2018/04/16(月)11:48
Brad Mehldau:After Bach
ブラッド・メルドーの新譜はバッハの作品とバッハを下敷きにしたメルドーのオリジナルを組み合わせたソロ・ピアノ作品。
基本は最初にバッハの作品が演奏され、その後で原曲のでイメージに基づいて作曲されたオリジナルが続くという構成で、最初と最後にメルドーのオリジナルが付く。
驚いたのは、原曲の演奏が細かいニュアンス付けは別にしても、クラシックの一流ピアニストと遜色がないことだ。
逆にメリハリがはっきりしていて、曲の姿が明快になっている。
素人考えでは、ジャズとクラシックでの大きな違いはタッチとペダルにあると思われる。
ところがメルドーの演奏はジャズピアニストがバッハを弾きましたという注釈をつけないで、立派なバッハになっているということだ。
クラシック・ピアニストと同じような繊細なタッチが素晴らしい。
フレーズが流麗で、解釈も自然だ。
もしかしたら凡百のクラシックのピアニストよりもよっぽどバッハらしい。
参考までに、ヒューイットとシフ(DECCA)を聴いてみたが、技術的にも遜色がなく、違和感なく聴ける。
ジャズ・ピアニストがクラシックを弾くという試みは昔から行われている。
チック・コリアなどの有名なミュージシャンが演奏したものでも、その多くはどうしても違和感が拭えないものだった。
それを考えると、メルドーのような、普通にクラシックも弾けるジャズ畑のピアニストが増えていくのはとてもいいことだ。
恐らく教育の発達が多いに貢献しているのだろう。
それに、ジャズ・ピアニストの意識も変わって来ているのだろう。
小曽根真が、かつて(今でも?)クラシックを学び直して、近年はクラシックの曲も弾くようになったことはよく知られている。
バッハには原曲通りで、オリジナルはメルドーらしい不協和音を含む独特のカラーを持った曲ばかりだ。
気に入ったのは「Ostinato」
その名の通り、左手のオスティナートに載って抒情的なメロディーが出てくるところ(5分頃)がとてもいい。
ただ、この人の場合、ソロ・ピアノだと、どうしても暗くなってしまう傾向があり、そこが評価の分かれるところかもしれない。
昔、メルドーを聞き始めた当初は、その部分になかなか馴染めなかったことが、懐かしく思い出される。
ジャズ・ファンは勿論、クラシック・ファンにも是非聴いてほしい。
Brad Mehldau:After Bach(NONSUCH 565982-2)
1. Before Bach: Benediction
2. Prelude No. 3 in C# Major from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 848
3. After Bach: Rondo
4. Prelude No. 1 in C Major from The Well-Tempered Clavier Book II, BWV 870
5. After Bach: Pastorale
6. Prelude No. 10 in E Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 855
7. After Bach: Flux
8. Prelude and Fugue No. 12 in F Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 857
9. After Bach: Dream
10. Fugue No. 16 in G Minor from The Well-Tempered Clavier Book II, BWV 885
11. After Bach: Ostinato
12. Prayer for Healing
Brad Mehldau(p)
Recorded April 18-20,at Mechanics Hall,Worchester,MA