音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

2023/09/18(月)00:00

ジョン・ウィルソン ロジャーズ&ハマースタイン:ミュージカル≪オクラホマ!≫

その他の音楽(110)

​ 先日に続きジョン・ウイルソンの新譜を取り上げる。 リリースされたばかりの新譜で、何とミュージカル「オクラホマ!」 初演から80周年を記念したリリースだそうだ。 eclassicalの半額セールが9/17迄だったので、ギリギリでセールに間に合ってラッキーだった。 このミュージカルはロジャース&ハマースタインの名作として知られる作品だが、今回は「Complete Original Score」と賑々しくも名打たれている。 presto musicの紹介記事ではジョン・ウィルソンが、この時代のオリジナルのミュージカルのスコアを研究し、この「Oklahoma!」のカットのないオリジナル・スコアを現代の観客に紹介する必要性を感じたことから始まったようだ。 オリジナルスコアはロバート・ラッセル・ベネット編曲による29人編成のオーケストラ。 楽器編成は1943年の初演時と同じで、ファースト・バイオリンが6、セカンドが4、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが各2。 木管楽器は、オーボエ、コール・アングレ、オーボエ・ダモーレ、そしてバリトン・オーボエが使われている。 ドラムとギターは1940年代の楽器を使うという凝りよう。 ウイルソンは2017年のプロムスでミュージカルの上演に近い形で演奏している。 これを見ると、このミュージカルの完全版の素晴らしさがよく分かる。 「People Will Say We're in Love」「Many a New Day」「 Out of My Dreams」などの有名曲が満載で、耳で聴いているだけでも楽しい。 ロバート・ラッセル・ベネットが編曲したミュージカルはオーケストラのメドレーになっている曲が多く、筆者もカンゼルの演奏などで耳に親しく、このアルバムもすんなりと耳に入ってくる。 このアルバムはコンプリートと称するだけあって、今までの録音では聞けなかった場面転換の音楽やバレエ・シークエンスなども含まれているのが嬉しい。 2つの場面転換の音楽はメロディを単純に繰り返しているだけなのだが、これがムーディーで実にいい。 約13分のバレエ・シークエンスは、ヒロインの農家の娘ローリーがカウボーイのカーリーとの結婚を夢見るが、その夢がローリーの農場の労働者ジャッドによるカーリーの殺害を想像する悪夢に変わるというストーリー。 ドラマチックな展開で聞き応え充分だ。 オリジナル・スコアに基ずく演奏なので、サウンドはシンプルで古のアメリカの農村の雰囲気が濃厚。 ビブラート過多のトランペットなど、いかにもノスタルジーを感じさせるサウンド。 気になったのは、少しレガートが多めなことくらいか。 ウイルソンは、歌を通じて演技できる声をキャストしたと語っているが、主役の二人をはじめとしてどの役も生き生きとして素晴らしかった。 第2幕「The Farmer and Cowman」で使われるバンジョーがなかなか気が利いている。 ロバート・ラッセル・ベネットはオクラホマ以外の「ショー・ボード」「南太平洋」「王様と私」「マイ・フェア・レディ」「サウンド・オブ・ミュージック」の編曲も行なっているので、ウイルソンにはこの路線をシリーズ化してほしい。 因みに「回転木馬」のスコアは既に完成している模様で、期待はいやがうえにも高まりそうだ。 ジョン・ウィルソン ロジャーズ&ハマースタイン:ミュージカル≪オクラホマ!≫(Chandos CHSA 5322)24bit 96kHz Flac Curly:Nathaniel Hackmann Laurey:Sierra Boggess Jud Fry :Rodney Earl Clarke Will Parker:Jamie Parker Ado Annie:Louise Dearman Aunt Eller:Sandra Marvin Ali Hakim:Nadim Naaman Andrew Carnes :Roberts Ike Skidmore:Juan Jackson Joe:Will Richardson Gertie Cummings:Sejal Keshwala Kate:Emma Kingston Ellen:Kelly Mathieson Virginia:Rebekah Lowings Vivian:Charlotte Kennedy Sylvie:Ceili O’Connor Fred:Danny Whitehead Cord Elam:Michael Colbourne Farmer:Freddie King ‘Oklahoma!’ Ensemble Sinfonia of London John Wilson Recording venue Susie Sainsbury Theatre, Royal Academy of Music, London; 18 – 22 July 2022

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る