個別の怒りにおきかえて
 しまうことの多い日本で、ひとつの救いであった。

 長崎市内では、高いから買いたくても買えなかったという
 このカネミ油を 安売りするためには、仕入れも安くなければできない。

 N商店では、福江で50本買わないかとすすめられたが、
 金の工面ができず10本でやめたのだという。 (後述)

 これらのことからも、カネミ倉庫は不良品と知っていて品物を流した、
 しかも、万が一の場合、交通も情報も不便な五島を
 選んだのではないだろうか、という疑問がわいてくる。
 そうだとしたら、たいへんな差別である。


家

41年前の私のレポートの途中ですが、ここで

2008年5月18日に 長崎新聞に掲載された
星 売った苦悩-毒入り、知っていれば

より 一部を 転載させていただきます。





   自らも被害、口に出せず 

 「カネミはなぜ毒入りの油ば出荷したとか。
 へき地で売ってしまえば分からんだろうと
 田舎者ばだました。
 金にしようとたたき売った」。

 五島市に住む男性(63)の
 総入れ歯のくぐもった声が 震えた。

 男性は、四十年前、カネカ(旧鐘淵化学工業、大阪市)製
 ポリ塩化ビフェニール(PCB)が 混入したカネミ倉庫
 の食用米ぬか油を、汚染されていると知らず五島市内で
 販売した。 自分も家族も油症被害を受けながら、油を
 地域で売ってしまった苦悩を抱え、生きてきた。

 当時、市内でスーパーなどを営んでいた男性の父が、
 トラックで 福江に米の仕入れに行った際、声を
 掛けられたのが始まりだった。「安か油のある」。

 別の食用油を扱っていたので断ったが幾度も頼まれ、
 根負けし、一斗缶で五十缶を仕入れた。 男性は
 当時二十三歳。 軽トラックで缶のまま売った。
 安いので皆、飛び付いた。

 えたいの知れぬ病気が広がった。 吹き出物、皮膚や
 つめの変色、異常な倦怠(けんたい)感-。
 「この店が毒ば売って金ばもうけた」。
 店先で会話が聞こえるたび、母は奥に逃げ込んだ。

 男性や家族も、汚染油を摂取していたため吹き出物と
 大量の膿(うみ)、寝汗、脱力感などに悩んでいた。

 朝起きると、布団に染み出た膿で体が接着され、
 はがすのが痛かった。
 男性は逃げるように島を離れ、
 長崎市でタクシー運転手に。
 歯が軟らかくなり、溶けるように抜けていった。

 体の骨が溶解する恐怖に耐えながらハンドルを
 握った。 数年後、男性は五島に戻ってきた。

 入退院を繰り返した母は、目が悪くなり、
 十二年前、 近くのがけから 誤って落ちて死んだ。
 父は今年一月、急死した。 
 「自分たちも患者だ」。
 涙を流して語った 父の顔が忘れられない。

 「もし買ってきて売らなかったら。
 そのことばかり考える。
 でも毒入りとは知らなかった」。 

 男性は、カネミ倉庫への強い憤りがある。 
 だが、引け目から口を閉じ、救済を求める
 活動にもかかわれなかった。 
 今も膿が出るという首筋を触りながら、
 「毒油に体も心も家族もずたずたにされた」と語る。

 「一つ望むことがある。
 カネミでもカネカでも国でもよか。
 原爆(被爆者)の何分の一でよかけん
 油症患者に援助ばしてほしか。そうしたら
 父もいくらか、浮かばれるかもしれん」


家



同じく、2007年6月2日の長崎新聞より

星 ようやく、スタートライン

転載を させていただきます。

家



 漁業の島、奈留島。

 一九六八年、腕のいい漁師だった矢口は、
 妻と四人の子の六人暮らし。 社交的な妻は、
 島内の飲食店経営で才能を発揮した。 
 休漁の夜は特に繁盛し、
 子どもたちの将来のため、懸命に働いた。

