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音楽雑記帳＋　クラシック・ジャズ・吹奏楽

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2022年02月の記事

全15件 (15件中 1-15件目)

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ゲルギエフ　ウイーン・フィルのコンサートで急遽交代させられる

ウクライナへのロシアの侵略のニュースが毎日報道されている。管理人もこのニュースには関心を寄せている。一時、ロシアがそういう行動に出たのも無理はないと思っていた。NATOに包囲されて、追い詰められた挙句の所謂「窮鼠猫を噛む」の行動だったと理解していた。ところが、その後のロシア軍の攻撃の拡大の様子を知るにつれ、甘かったと思うようになった。国連がいかに無力であるか、を嫌というほど思い知らされたからだ。所詮、国連は常任理事国の拒否がある限り何もできず、常任理事国は好き勝手をできることが、今更ながらあからさまになってしまった。西側諸国では今後ロシアへの制裁が開始されるが、政治以外のことでもロシア人に対する風当たりは強くなりそうだ。今日届いたメルマガの、ゲルギエフとウイーンフィルが25、26日に行う予定だったカーネギーホールでのコンサートで指揮者とピアニストが交代したという報道も、その一つだろう。プーチン支持者の著名指揮者を直前キャンセル、カーネギーホールこの報道によると、ゲルギエフとプーチンが30年来の友人で、クリミア併合を支持する署名を行ったり、2016年にシリアで行われたパルミラ遺跡のイスラム国からの奪還で、ロシア軍の支援に対する感謝を表したコンサートの指揮者としてゲルギエフが参加し、ロシアのプロパガンダに利用された。まあ、政治にコミットした活動をしている限り交代されるのも当然のことだろう。今回、ゲルギエフとプーチンの関係が知られることになったことは、単にコンサートでの出来事に終らず、ゲルギエフの今後のキャリアや、政治に無関係な他のロシア国籍の音楽家への影響も少なからずあるだろう。冬季五輪の政治利用といい、原油の高騰といい、ますます住みにくい世の中になっていきそうだ。それに引き換え、国内政治の緩み切った雰囲気には、あきれ返る。そもそも立憲共産党の蓮舫に、NSC（国家安全保障会議）の開催を迫られる首相って、考えられない程ノー天気だ。(3/6追記）ネトレプコもメトから降板させられた模様。プーチン大統領批判を拒否したのが理由とのこと。米芸術界でボイコット拡大　メトロポリタンオペラの歌姫も降板一方的な西側の情報のみでロシアとロシア人を攻撃するのが正義みたいな風潮だが、とても危険な見方だと思う。ロシア人のyoutubeを見ていると、何も悪いことをしていないのに、沈痛な表情をしていて、かわいそうで見ていられない。

2022年02月28日

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芸能山城組：輪廻交響楽　Ecophony Rinne

このところ変態ソフトの音源に興味があり、レビューでもいくつか取り上げた。そのつながりで、芸能山城組の「輪廻交響楽」のハイレゾを購入しようと思ったが、国内の音源はバカ高いし、海外ではリリースされていないので、仕方なく現在も入手できるCDを購入した。単に音がいいという次元を超えた、高度な技術を使った広大なサウンド空間が魅力的だ。また、山城祥二の作品が実に素晴らしい。ブックレットには音楽評論家中村とうよう（1932 - 2011）氏の解説と、作曲者の山城氏から中村氏への書簡の抜粋が作品解説として収録されていて、これが曲を理解するうえで、大変参考になる。中村氏が、芸能山城組のデビュー作「恐山／銅之剣舞」から5作目の「芸能山城組ライブ」までをプロデュースされたことは知らなかった。芸能山城組のユニークな取り組みを世の中に広く知らしめることが必要と感じた氏が、ビクターに売り込んだことから、彼らの活動が注目され始めたという。こういう音楽は優れた目利きと、実際に行動に移す人間がいないと世の中に知られることはなく、このことだけでも中村氏の業績は計り知れない。また、山城氏の中村氏宛の書簡が曲について大変詳細に書かれている。本来企業秘密？である音の作り方まで明かされていて、大変に参考になる。ただ、こういう音作りを引き継いでいる音楽家はいるのだろうか。この交響楽は生まれ、育ち、新しい生命を生み、やがて死を迎え、土にかえり、生まれ変わるという生と死のサイクルをテーマとしている。第1楽章「翠生」が最も聴きごたえがある。「プロローグ」でのトーンクラスタの合唱は8つのパートに分かれていて、ピッチを保ったまま２分以上声を出し続けなければならない。山城氏はこれを実現するために、次のような方法で実現した。①シンセで近似したサウンドをサウンドを作り、②そこにテンポを示すクリックのイズをかぶせた。③その音を合唱団の1/3程人間がイヤホンでモニターしながら声を出し、④残りの2/3がそれを聞きながら声を出すという方法をとったそうだ。ここでは巨大な太鼓を思わせるサウンドが聞こえる。これは、一人で持つことの出来る日本の平太鼓をチベット密教方式のばちでたたき、エフェクトを加えたものであるという説明には驚く。第1節「翠生のテーマ」でのアフリカのピグミー族のやり方を参考にした、ユーモアのあるサウンドもユニークだ。一事が万事この調子で、山城氏の確たるイメージを実現するための適切な楽器選定や、演奏方法の工夫、サウンドの加工方法等すべてが的確な方法で実現されたのだろう。音もさることながら、氏の底なしの探求心に驚くばかりだ。第2楽章は声明や仏教の打楽器、ガムランの楽器を使ったもの。第3楽章は幻想と瞑想のガムランと呼ばれるスマルプグリガン・タイプの楽器で妖艶なサウンドを作り出している。沖縄音階に近いバリとジャワのペロッグ音階（5音音階）を使った、ビブラートのない真っすぐな女性ヴォーカルがよく合っている。第4楽章「転生」は最も長く13分半ほど。生態系の脈動を表すために、バリ島ジュムラナ地方に伝わる打楽器アンサンブルの一種「ジェゴグ」が使われている。ジェゴグはバリ島に自生している竹をチューニングしたもの。音はド・ミ・ソ・ラの4つだけなのだが、ジェゴグが一斉に音を出すと、意表を突く重低音と暖かい包容力のある響きが出現する。第4節「田園歌」のエンディングの生態系のカタストロフィーを象徴するシンセによる爆裂音(9'30"）は凄まじい。続く「エピローグ」で感動的なエンディングを迎える。このCDを聞いたら、現地に行って、このCDの素材になった音楽を生で聞きたくなった。こんなことを思ったのは初めてだ。芸能山城組：輪廻交響楽　Ecophony Rinne（JVC　VICL 23091）山城祥二（作詞・作曲):輪廻交響楽1.第1章翠生2.第2章散華3.第3章瞑憩4.第4章転生芸能山城組録音1986年ビクター青山スタジオ

2022年02月27日

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やってしまった！！

先日、NASのLEDが赤く点滅しているので、調べてみたら「デグレードモード」になっているというメッセージであることを知った。「デグレードモード」とは「劣化した（機能上の）形態」という意味。ファイルを多重化しているRAIDに搭載されている複数のハーディスクのうちの１台または１グループが故障しているかどうか、認識できない障害が起きている状態だ。故障したNASにはドライブが２つあり、ドライブ２が故障していた。こうなったらHDDを交換するしかないのだが、当該HDDは既に新しいモデルに切り替わっていたが、容量が同じであれば、RAIDでも特に問題なく使えるらしいので、新しいモデルに交換した。HDDをフォーマットしたまではよかったのだが、一旦RAIDを解除し、新たにRAIアレイを組みなおす必要があった。早速、組みなおしたのだが、容量が３TBもあるので、時間が数十時間かかってしまった。やっと終わってチェックしたらデーターがない。「やってしまった！！」と思ったのも後の祭り。交換したほうをバックアップに使わなければならないのだが、生きているほうのHDD をバックアップにしてしまったのだ。デフォルトだと、ドライブ２をバックアップにする設定になっているのだが、それをわざわざ代えてしまったのだ。被害馴は甚大だが、元に戻さなければいいだけの話で、ショックは意外に少なかった。最近NASの容量が逼迫して頭を悩ませていたので、かえってすっきりした気分になった。最近はダウンロードしたファイルのコピーが殆どなので、NASがダメになってもそれほど大きな損失がなかったのが不幸中の幸いだったのだ。ダメになったNASには新しく購入したファイルやCDのデータを入れることにした。いい機会なので、他のNASの聞かなくなったファイルを整理をしていくつもりだ。

