2021/01/31(日)10:12
コパチンスカヤ&カメラータ・ベルン、ガベッタ『照らし出された快楽』~弦楽合奏の20世紀
最近意欲的なリリースが続くヴァイオリニストのコパチンスカヤの新作を聴く。
題して「Plaisirs illuminés」(照らし出された快楽)というもの。
このタイトルはハンガリーの作曲家フランシスコ・コーイ(1985-)の作品の題名だが、元々ダリの「照らし出された快楽 」から取られたものだという。
最近の彼女の活躍は目覚ましく、前作の今までの概念を打ち破るようなヴィヴァルディには驚いたものだ。
新作は前作とは打って変わって現代物を中心としたアルバム。
例によってユニークなプログラムだが、珍しく?まともで、いつもの驚きは特にない。
今回はカメラータベルンとの共演で、それにソル.ガベッタというチェリストが加わっている。
カメラータ・ベルンとは以前「時と悠久」でも共演していた。
ソルガベッタ(1981-)というチェリストはアルゼンチン生まれで、現代のジャクリーヌ・デュプレと言われるほどの才能の持ち主らしい。
聞いたことのない名前だったが、調べているうちに、ソプラノのバルトリとドルチェ・デュエロというアルバムを作っていることを知った。
このアルバム持って入るのだが、1、2回聴いてあとはお蔵入りしてしまっていた。
気に入ったのはヒナステラ1916-1983)の弦楽のための協奏曲。
4 楽章からなり、22分ほどの曲。
バルトーク風なダークなサウンドで、とてもわかりやすい。
民族色は殆ど感じられない。
静的な楽章と激しい楽章が交互に現れるのも効果的だ。
スライド・グリッサンドなど特殊な効果音も入っていて、面白い。
最後に叫び声が入っているが、あれは何だったんだろう。
他の演奏も聞いてみたが、何も起こらない。
おそらく彼らのパフォーマンスだったのだろう。
タイトルチューンのフランシスコ・コーイ(1985-)の「照らし出された快楽 」はヴァイオリンとチェロをフィーチャーした作品で、4楽章からなる20分ほどの曲。
他の曲が弦楽器のみなのに対して管や打楽器が入っていて、色彩が豊かだ。
特にバス・クラやコントラファゴットのサウンドが心地よい。
曲の作りからか、高音でキーキー言っているヴァイオリンに対して、チェロはおとなしく物足りない。
チェロも最後の楽章で負けじと高音でもキーキー言っているが、負けている。
ハンガリーの作曲家シャーンドル・ヴェレシュ(1907-1992)の「12の弦楽器のための協奏的音楽」(1966)は副題に示すように、この団体に捧げられたもの。
3楽章からなり、演奏時間は22分ほど。
この作品も曲想やダークなサウンドはバルトーク作品と言われてもおかしくない。
激しい部分もあるが、バルトークの「弦チェレ」に似た、ひんやりとした夜の音楽の雰囲気が濃厚でとても楽しめる。
「瞑想」と題された第二楽章の悲痛な歌も聴き物だ。
最後の「Action」の切れ味の鋭い速く激しいパッセージの連続もスリル満点。
カメラータ・ベルンの合奏力の高さが十分に示された名演。
コーイの「LalulaLied」は声を交えたヴァイオリン・ソロで、コパチンスカヤにぴったりの作品。
最後の「Camerata Birds」はその名の通り鳥の鳴き声を模したインプロヴィゼーション。
鳥の賑やかな会話が面白い。
時折低音でギイギイ鳴っているのは、なんの鳥の真似だろうか。
ユーモラスだ。
他にバルトークとリゲティの小品が収められている。
ハンガリーの民族色豊かなリゲティの「バラードとダンス~2挺のヴァイオリンのための」が楽しめた。
ということで、彼女にしては驚きこそないものの、とても楽しめるアルバムだった。
YouTube
Patricia Kopatchinskaja, Sol Gabetta, Camerata Bern:Plaisirs illuminés(alpha)24bit96kHz Flac
1.シャーンドル・ヴェレシュ:12の弦楽器のための協奏的音楽(ムジカ・コンチェルタンテ) - カメラータ・ベルンに捧ぐ
4.ジェルジ・クルターグ:しるしVI (『サイン、ゲームとメッセージ』より) - 弦楽三重奏のための
5.アルベルト・ヒナステラ: 弦楽のための協奏曲 作品33(1965)
9.ベーラ・バルトーク:2挺のヴァイオリンのためのピツィカート二重奏曲
10.ジェルジ・リゲティ:バラードとダンス - 2挺のヴァイオリンのための
フランシスコ・コーイ(b. 1985):
11.Les Plaisirs illuminés
15.LalulaLied
16.カメラータ・ベルン:カメラータの鳥たち (即興)
パトリツィア・コパチンスカヤ(vn)
ソル・ガベッタ(vc)
カメラータ・ベルン
ランシスコ・コーイ(指揮)(track 11-14)