 同年三月ごろ、体に良くて安いと評判の
 食用米ぬか油を島内で購入。家でも店でも使った。

 数カ月で一升瓶七、八本を使ったころ、
 家族全員に異変が起きた。膿(うみ)を
 伴った吹き出物が顔や太もも、
 背中、皮膚の薄い局部に広がった。 

 熱とかゆみ、大量の目やに、異常なだるさ、
 顔や体の腫れ、痛み、つめの変形、変色、脱毛-。

 「何が起きたか、訳が分からなかった」

 十月に油症が新聞報道されたことも知らず、
 病院でも原因は分からなかった。
 その間も油を使い続けた。 

 「安売り油に毒が入っていた」。 

 うわさが島に広がり、矢口らがようやく
 油症と認定されたのは 六九年九月だった。

 「店のお客さんにまで毒油を食べさせてしまった」。

 妻は今も罪悪感に苦しんでいる。
 その妻も当時、肝臓が化膿(かのう)して
 無数の石ができ、高熱で生死をさまよった。 

 島にも被害者の会ができ、矢口らは七〇年、
 カネミ倉庫、鐘淵化学工業(現カネカ)、
 国を相手取った集団訴訟に参加。

 闘いは十七年間も続いた。 

 二審の勝訴で、損害賠償の仮払金を家族五人分受け取ったが、
 裁判費用や 医療費、生活費などに消えた。 

 その後、最高裁で逆転敗訴の可能性が高まり、
 原告側は国への訴えを取り下げた。 

 九七年、国は 「仮払金は不当利得」として
 返還請求の調停を申し立てた。

 「国は被害者を救うどころか、地獄に突き落とした」。
 無数の病と返す当てのない借金。

 底無しの失望感が残った。(敬称略)

   ※ 新聞記事の冒頭に戻ります。

 カネミ油症事件の仮払金返還免除特例法が一日、成立した。
 
 「心の重しが取れ、ようやくスタートラインに着いた」。

 そう言いながら、カネミ油症五島市の会会長、
 矢口哲雄(83)の表情はさえなかった。

 苦しみながら死んでいった人、
 仮払金返済に耐えきれず自死した人、
  
 今も油症を隠して暮らす人
 自身と仲間たちの四十年間の苦悩、
 
 そしてこれからを思えば、手放しで喜べなかった。


家


つぎへ つづきます。





【カネミ油症のこと】

カネミ油症ドキュメンタリー見て下さい

 









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最終更新日  2013年02月12日 23時02分09秒
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カネカ   どんぐりおばさん さん
昨夜のMXテレビみました。
カネミ油症のことは事件の名前は知っていましたが、今も被害者が救済されず苦しみ続いている、放射能・水銀などと並ぶ問題という認識がありませんでした。
当時の坂口厚生大臣が、国会で役人の用意した答弁を読まずに「ダイオキシんである」と答弁したところは政治家の質の大切さを感じました。

テレビではサラリと理解し、このブログでさらに深く学ばせてもらっています。

カネカ! 
わが職場のベーカリーでいつも使っている会社ではないですか! パンと化学物質?
  http://www.kaneka.co.jp/branch/food/

やはり可能な限り化学物質を身近なものから避けて自然なもので暮らしていくようにしなければいけませんね。

もっと知って、企業の責任、国の責任について考えていきたいと思います。
来週火曜のMXテレビも録画予約して見逃さないようにします!
(2013年02月13日 09時14分47秒)

Re:カネカ(02/12)   はてなのゆり さん
どんぐりおばさん、こんばんは!
>昨夜のMXテレビみました。
>カネミ油症のことは事件の名前は知っていましたが、今も被害者が救済されず苦しみ続いている、放射能・水銀などと並ぶ問題という認識がありませんでした。
>当時の坂口厚生大臣が、国会で役人の用意した答弁を読まずに「ダイオキシんである」と答弁したところは政治家の質の大切さを感じました。

>テレビではサラリと理解し、このブログでさらに深く学ばせてもらっています。

★昨夜のテレビ、母のところで見ました。
 私も、身近な方がカネミの被害を受けていると知って、ショックでした。
 裁判で和解が成立した等々の報道がされると、不満足ながらも救済はされたのだろう、
 などと思ってしまいましたが、全く違っていました。それもまた、ショックなことで、
 何もしないで何十年も過ごしてしまったことに、気が滅入ります。

>カネカ! 
>わが職場のベーカリーでいつも使っている会社ではないですか! パンと化学物質?
>  <small> <a href=" http://www.kaneka.co.jp/branch/food/" ; ; ; target="_blank"> http://www.kaneka.co.jp/branch/food/< ; ; ;/a></small>

>やはり可能な限り化学物質を身近なものから避けて自然なもので暮らしていくようにしなければいけませんね。

★食品公害から身を守るためには、同じ加工食品を
 食べ続けない方がよいとも聞きます。
 逆に、大量に食べ続けない限り、
 多少の被害を受けていてもわからないということですよね。

>もっと知って、企業の責任、国の責任について考えていきたいと思います。
>来週火曜のMXテレビも録画予約して見逃さないようにします!