2022年02月25日

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Tony Overwater & Azko Kohashi:Crescent

オランダ在住の小橋敦子というピアニストが、ベースのトニー・オーヴァーウォーターと組んだデュオアルバムを聴く。このピアニストは、このアルバムを聞くまで全く知らなかった。素晴らしくいいので、spotifyでリーダーアルバムを何枚か聞いた。彼女は、テクニックをひけらかすようなピアニストではない。むしろ寡黙といたほうがいいくらいで、そこからえも言われぬ詩的な情緒が漂ってくる。他の日本人ピアニストなら、川上さとみに似た雰囲気があるが、あれほど甘くはない。このアルバムは昨年の7月に国内先行発売されているが、ヨーロッパでも最近発売になり、それで知ったのだ。ジャケットデザインも異なるが、管理人的には国内盤のほうがいいような気がする。（ここで使っているのは海外バージョン）曲は、コルトレーンやヘイデンの曲を中心に、スタンダードとオーバーウォーターのオリジナルが並ぶ。ベースのトニー・オーヴァーウォーターとは過去にも録音がある。このベーシストも、曲によるためか、静的なベースだ。ただ、低音があまり豊かではなく、弦がネックにあたる音や弦のビビリが時折聞こえるのも気になる。このアルバムは、デュオとはいえベースが主役だ。なのでイントロがベースから始まる曲が殆どだが、これがあまり魅力的ではない。ピアノのイントロから始まるのは「Wise One」とオーヴァーウォーターのオリジナル「De Boot 」で、静謐なピアノが実に美しい。特に「De Boot 」は水面に水滴が落ちるような風景が見えるようだ。どうせなら、全部ピアノから始めたほうが良かったのに、と思ってしまう。「Nightfall 」でもベースのソロの後にピアノが入ってくるところは、ぞくぞくする。「クレッセント」はメロディーがピアノでぽつぽつと弾かれることで、かえってこの曲の静謐な美しさが際立っている。「Mr. Syms」は「Coltrane Plays The Blues」(Atlantic)に収録されている曲。オリジナルは楽し気な雰囲気があるが、ここではダークなムードで、全く違う雰囲気の演奏。スインギーなピアノが楽しめる。ヘイデンの「Our Spanish Love Song 」はパット・メセニーとのデュオ「ミズーリの空高く」収録曲。流麗で哀愁漂うピアノが心に染み入る。Tony Overwater & Azko Kohashi:Crescent(Jazz in Motion JIM74725)16bit 44.1kHz Flac1. Wise One (John Coltrane)2. What’s New (Bob Haggard)3. Lonnie’s Lament (John Coltrane)4. De Boot (Tony Overwater)5. Crescent (John Coltrane)6. Nightfall (Charlie Haden)7. Mr. Syms (John Coltrane)8. Our Spanish Love Song (Charlie Haden)9. As Long As There’s Music (Jule Styne)Tony Overwater(b)Atzko Kohashi(p)Recorded at Beauforthuis, Austeriliz in the Netherlands by Frans de Rond on Februry14,2021

2022年02月23日

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Anders Eliasson:Symphonies Nos 3 & 4,Trombone Concerto

アンデシュ・エリーアソン（Anders Eliasson　1947 – 2013）というスエーデンの作曲家の作品を集めたアルバムがBISから出た。初めて聞いた名前だが、難しい音楽ではなく、北欧らしい冴え冴えとしたサウンドが楽しめる。彼は十二音技法からミュジーク・コンクレートまで、さまざまな技法とモダニズムを研究したものの、「千年以上の伝統と決別すること」はできないと知り、調性音楽に戻ったとのこと。耳にしたきっかけは、トロンボーン協奏曲のソリストが、クリスチャン・リンドべルイだったからだ。トロンボーン協奏曲はリンドべルイのために書かれたもので、「アダージョ-アレグロ・モデラート-レント、カンタービレ」の２２分ほどの単一楽章の作品。悲しみを帯びたアダージョに始まり、3分過ぎ頃からアレグロ・モデラートにテンポ・アップする。短くリズミックな旋律が執拗に繰り返され、次第に緊迫感が出てくるが、爆発まではいかない。この部分が一番長いが音楽としてあまり面白くない。ただ、ソロは休みがなく、大変そうだ。18分過ぎにアレグロ・モデラートのモチーフが消え入るように終わり、レントに進む。バックは弦が主体で管の出番は少ない。リンドべルイのトロンボーンは、いつもながらの滑らかなフレージング、豊麗なサウンドと安定したテクニックが楽しめる。あまりにも安定していて、スリリングな部分もそう感じ取れないところが、欠点？だろう。二つの交響曲は交響曲という名前だが、どちらも管がフィーチャーされている協奏曲的な作品。交響曲第３番はソプラノ・サックスで、第4番はフリューゲルホルンと、どちらもめったにない組み合わせだ。交響曲第4番はミュンヘンのコンサートシリーズ「musica Viva」のためバイエルン放送からと、エーテボリ交響楽団から委嘱作品。タイトルにはフリューゲルのことは謳われていないし、実際の曲でもそれほど目立つわけではない。「アレグロ-アダージョ-コン・モート、ミナッチョーゾ(脅かすように)-アダージョ」の4楽章構成だが、続けて演奏される。この曲もどちらかというと暗い色調の曲。結構激しいモチーフが出てくる。第3番はアルトサックス奏者のジョン=エドワード・ケリー（John-Edward Kelly（1958 - 2015)のためにノルウェーのトロンハイム交響楽団が委嘱。2010年ソプラノサックス版が作られた。Cerca(探究)〉に始まり、〈Solitudine(孤独)〉〈Fremiti(震え)〉〈Lugubre(悲痛)〉「エピローグ」が〈Nebbie(霧)〉の「極端に対照的な5 幕のドラマ」として書かれた作品で、続けて演奏される。暗く切迫した雰囲気が感じられるシリアスな曲。ソプラノ・サックスのプレイが前面に出ているが、管理人的にはバックの切り詰められた激しい動きのほうに注意を引かれる。３楽章までは緊迫した雰囲気が続くが、4楽章の〈Lugubre(悲痛)〉ではテンポがぐっと落ちて、ソロの悲痛な歌が聴かれる。こうしてみると、ソプラノ・サックスの表現の幅はあまり大きいとは感じられない。演奏者の問題ではなく、楽器自体のダイナミックレンジが狭いのが問題なようだ。バックは、外側はひんやりとしているが、時に激しいパッションが感じられることもある。〈Solitudine(孤独)〉でのパーカッションの効果や〈Nebbie(霧)〉冒頭の木管と高弦の涼やかなサウンドなど、エリーアソンのオーケストレーションの冴えが窺える。エリーアソンと親交のあったアンデシュ・パウルソンのソプラノ・サックスは、美しく厚みのあるサウンドがいい。隠れた名曲揃いのアルバムとして、吹奏楽業界の方にこそ聞いて頂きたいアルバム。Anders Eliasson:Symphonies Nos 3 & 4(BIS BISSA2368)24bit96kHz FlacAnders Eliasson:1.Symphony No. 3 for soprano saxophone and orchestra (1989/2010) 6.Concerto per Trombone (2000) 7.Symphony No. 4 (2005) Johannes Gustavsson;Anders Paulsson(ss);Gothenburg Symphony Orchestra(track1-5）Sakari Oramo;Christian Lindberg(tb);Royal Stockholm Philharmonic Orchestra(track6)Sakari Oramo;Joakim Agnas(flh);Royal Stockholm Philharmonic Orchestra（track7-10)

2022年02月21日

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小曽根真：OZONE 60 -STANDARDS-

雑誌「Jazz Japan 」で知ったアルバム。『OZONE 60』の収録後に、同じ「水戸芸術館コンサートホールATM」でスタンダードを弾いたというもの。海外でのハイレゾのリリースが国内と同時だったので、presto musicから購入。期待していなかったのだが、これが予想をはるかに超える出来でびっくり。管理人の常とう句ではないが、「心に染み入る」とはこのような演奏のことを言うんだろう。オーソドックスなアプローチで、スタンダードを、これほど説得力のある演奏をするのは、かなり難しいと思う。ピアノの粒立ちがよく、コンサート・スタイルの実に格調高い堂々たる演奏で、もはや巨匠の域に達しつつある、といったら褒め過ぎだろうか。おそらく、前作を録音した気分が残っていて、それがいいほうに作用したと思われる。普通のモダン・ジャズ・ピアノだけでなく、スイングやストライド・ピアノも楽しめる。バラードが多いが、間が絶妙で、どれもが味わい深く、飽きることがない。印象派風のマンシーニの「Sometimes」から始まり、「Smile」「I Loves You, Porgy」などメロディーを大切にしていて、元歌のすばらしさに気づかされる。「All The Things You Are」は3拍子のアップ・テンポのアドリブ・ソロで始まる。豪快なスイング感が味わえるが、あくまでも格調高い。アイドルであったオスカー・ピーターソン風のところもあり、微笑ましい。「ブルー・モンク」はスイング・スタイルで、アドリブが実に粋で、ユーモアがそこはかとなく漂ってくる。「My Foolish Heart」は曲調とは全く雰囲気の違った、まったりとしたアドリブが素晴らしい。ガーシュインの「Embraceable You」は甘さを抑えた、とつとした語り口がユニーク。ハリー・ウォーレンの「Lulu’s Back In Town」は、速いテンポの、ユーモアたっぷりのおどけた表情が楽しい。ストレイホーンの「The Star Crossed Lovers」は、悠然としたテンポの中で繰り広げられる重厚なソロが圧巻だ。ジョビンの「ソー・ダンス・サンバ」これも少し速めで、おどけた表情とノリノリの演奏が楽しい。最後の「Body And Soul」のイントロはチック・コリアを感じさせる清々しいもの。ここでも曲の美しさが存分に表現されていて、陶然としてしまう。いくつかのナンバーで引用があり、それを探すのも一つの楽しみの一つだろう。録音はノイズ感がなく、厚みのあるサウンドが大層魅力的だ。ということで、スタンダードを弾いた日本人のジャズ・ピアノ・ソロでは最高の出来といっても大げさではない気がする。是非聞いて頂きたい。小曽根真：OZONE 60 -STANDARDS-(DECCA 4531464)24bit96kHz Flac1.Henry Mancini:Sometimes2.Charlie chaplin :Smile3.Jerome Kern:All The Things You Are4.Burt Bacharach:Alfie5.George Gershwin:I Loves You, Porgy6.Thelonious Monk:Blue Monk7.Victor Young:My Foolish Heart8.George Gershwin:Embraceable You9.Harry Warren:Lulu’s Back In Town10.Billy Strayhorn:The Star Crossed Lovers11.AntonioCarlos Jobim:Só Danço Samba12.Johnny Green:Body And SoulMakoto Ozone(p)

2022年02月19日

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Andris Nelsons 　Bruckner: Symphonies Nos. 1 & 5 / Wagner: Tristan und Isolde: Prelude & Liebestod

アンドリス・ネルソンス指揮ゲバントハウス管弦楽団のブルックナー・ツィクルスの最終回は1番と5番にワーグナーのトリスタン前奏曲と愛の死というプログラム。トリスタンの「前奏曲」はテンポを遅めにとった、スケールの大きな演奏。金管は抑えめで、弱音が美しい。「愛の死」は中庸のテンポで、中間部の盛り上がりも抑制されている。エンディングは情感がこもっているものの、粘らず、すっきりとした仕上がり。交響曲第5番は弱音を重視した独自のアプローチで、他の演奏とは一味違う演奏になっている。この曲では金管を豪壮に鳴らした（結果的に他の楽器が聞こえない）演奏が多いが、今回の演奏では、金管がむき出しで出てくることがなく、デリケートな扱いで、溶け合ったハーモニーと静かな部分が実に美しい。1楽章と4楽章では序奏は遅めだが、allegroは速めのテンポで、特に第1楽章の軽快さが印象的だ。ただし、遅い部分テンポを十分に落としていて、メリハリが効いている。逆に第2楽章は遅いテンポだが、粘らず、端正な表現と静けさが印象的だ。第4楽章の金管のコラールが出た後のテンポを落として弦を弾かせている部分（7’40")など、通常の演奏には見られない清澄な表現が聴かれる。エンディングも十分にコントロールが効いていて、テュッティでも弦の動きがはっきりとわかる。またブルー系のサウンドで聴後感は爽やか。気になるのは、ティンパニが荒々しいことぐらいか。荒々しくなるのは、最後のロールだけにしてもらいたいところだ。第1番はウイーン版で管理人は初めて聞いた。ポピュラーなのはリンツ版で、ウイーン版は交響曲第8番を書いた後で、改定されたものだという。wikiでは後期の流麗な音楽と初期の固い音楽が交じり合っているという内容のことが書いてあった。聞いたところ、改定部分に、かなり違和感があり、リンツ版の凝集力が削がれて、余計なものが、ぶら下がったような感じだ。例えていえば、交響曲第8番のノヴァーク版とハース版との違いみたいなものだ。あれよりも、もっとひどい。あっちにフラフラ、こっちにフラフラして緊張感が削がれてしまうのだ。ウイーン版の録音が殆どないのも頷ける。ネルソンスが敢えてこの版を選んだ理由がブックレットに書かれてある。（以下引用）「作曲者が、後年の知恵をもって、交響曲の旅立ちを検証した版は、非常に稀である。ブルックナーが後年の作品から得た経験を、最初の交響曲にどのように生かしたかは、魅力的であり、感動的でさえある。ブルックナーの自己批判的な視線の力に明らかに耐えたこの独創的な作品が、あまり演奏されないことに驚かされる。」（引用終わり）ウイーン版の意義を熱っぽく語っているが、管理人にはさっぱり響いてこない。スコアによるものかネルソンスの解釈かは不明だが、全体にもっさりとして推進力が感じられない。因みにウイーン版の演奏がspotifyで聞くことが出来たのでタイミングを比較してみた。ゲルト・シャラーとアバド（ルツェルン）の演奏で、タイミングは次の通り。　　　　　 Nelsons Schailler abbado Jarvi（リンツ版）第1楽章　 14'04" 14'04" 12'04" 14'38"第2楽章　 14'17" 11'51" 12'44" 11'54"第3楽章　 8'56" 8'55" 8'39" 8'09"第4楽章　 17'47" 15'39" 16'40" 10'24"第2、第3楽章はネルソンスのほうがどちらの楽章も2分ほど長い。ブルックナーの交響曲では版の違いによって大きく異なったり、楽器が違ったりすることがある。この曲のウイーン版でも違いがはっきり分かるところが結構ある。良し悪しは別として、ブルックナーの異稿の違いを楽しめるのは有難いが、通常の驚きと逆で、新しいほうが唐突感がある。第1楽章からして、だいぶ趣が異なる。後半の改定部分が、なかなか面白いが。ただ、エンディングは第8の4楽章のコサック兵の行進のリズムが出て来て、興ざめする。第2楽章は他の演奏よりも2分から2分半遅いが、この楽章の繊細な美しさが味わえる、適切なテンポ設定。10'00"付近で盛り上がる部分以降が改定した部分のようだが、この部分は唐突感がある。第3楽章の主題の一部をホルンに荒々しく吹かせているところは、びっくりする。トリオを除いて、この楽章全体がリンツ版との違いが大きいように感じられる。ウイーン版のほうが面白いことは意外だ。第4楽章中間部で失速しそうになる部分は必然性が感じられず興ざめだ。最後、音は大きくなるが、盛り上がらないで終わってしまうのも不可解。サウンドは第5番と同じような弱音を重視したもので、爽やかなのは変わらない。なので、この録音の存在意義はあると思うが、出来ればリンツ版で録音してほしかった。参考までにパーヴォ・ヤルヴィのリンツ版のタイミングも併せてチェックした。ヤルヴィのブルックナーはもともとテンポが速いが、第4楽章などウイーン版に比べると5分から7分も速い。この楽章に関しては、版が違うとはいえ、もはや別物のように思える。この楽章で最も遅いネルソンスの、のろさが際立つ結果になってしまった。とはいえ、なかなか興味深い版なので、今後も繰り返し聞きたい。ブックレットは作曲当時の人間模様がなまなましく描かれていて、大変面白い。録音はいまいち抜けがよくない。Bruckner: Symphonies Nos. 1 & 5 / Wagner: Tristan und Isolde: Prelude & Liebestod(DGG )24bit96kHz Flac1.Wagner: Tristan und Isolde: Prelude2.Wagner: Tristan und Isolde: & Liebestod3.Bruckner: Symphony No. 1 in C Minor, WAB 101 (Vienna Version - 1890/91)7.Bruckner: Symphony No. 5 in B flat majorAndris Nelsons Gewandhausorchester,LeipzigRecorded live at the Gewandhaus zu Leipzig, 5/2021 (track1,2); 11/2020 (track3–6) & 5/2019 (track7-10)