★ご近所で、来週のテレビも合せてDVDにして下さるという方がいらして、うれしいことです。
 今回、見られなかった人とも、お店で見たりできたらいいな~と思います。
 少しでも多くの方に知っていただきたいですね。 (2013年02月13日 18時07分34秒)

九州朝日放送   どんぐりおばさん さん
「歯のない子供たち、カネミ油症」で検索していたら
このページを見つけました。
過去の放送を見ることができるのでさらに学ばせてもらおうと思います。
http://www.kbc.co.jp/tv/kanemi/ (2013年02月13日 23時02分35秒)

ドキュメンタリー映画「食卓の肖像」   どんぐりおばさん さん
金子サトシさんという方が映画作られたんですね。

http://www.youtube.com/watch?v=SARtGYeijw8 (2013年02月13日 23時29分09秒)

Re:九州朝日放送(02/12)   はてなのゆり さん
どんぐりおばさん、おはようございます。
>「歯のない子供たち、カネミ油症」で検索していたら
>このページを見つけました。
>過去の放送を見ることができるのでさらに学ばせてもらおうと思います。
> <small> <a href=" http://www.kbc.co.jp/tv/kanemi/" ; target="_blank"> http://www.kbc.co.jp/tv/kanemi/< ;/a></small>

★やはり、九州の放送局や新聞は、こちらよりきちんと追跡してくれているようですね。
 ネット上だけでも、かなりを知ることができるようです。
 それをわかりやすく周りの人に伝えていくことができるといいですね。
 お知らせ下さり、ありがとうございました。 (2013年02月14日 08時32分13秒)

Re:ドキュメンタリー映画「食卓の肖像」(02/12)   はてなのゆり さん
どんぐりおばさん、ありがとうございます。
>金子サトシさんという方が映画作られたんですね。

> <small> <a href=" http://www.youtube.com/watch?v=SARtGYeijw8" ; target="_blank"> http://www.youtube.com/watch?v=SARtGYeijw8< ;/a></small>

★金子さんは、1月27日の集まりにも参加されていました。
 2月22日に池袋で、カネミ油症関東連絡会の第一回会合があります。
 その時に映画上映のチラシがいただけるはずですので、ブログでご案内したいと思っています。
 22日午後1時からの集まり、どなたも気軽に参加していただけます。
 近くなったら、会合のご案内をさせていただこうかと思っております。 (2013年02月14日 08時38分47秒)

安売りだけではないこと   ゆーりっく さん
カネミ油症を調べていると、よく「安売りされていた油」という言葉が出てきます。
カネミが問題を知った後に安く売ったのかもしれませんが、
私の母は「ライスオイルは健康にいい」との評判を聞いて購入したそうです。
問題が発覚する前に事故は起きていたはずなので、安売り品以外の購入者にも被害は広がったと考えられます。

安売りの状態で購入した人たちも、「健康にいいものが安くなっている」と喜んで購入されたのだと思います。

私は健康に気を配る消費者が被害にあった事件だと思います。
悲しいです。
(2013年02月15日 09時17分02秒)

Re:安売りだけではないこと(02/12)   はてなのゆり さん
ゆーりっくさん、こんばんは!
>カネミ油症を調べていると、よく「安売りされていた油」という言葉が出てきます。
>カネミが問題を知った後に安く売ったのかもしれませんが、
>私の母は「ライスオイルは健康にいい」との評判を聞いて購入したそうです。
>問題が発覚する前に事故は起きていたはずなので、安売り品以外の購入者にも被害は広がったと考えられます。

>安売りの状態で購入した人たちも、「健康にいいものが安くなっている」と喜んで購入されたのだと思います。

>私は健康に気を配る消費者が被害にあった事件だと思います。
>悲しいです。

★美容と健康に良いという宣伝と共に売られていたカネミ油は、他の油より高価だったそうです。健康に良いと信じて高価な油を買われた方々が多かったと思います。その一方で、西日本一帯でニワトリ何十万羽が死んだダーク油事件のあと、何らかの不良品と知って?!遠い離島に安売りされています。もし、ダーク油事件の時に、国が、人間が食べている油はどうかと検査していれば、もっともっと被害は少なくてすんだはずです。それなのに国の責任が問われていないなんて‥ 知れば知るほど理不尽なことばかりですね。 (2013年02月17日 18時04分15秒)


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