2022年02月17日

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渡辺貞夫：ジャズ＆ボッサ～ライヴ・アット・サントリーホール

ちょい聴きしたときはそれほどとも思わなくて、買う気もなかったのだが、続けて聞いていたら悪くないと思いなおしてダウンロードした音源。最近の渡辺貞夫(1933-)のアルバムの中では出来がいい部類のアルバム。アルトの音はよく出ていて、さすがに気力の衰えは感じるが、アドリブ・ソロもスムーズで、88歳という年齢を考えれば、稀有なパフォーマンスだろう。編成はギターを加えたクインテット。ストリングスが加わっているが、あまりうまくフィットしていない気がした。ジャズと言えるのは5曲目のオリジナルの「エコー」まで。あとは、ボサノバとアンコール？。ジャズはバラードでも速いテンポの軽めの処理。お気楽ムードが漂っていて、おまけにストリングスが入っているので、ジャズ度はあまり高くない。個人的には最初の2曲は遅いテンポで、じっくりと演奏してほしかった。このジャズの部で最も出来のいいのは、オリジナルの「エコー」だろうか。ボサノバの部はガラッと趣を変えていて、悪くない。リリカルなストリングスの序奏から始まる「カーニヴァルの朝」はゆったりとしたテンポで情感豊かに歌い上げているが、ソロはいまいち。ギターが入っているのがボサノバらしい味わいを出している。バーデン・パウエルの「プレリュードのサンバ」も「カーニヴァルの朝」と同じような構成。人生の黄昏を思い起こさせような物悲しいメロディーが、現在の渡辺の心境にぴったり？で、しみじみとした味わいが感じられる。この後はオリジナルが5曲続く。メロディックで、とても日本人が作った曲とは思えない、名曲揃いだ。ただ、同じような曲調が続くので、変化に乏しいと感じる。曲順を代えて変化をつけたほうが良かったように思う。「バタフライ」はテンポの速く、サンバのリズムが心地よいが、バックのストリングスがいまいち鈍く、足を引っ張っている。「トーク・トゥ・ザ・ムーン」冒頭のリリカルなギター・ソロに続くアルト・ソロが心に染みわたる。オリジナルの最後の「マンハッタン・パウリスタ」はテンポの速いリズミックな曲で、後半のドラム・ソロと共に華やいだ活力に満ちた演奏が聴ける。この曲の後の2曲は切れ目なく続いているので、アンコールだろうか。ピシンギーニャの「カリニョーゾ」(1916)はブラジルの第二の国家と言われる歌。てっきり渡辺のオリジナルと思っていたが、それだけ彼の体に染みついている音楽なのだろう。バックでは竹村一哲の切れのいいドラミングとマルセロ木村の情感豊かなギターが光っていた。録音はコンサート・ホールでのライブなので、ガツンと来る音ではない。ストリングスの入ったゴージャスな雰囲気を味わうには悪くないだろう。渡辺貞夫：ジャズ＆ボッサ～ライヴ・アット・サントリーホール（Victor Entertainment　VICJ-61790）24bit 96kHz Flac1.David Raksin:ローラ2.Wayne King:ビューティフル・ラヴ3.David Mann:イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ・オブ・ザ・モーニング4.Oliver Nelson:ストールン・モーメンツ5.渡辺貞夫:エコー6.Luiz Bonfa:カーニヴァルの朝7.Baden Powell:プレリュードのサンバ8.渡辺貞夫:バタフライ9.渡辺貞夫:トーク・トゥ・ザ・ムーン10.渡辺貞夫:アイ・ラヴ・トゥ・セイ・ユア・ネーム11.渡辺貞夫:ウォーター・カラーズ12.渡辺貞夫:マンハッタン・パウリスタ13.Yoko Kanno:花は咲く14.Pixinguinha:カリニョーゾ渡辺貞夫 (as)林正樹(p)コモブチキイチロウ(b)竹村一哲(ds)マルセロ木村（ｇ）押鐘貴之ストリングス録音　2021年6月23、24 サントリーホールでのライヴ録音

2022年02月15日

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ECMとオーディオ

この前ジャズ個人のページというサイトを見ていたら、今日のお題の特集がstereo誌に載っていることを知り、速攻で買った。ECMは音がいいというのが世間の評価で、それもひんやりとした静けさに特徴がある。ジャズでも、クラシックでもその存在感は大きくて、現在ではマイナー・レーベルでは世界有数の規模だろう。50ページにわたる大特集で、執筆者も多岐に渡り、大変面白い特集だった。強く印象に残ったのは、「ECMとはアイヒャーの世界」という矢澤孝樹氏の文章につけらた見出し。アイヒャーとはECMの主宰者のマンフレート・アイヒャー（1943-)のこと。彼はもともとベルリン・フィルのコントラバス奏者で、ジャズもやっていたという。プロデューサーとレーベルの関係で有名なのはジョン・カルショーとデッカ、アルフレート・ライオンとブルーノートなどがあげられる。アイヒャーの場合はアーティストの選定から、録音、パッケージのデザインと隅々にわたって彼の息がかかているという。録音現場でリバーブをつけて、あとでエンジニアに直されるということもあるらしい。音楽を隅々まで理解し、録音現場では最終的な形までしっかりとイメージされているという話を聞くと、とてつもない人だなと感じる。ECMに関係する日本人も多数登場している。有名な例だとキース・ジャレットが76年に日本で行ったソロ・コンサートを菅野沖彦氏が録音した『サンベア・コンサート』にまつわる稲岡邦彌氏のエピソード。トリオ・レコードが経費を負担し、印税で償却するという条件で決まったことで、トリオレコードはその中から1，2枚をリリースするつもりが、アイヒャーからLP10枚組で出すということを聞きびっくりしたというお話。最近ECMアルバムをリリースしているピアニストの田中鮎美やドラマーの福盛進也へのインタビューも含まれている。音楽に介入する度合いが強く、すべてをコントロールしたい人だというのがアイヒャーに対する彼らに共通する見方だ。ミュージシャンにすれば不満に思うこともあるだろうが、アルバムの仕上がりを見ると、文句も言えなくなるのだろう。実際に日本人初のレコーディングエンジニアとしてキース・ジャレットのサントリーホールでのライブ録音に参加した及川公生氏の生々しい現場リポート？も大変興味深い。及川氏がセッティングしたマイク・アレンジでは出なかったECMサウンドが、アイヒャーが手を加えたことにより出てくる件など、映画を観ているようだ。まあ、一種の名人芸の域に達しているのだろう。いろいろな人の話を聞くと、頑固なドイツ人の典型のような人で、昔気質のマイスターみたいな感じがする。反面いろいろな音楽に興味を持ち、新しい領域を切り開いてきた側面もある。彼のおかげで広く知られるようになった作曲家やミュージシャンも少なくないと思う。管理人もその恩恵を受けている一人だ。稲岡邦彌氏による「ECMを象徴する4枚」という文がある。ジャズではキース・ジャレットの「ケルンコンサート」とチック＆バートンの「クリスタル・サイレンス」、クラシックではクレーメルが演奏した「タブラ・ラサ」を含むペルト曲集と、ヤン・ガルバレクとヒリヤードアンサンブルが組んだ「オフィチウム」が挙げられている。その他いろいろな人の私的名盤が紹介されていて、興味を引く録音も多数あり、今後配信でチェックしていきたい。ということで、stereoならではの企画で、続編も期待したい。ジャズならブルーノート、クラシックならデッカなど、どうだろう。この記事を見た後で「ECMの真実」を読みたいと思ってamazonで検索したら、何と2001年に購入している。例によってどこにあるか、まず探さなければならない。「増補改訂版」なるものも出ているが、どちらも絶版で中古もバカ高い。

2022年02月13日

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諏訪内晶子無伴奏ヴァイオリン・リサイタル

岩手県民会館コンサートサロンで諏訪内晶子が来ることを知り、観に行った。先月CDがリリースされたこともあり、バッハの無伴奏ソナタとパルティータの中からの選曲。諏訪内を生で聞いたのは随分昔のことで、どういう演奏だったかは忘れてしまった。1972年1月生まれで、今月50歳になったばかり。若いころと変わらない美しさを保っているようだ。CDのジャケ写はショートカットで、少し細身に見えたが、今回は見慣れた長い髪の彼女だった。席が三列目だったこともあり、直接音が多く残響が少ない。休憩時間にステージを見ていたら、ステージ後方の反響板がないことに気が付いた。ステージの前の方で演奏しているとはいえ、残響が少ないのも当然のような気がした。おそらく、後ろの方の席であればだいぶ違っていたと思う。それが関係しているかどうかは分からないが、最初音が出たときに、ヴァイオリンが木でできていることを思い出した。安全を期してのことだと思うが、シャコンヌ以外は楽譜を見ながらの演奏。音は美しいが厚みが不足していている。古楽の影響がある弾き方ではないが、ビブラートは控えめ。目立つほどではないが、レガートが耳につく。他のヴァイオリニストの演奏だと、演奏家のパッションが伝わってくることが多いが、それがあまり伝わってこない。ホールのせいか、彼女の内面のせいかは分からない。3曲とも速い楽章は精彩がある。遅い楽章は、聴き手に訴えかける力が不足しているように思う。パルティータ第2番の「アルマンド」は、少しお気楽な感じで始まったので、おやおやと思ったが、「クーラント」以降は平常運転。ソナタと比べると、弾きこんでいる感じがした。最後の「シャコンヌ」は巨大な音楽という感じはあまりしない。中間部の盛り上がりもそれほどではなかった。この曲の場合、ぎくしゃくした表現にお目にかかることがあるが、流れがスムーズで、彼女のテクニックの高さが感じられた。ところで、このブログを書くときに配信で彼女の演奏を聞いた生で聞いたときとだいぶ趣が違う。程よい残響で、演奏の恰幅や熱気、凄味も感じられ、少し残念な気持ちになった。パルティータを弾き終わった後で、左手を何度か振っていた。涼しい顔をしていたが、やはり心身ともに相当疲れる曲なのだろうと想像できた。　ところで、日曜日に岩手県民オーケストラの2年ぶりの演奏会があるので、前売りを買おうと思って事務室に行ったら、何とコロナのため中止になったという。去年もコロナのため、早くから中止を決めたようだが、今回も直前になって中止になって、会員の気持ちもいくばくか、想像するだけで気の毒に思ってしまった。フェイスブックには観客の感染防止のためと書かれている。指揮者や会員が感染したためと思っていたが、観客の感染防止のためとは驚いた。他の演奏会は普通に行われているし、ただの風邪レベルなので、過剰反応のような気がするが。。。諏訪内晶子無伴奏ヴァイオリン・リサイタルJ.S.バッハ：無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ＆パルティータよりソナタ第２番イ短調 BWV1003ソナタ第３番ハ長調 BWV1005パルティータ第２番ニ短調 BWV1004（シャコンヌ付き）諏訪内晶子(vn)2022年2月9日岩手県民会館中ホール3列6番にて鑑賞

2022年02月11日

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東京佼成ウインド・オーケストラ：吹奏楽燦選ライヴ～保科洋:交響曲第3番

東京佼成ウインドの定期演奏会のライブをまとめたシリーズの最新作。『2015年以降に発表された邦人作品による、日本の吹奏楽の現在を実感いただけるアルバム』とのこと。このアルバムの目玉はアルバムタイトルの保科洋(1936-)の「交響曲第3番」この楽団の創団60周年記念委嘱作品で、2020年に作曲された。なんと、作曲者84歳の作品。吹奏楽界で、音を聞いてすぐわかる作曲家はそれほど多いとは思えないが、保科はその一人で、そのサウンドは健在だった。この曲は3楽章構成で30分ほどの曲。2020年の11月に行われたツアーのプログラムに、作曲者自身の解説が載っている。そこで、氏は交響曲を書くことの大変さを『委嘱された時点から奮い立つような緊張感とともに、歴代の大作曲家たちが残した数々の名交響曲が頭の中を駆け巡り、言い知れぬプレッシャーがのしかかってくる』と書いている。ベートーヴェンの死後、200年にもなろうとしているのに、いまだにその影響が残っていることに驚く。また、『音楽を聴き手に印象付けるために、モチーフを巧妙に変形させながら繰り返す』ことが大事だという。今度の交響曲でもモチーフはそれほど魅力的ではないが、熟達した作曲技法による展開は見事で、みずみずしい抒情が感じられる。第一楽章は「Lent Misterioso」の低音域の陰鬱な旋律から始まる。「Allegro Assai」の主部に入ると、暗いながらもポップな旋律が支配する。エンディングの劇的な盛り上がりもなかなかのもの。第2楽章「Lento flebile」 flebileは物悲しい、哀愁を帯びたの意。作曲者によると、『〜人生も終わりに近づいた老人（保科）が、夕日が眩しい庭のテラスでコーヒーを飲みながら、過ぎ去った青春の日々に想いを馳せている〜という様な情景を描い』とのこと。淡い暖色系の楽想かと思いきや、抒情的ではあるが暗い影のある雰囲気で、時折盛り上がることがある。この部分は青春の日々の思い出の部分だろうか。この楽章では、いろいろな楽器のソロが出て来てくる。その中では、トロンボーンの艶のあるソロが実に美しい。第3楽章「Presto Energico」テンポが速く、サスペンス調の緊迫感が感じられる楽章。『人生（不条理・不可思議なもの）へのささやかな抵抗をひそかに盛り込んだ』とのこと。テンポが落ちた中間部では素朴な旋律が流れ、一休み。再び前半の緊迫感が戻ってくる。後半の目くるめくような展開と盛り上がりが素晴らしい。　高昌帥の「吹奏楽のための協奏曲」を昭和ウインドシンフォニーの演奏で聞いたときの稿を読み返すと、結構好意的に書いてある。今回の演奏で聴いてみたら、それほどいい曲ではない気がした。スケルツォの楽想が陳腐で、全体の印象を悪くしているのが原因。これが第5楽章でも使われていて、げんなりする。ただ、第五楽章は複雑に変容していくので、悪い印象は次第に薄れていく。後半の持続力のある圧倒的な盛り上がりは、現在の東京佼成の技量を見せつけている。ソロも昭和ウインドのような不満は感じられなかった。第4楽章の「Affettuoso」もハーモニーがやせていなくて、抒情的な旋律が一層魅力的に響く。昭和ウインドの時に腐したピッコロ・ソロの途中のテュッティの「ジャン」も安っぽく聞こえない。　芳賀傑（1989～）の「水面に映るグラデーションの空」は、フランスのリールで開催された、第6回（2018年）クー・ド・ヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールで第1位と聴衆賞を受賞した12分ほどの作品。定期演奏会の解説によると『2011年の東日本大震災や、作曲者がパリ留学中の2015年に発生したパリ同時多発テロ事件などがきっかけとなって生まれた。曲は前半と後半に大きく分かれる。前半は、「1つの雫が水面に落ちる所から始まる。／雫は、波紋を描きながらますます落ちてくる。／水面に落ちる雫、それは涙」。パウゼの後からは、美しくメロディアスに展開し、「水面に落ちた涙が、境目のない空と水面のようにいつか、世界をひとつのグラデーションで繋げる事を信じてこの曲を書いた」とのこと。ゆったりと流れるテンポの中で、清冽な響きが聴かれる。後半は美しい旋律が高らかに歌われ、感動的な盛り上がりを迎え、転調の後R・シュトラウスの「夕映えの中で」を思わせるフルートやクラリネットのトリルで静かに終わる。繰り返し味わいたい名品。　酒井健治の「デチューン」はyoutubeで同じ演奏を見ることが出来る。この曲では細かいミスが僅かに聞こえるが、映像を見るとまだ昔のプレーヤーが散見される。ゆっくりとした序奏部の、夕焼雲でも連想しそうな木管のハーモニーが心地よい。6分過ぎにチューバから出てくるモチーフは、R・シュトラウスの「英雄の生涯」の「英雄の業績」で出てくるモチーフとそっくりだ。エンディングで脈絡もなく突っ走るところは、ちょっと不自然に感じる。ホルンの音が、いまいち鳴りきっていないのが不満。このシリーズ、ライブとは思えない厚みのあるサウンドが魅力だが、今回もそれは裏切られない。東京佼成ウインド・オーケストラ：吹奏楽燦選ライヴ～保科洋:交響曲第3番 (Columbia COCQ-85574)24bit 96kHz Flac1.酒井健治:デチューン*2-6.高昌帥:吹奏楽のための協奏曲7.芳賀傑:水面に映るグラデーションの空8-10.保科洋:吹奏楽のための交響曲第3番 *** 東京佼成ウインドオーケストラと名古屋フィルハーモニー交響楽団による共同委嘱作品** 東京佼成ウインドオーケストラ創立60周年記念委嘱作品、世界初演東京佼成ウインドオーケストラ大井剛史(指揮) 第145回定期演奏会2019年10月5日(track1-6)、2020年11月7日東京芸術劇場におけるライヴ録音

2022年02月09日

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Jihey Lee Orchestra:Daling Mind

少し前にJazz The New Chapterシリーズで有名なジャズ評論家の柳樂光隆氏が、大西順子に「今ニューヨークで面白いビッグバンドは」という質問をしたところ、ジヘイ・リーとアンナ・ウェバーだという答えが返ってきたという記事を読んだ。興味をひかれたので、彼女たちの録音を聞いてみた。ウェバーはあまり面白くなかったが、リーのアルバムが結構面白い。何回か聴いた後で、bandcampから$10でダウンロード。ロスレスかと思ったら、ハイレゾで得をした気分になった。彼女の音楽はジャズと伝統的な韓国の音楽の融合らしい。他では聞かれないようなテイストを感じさせる音楽が聴かれる。全体的にはビターで乾いた感じの音楽が大半で、甘い感じの音楽は皆無。編成は標準的で、ヴォイシングは見事だが、それが聴き手にダイレクトに伝わってこない。全体に暗い音楽ばかりで遊びがないので、聴き手が息苦しくなることもある。「Relentless Mind」は、管理人の生理が受け付けないのか、変拍子の細かいリズムが苛立たしく感じられる。「Unshakable Mind」は絶え間ないオスティナートに乘って、静かなメロディーが流れる3拍子の曲。しばらくするとベースとエレクトリック・ギターが絡み合うソロが出てくる。ビッグ・バンドでは珍しい組み合わせだ。濃厚なアルト・ソロが続くが、リードミスが何回かあるのが気になる。次第に盛り上がり持続する力は、女性の作曲家特有のもの。「Suji」は遅いテンポの風変わりなムードの曲。ピアノとベース、それにエレクトリック・ギターが印象的なリズムを刻み、そこにホーンのユニゾンが加わる。メロディーも一風変わっている。3分過ぎにリリカルなピアノ・ソロが始まると、今までのリズムは止み、空気は一変する。この場面の作曲は素晴らしい。その後のクラリネット・ソロとホーンの柔らかなハーモニーも美しい。エンディングはイントロの組み合わせで締めくくられる。「I Dare You」はピアノとバス・トロンボーンが変拍子の不気味なリズムを刻み、ホーンがこれまた変拍子のぎくしゃくしたメロディーを吹く。ハーモニックスから始まるアルト・サックスのけだるいソロ。その後はアンサンブルに終始する。全体に不気味な音楽で、サスペンス映画にぴったり。「Revived Mind」は、本来根暗な漢が、陽気を装っていると思わせるようなシニカルな音楽。アルバム中、最もつまらなかった。ハンドクラップとズシーンと響くサウンドが印象的だったが、あれはどういう楽器の組み合わせだったんだろうか。「Struggle Gives You Strength」は従来のビッグ・バンドのイメージに近いが、辛口のバラードで、全編トランペット・ソロがフィーチャーされている。「苦労が力になる」というタイトルが、いかにも、かの国の人らしい。リズム・セクションから始まる「Why Is That」はカウント・ベーシー風のしゃれたテイストで始まるが、すぐクロマチックなメロディーがトランペットに出て来て、雰囲気が一変する。アルトとトランペットのソロが続く。「Dissatisfied Mind」も変拍子でぎくしゃくした、へんてこなメロディー。テュッティで断片的に音が聞こえるが、何回もやられると、飽きてくる。ドラム.ソロのバックで聞こえるサックスの持続する不協和音がなかなか効果的だ。トランペット・ソロから始まる「GB」も全体に重苦しい。所々美しい部分もあるが、重苦しさから解放されるところまでいかない。ということで、聴いたことのないユニークな音楽だが、ぱっと聞いて理解できる音楽ではない。また、音楽の訴求力が不足していて、感動するまでに至らない。管理人も何回か聴いているが、いまいちしっくり来ていない。このアルバムの前にも2枚ほどCDがリリースされているので、そちらも聞きこんでみたい。録音は全帯域にわたってバランスが良く、低音も締まっている。youtubeJihey Lee Orchestra:Daling Mind(Motema ‎ 0181212003857)24bit 96kHz FlacJihey Lee:1.Relentless Mind2.Unshakable Mind3.Suji4.I Dare You5.Revived Mind6.Struggle Gives You Strength7.Why Is That8.Dissatisfied Mind9.GBBen Kono(as)Rob Wilkerson(as)Quinsin Nachoff(ts)Jeremy Powell(ts)Brian Pareschi(tp)Sean Jones(tp)John Lake(tp)Alex Norris(tp)Mike Fahie(tb)Alan Ferber(tb)Nick Grinder(tb All tracks except 2, 5)Mark Patterson(tb tracks 2, 5)Jennifer Wharton(tb)Adam Birnbaum(p tracks 1, 3, 4, 6, 7, 9)Haeun Joo(p tracks 2, 5, 8)Sebastian Noelle(e-g)Evan Gregor(b)Mark Ferber(ds)Recorded on January 15 and 16 2020

2022年02月07日

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Double Beats:Two Marimbas In Berlin

eclassicalのメールで知った、中国人女性とドイツ人男性のマリンバのデュオ「Double Beats」のアルバム。これが、とてもいい仕上がりで、とても満足している。プログラムはすべてアレンジで、世界初録音と謳われている。まあ、彼らの編曲なのでそれも当然と言えば当然で、世界初録音と謳うこと自体、少し恥ずかしい気がするが、謳うだけのあるアレンジだと思う。プログラムは、ショパンのエチュードの抜粋と、バッハのゴルトベルク変奏曲の抜粋が柱になっている。バッハはいろいろな楽器で演奏されることが多いが、ショパンのアレンジ、それもマリンバ用はあまり例がないのではないか。これが、なかなかいい感じだ。ショパンのふんわりとした感じがよく出ていて、マリンバの柔らかなマレットで叩かれるショパンが夢心地で悪くない。固いマレットならこの世界は出てこなかっただろう。音楽的に無理のない表現も気持ちがいい。ゴルトベルク変奏曲のマリンバ用の編曲は、１人用とかジャン・ジョフロイ&アンサブル・タクトゥスによる1台のヴィブラフォンと 5台のマリンバ用とか数が少ないが録音がある。ヴァイブとマリンバの録音の演奏はだけSpotifyで聴くことができたが、あまり面白くなかった。大体ヴァイブが入っている必然性がよく分からなかった。それに比べると、ダブル・ビーツの演奏は生気に満ちていていて、聴いていてワクワクする。ここではアリアと30の変奏曲のうち15曲を抜粋して、再構築している。編曲が優れていて、大変面白く聴ける。第14変奏のような速いテンポの曲では小気味が良く、難しいパッセージではそのスリリングな進行に思わず声が出てしまったほどだ。ところで、昔、この変奏曲がさっぱり面白くなかったことを思い出す。いろいろな演奏を聞くうちに次第に馴染んできたのだが、今回の演奏を聞いていれば、一回で好きになっていたかもしれない。続いてはピアソラの「タンゴの歴史」から2曲演奏されている。これはテンポが速すぎて楽しめなかった。ただ、「ナイトクラブ1960」は中間部は遅くなるので、「ボルデル1900」よりは大分マシな演奏。ハイドンの「アリエッタと20の変奏イ長調」は右手の旋律に左手の分散和音という作り。アレンジも右手と左手の役割分担がそのまま使われているようだ。原曲と比べるとかなりソフト・タッチで、重心も軽い。優しい旋律に相応しい、シンプルだが心温まる演奏だった。最後は、そこまでの曲とは少し毛色の変わった現代音楽。三木稔の「Marimba Spiritual」オリジナルはマリンバ独奏と3人の打楽器奏者のために書かれた作品で、マリンバの曲でとしては欧米でも有名な作品だそうだ。前半は、静的な「魂鎮め」で、一台のマリンバと金属打楽器で、3分過ぎからは活力を失った魂を再生する「魂振り」は秩父屋台囃子をもとにして作られている。この部分では和太鼓も活躍し、掛け声も入るため、とても日本人ではない人たちが演奏しているとは思えない。ホールトーンの豊かな録音も、彼らのパフォーマンスをより一層引き立てている。特に木を叩いている感じがよく出ている。マリンバの低音のゴーン、ゴーンと響くサウンドは、なかなか聴けないものだろう。三木稔作品での金属打楽器は実に鮮烈なサウンドで、オーディオファンにも喜ばれるだろう。ということで、選曲、編曲、演奏、録音と全て兼ね備えたアルバムとして、是非お聴きいただきたい。Double Beats:Two Marimbas In Berlin(Naxos 8.574056)24bit96kHz FlacFrédéric Chopin: 1.12 Etudes, Op. 10:No. 11 in E-Flat Major, B. 42 "Arpeggio"2.12 Etudes, Op. 25: No. 4 in A Minor, B. 78 "Paganini“3.12 Etudes, Op. 10:No. 2 in A Minor, B. 59 "Chromatique"4.12 Etudes, Op. 25: No. 1 in A Minor, B. 104 "Aeolian Harp"5.Sergei Rachmaninoff: 10 Preludes, Op. 23:No. 5 in G MinorJohann Sebastian Bach: Goldberg Variations, BWV 988 (Excerpts):6.Aria7.Var.18.Var. 79.Var. 510.Var. 10, Fughetta11.Var. 2812.Var. 1713.Var. 21, Canone alla settima14.Var. 1415.Var. 16, Ouverture16.Var. 2017.Var. 2318.Var. 18, Canone alla sexta19.Var. 2620.Var. 29Astor Piazzolla: Histoire du tango (Excerpts):21.I. Bordel 190022.III. Nightclub 196023.Franz Joseph Haydn:Variations in A Major, Hob. XVII:24.Minoru Miki: Marimba Spiritualall arranged by L. Böhm & N. FanDoubleBeats:Ni Fan(marimba, perc.)Lukas Böhm(marimba, perc.)Recorded: 2–5 and 29–31 January 2017 at the Philharmonie Berlin,

2022年02月05日

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いわてジャズ2021

今回は、前回のブログで触れた岩手ジャズの公演について。最初のいわてジャズ2021スペシャルバンドのステージは最後のエリントンの「Take The A Train」のみ鑑賞。メンバーの中に知人が何人かいたが、以前見たときよりも随分と年を取ったなというのが第一印象。全体にお年寄りが多く、若い人が少ない。そのせいか、いまいちパンチ力に欠けていた。目立ったのはMCのKさんの異様なトランペット。朝顔が二つ付いていて、一つはガレスピーのトランペットのように斜めに突き出していてミュートが付いている。後で調べたらダブルベルトランペットという複合楽器のようだ。バルブで音を切り替えるようで、片方にミュートをつけたり、両方に違うミュートをつけて演奏するとのこと。ユーフォニアムやトロンボーンにも同種の楽器があるそうで、トロンボーンやトランペットはそれほど違和感がないが、ユーフォニアムはかなり異様だ。単純にベルを切り替えるのではなく、素早く切り替えることにより面白いパフォーマンスが出来るのかもしれない。ただ、LED照明がギラギラと点滅していて、あまり趣味がよくない。ベルの選択によりLEDの光り方が変化したりするという使い方もありそうだ。次は大西順子カルテットのステージ。昨年末にリリースされた「Grand Voyage」からの曲を演奏した。最初は大儀見のオリジナル「Tridacna Talk」ドラムスとパーカッションのデュオで熱い演奏を繰り広げられ、そのまま大西のオリジナル「High Tide」と「Low Tide」へなだれ込んだ。「Un dia en el cielo azul(青空の或る日)」は大西のオリジナル「Apple of My Eye」に大儀見が日本語で作った歌詞をスペイン語に訳してもらったそうだ。彼女の「Unity All」に収録されていたので聴いてみたが、ギター入りで、スパニッシュムードが漂っていた。大儀見のヴォーカルはCDより渋めで、それが曲にあっていた。後の2曲は曲名が分からなかったが、これらも「Grand Voyage」からの曲だろう。最後の急速調の曲（Ground　Swell?)では、ベース・ソロの後の延々と続くピアノ・ソロで次第に盛り上げていくところなど、問答無用のダイナミズムの持続ぶりが、大西の真骨頂を聴く思いだった。ただ、ピアノの音がバックにマスクされがちで、ソロが十分に楽しめなかったのは残念。パーカッションが加わったことで、いつもの息の詰まるようなストイックな演奏が少し和らいでいて、聴き手としては救われた部分もあった。　No Name Horsesの演奏は先ごろ亡くなられたチック・コリアへのトリビュートプログラム。取り上げられた曲は有名な曲が多く、最近演奏されなくなった「ラ・フィエスタ」が演奏されたのが嬉しかった。「スペイン」はエリック宮城のアレンジで、これがありきたりなアレンジではなく、ダイナミックでトランペット・ソロとエンディングでのエリックのハイ・トーンが炸裂する場面が聴きどころだった。「チルドレン・ソング#6」は仙台在住でバークリー音楽院卒の秩父英里の編曲。自身も指揮で登場した。彼女は東北大からバークリー音楽院を卒業されていて、NHKの仙台放送局の番組で小曽根と知り合い、アレンジを依頼されたとのこと。この曲は暗く、ビッグバンド向きではないと思うが、中川英二郎の柔らかなトロンボーン・ソロもあり、それなりに楽しめた。「クリスタル・サイエンス」は今回のコンサートでは最上の編曲。この曲も静かなので、ビッグバンドとして取り上げるのは難しい部類に入るだろう。クラリネットやバスクラリネット、フルートなどを使って、印象派風の柔らかいサウンドが素晴らしかった。中間部でのピアノの力強いソロも、なかなかの聴き物だった。プログラムの最後は「ラ・フィエスタ」昔ビッグバンドではやっていて、管理人もうディー・ハーマンのバンドの演奏で親しんでいたものだ。小曽根のアレンジは、そのイメージとは全く違った、新鮮なアレンジだった。ピアノ→バリトンサックス→ドラムスとソロが受け渡されたあとにスイング調になり、一旦休止。その後テナーピアノとソロが回され、最後に大団円を迎えるというアレンジで、盛り上がった。メンバーの中のバリトン・サックス奏者の岩持芳宏という方がいて、盛岡出身だったことからか、何度も含蓄のあるソロを聞かせてくれた。通常なら、この後合同演奏があるはずなので、そのまま帰るところだったが、入り口に辿りついたら、なんとアンコールとして小曽根の初期の作品「トイル&モイル」の演奏があり、そのまま最後まで聴いてしまった。県民会館裏の駐車場に行ったら、帰る人がぞろぞろと出てきたので、どうやら合同演奏はなかった様だ。いわてジャズ20211.いわてJAZZスペシャルバンドラスト・ナンバー　エリントン：Take The A Train2.大西順子カルテット大儀見元:Tridacna Talk（シャコガイのお喋り）大西順子：High Tide 大西順子：Low Tide 大西順子（作詞：Takamitsu Ishizuka 大儀見元）：Un Dia de Cielo Azul 曲目不詳曲目不詳大西順子カルテット大西順子(p)井上陽介(b)大儀見元(perc.)吉良創太(ds)3.小曽根真 featuring No Name Horses:Tribute to Chick CoreaChick Corea: 池田編：パズルエリック・宮城編：スペイン秩父英里編：チルドレン・ソング#6 小曽根真編：クリスタル・サイエンス小曽根真編：ラ・フィエスタアンコール小曽根真：トイル&モイル小曽根真 featuring No Name Horses2022年1月30日岩手県民会館大ホール2階左3列4番にて鑑賞

2022年02月03日

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宮川彬良✕ぱんだウインドオーケストラ

去年予定されていたぱんだウインドオーケストラのコンサートがコロナ禍で延期され、ある時にコンサートがあることに気が付いた。あいにく、これも延期されていた岩手ジャズが同じ日にある。岩手ジャズは4時からなので、こちらのコンサートは4時には終わるだろうから、少し遅れても問題ないと高をくくっていた。ところが、数日前に開演が3時ということが分かり、困ってしまった。念のため、岩手ジャズのタイムスケジュールを確認したところ、大西順子は4時45分スタートとのこと。なので、パンダは4時20分頃まで粘って、県民会館の近くに駐車して時間を稼ごうと思った。結果的には、管理人が期待していた宇宙戦艦ヤマトの組曲が前半に組まれていたので、予定より少し早かったが前半で退出した。今回のプログラムは昭和がテーマということで、懐かしい昭和の曲が集められていた。最初はMC兼指揮者の宮川彬良作曲の「シンフォニック・パラダイス」(2010)2分ほどのシンフォニックでありながら楽しい曲。続いては、クレージー・キャッツのメドレー作曲者は萩原哲晶(1925-1984)という方で、wikiによれば『クレージー・キャッツの曲のほとんどを手掛ける。東京音楽学校（現在の東京藝大）器楽科卒業で、同期に吹奏楽界ではお馴染みの岩井直溥がいた。「ハナ肇とキューバン・キャッツ」に参加するも、作曲に専念するために脱退。』どの曲も明るく、ユーモアがあり、ちょっぴり皮肉がきいている。曲が終わった後でMCが、「すーだら節」の歌詞を書いたパネルを持ち出して、楽器の分担について説明していた。最後の「わかっちゃいるけどやめられない」の「わかっちゃいるけど」の部分を楽器を代えて何回も繰り返しているところに彼のこだわりが感じられた。「ひよっこ」協奏曲は宮川の担当したNHKの朝ドラ「ひよっこ」(2017)の音楽を協奏曲にまとめたもの。管理人もこの朝ドラを見ていたが、どんな曲が演奏されていたかは覚えていない。サウンドトラックが2枚も発売されているので、結構人気がある音楽だったのかもしれない。ソロはコンマスの上野耕平(as)で彼のうまさが光る演奏だった。4曲目の前にお寺の鐘が「ゴーン」となりカラスの「かあかあ」という鳴き声、その後のカラスの飛び立つ「バサバサ」という効果音が昭和の夕暮れの情景を感じさせる優れた演出だった。前半最後は宇宙戦艦ヤマトの組曲。作曲者の宮川泰は宇宙戦艦ヤマトの音楽を900曲以上作ったという話をMCが話されていてびっくり。今回は4つの曲のメドレーで最後の「大いなる愛」は劇場版『さらば宇宙戦艦ヤマト』の中の音楽。この映画の音楽と言えば「白色彗星」のおどろおどろしいオルガンの音楽を今でも覚えている。「大いなる愛」は記憶にないが、甘く切ないメロディーがいい。大阪市音の音源がspotifyにあったので、聴いてみた。甘く切ないメロディーがいいが、盛り上がりがいまいちで感動に至らない。どうやら編曲があっさりしすぎているようだ。今回の演奏も同じだが、ユーフォニアムの柔らかい音が目立っていた。組曲全体にいえるのは、パンチ力が不足していること。オーケストラで聴くときのワクワク感がなく、これが吹奏楽の限界なのかもしれない。後半は3人組のヴォーカルグループ「ダイナマイトしゃかりきサ～カス」を加えて、「ゲバゲバ９０分」、「ザ・ピーナツ・メドレー」などが演奏された筈なので、今となっては後半のほうが面白そうで、惜しいことをしたと思ってしまった。未来のためのミュージックギフトwith宮川彬良✕ぱんだウインドオーケストラ前半1.宮川彬良：シンフォニック・パラダイス2.萩原哲晶：クレージー・キャッツ・メドレー無責任一代男からホンダラ行進曲～スーダラ節～はいそれまでﾖ3.宮川彬良：「ひよっこ」協奏曲　～上野耕平バージョン4.宮川泰：組曲「宇宙戦艦ヤマト序曲～宇宙戦艦ヤマト～出撃～大いなる愛ぱんだウインドオーケストラ宮川彬良2022年1月30日盛岡市民文化ホール大ホール　２階C2列23番にて鑑賞

2022年02月01日

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