音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

2024/07/06(土)14:55

Laura Van Der Heijden:Path To The Moon

クラシック音楽(1112)

​ イギリスの若きチェリストであるラウラ・ファン・デル・ハイデン (1997-)のシャンドス第2弾を聴く。 ディストリビューターによると、『19世紀後半から20世紀にかけて活動したベルギーのイラストレーター、ウィリアム・トーマス・ホートン (1864-1919)の幻想的なイラスト「月の小径」にインスピレーションを受け、制作されました。 月や夜を題材にした作品や、人類の月への探求心を呼び起こす作品など、さまざまなアイデアをもとに19世紀~20世紀の多彩なレパートリーが収録されてる』とのこと。 彼の作品を見ると、一度見たら忘れられない個性が感じられる プログラムは多岐にわたり、近代から現代のありきたりではない作品が並んでいる。 今話題の?ジョージ・ウォーカーやフローレンス・プライスの作品も含まれているのも目を惹く。 録音当時26歳という年齢だが、いい意味で若さを感じさせない、成熟した音楽を聞かせてくれる。 艶のある豊かなサウンドで、自由自在のダイナミックな、そうは言っても節度の守られた表現立派。 もよく練られていてダイナミックで堂々としたものだ。 昔だったら女性のチェリストは男性に比べひ弱なところを感じさせたものだが、この方は性別を意識することがない。 高音域も音程がよく、音がやせないのがいい。 ピアノのコールマンはチェロとの相性が抜群で、ダイナミックでスケールの大きい演奏で、チェロをプッシュしている。 ヴァラエティに富んだ選曲で楽しませてくれるが、不思議と小粒な感じはしない。 そのなかでもやはりブリテンのソナタが聴きごたえ十分。 コルンゴルトの喜歌劇「沈黙のセレナード」から「最高に美しい夜」はウイーンの薫り高い演奏。 起伏が大きく恰幅のいい表現だ。 ウォーカーのチェロ・ソナタは初めて聞いたが、なかなかいい曲だ。 プログラムは前半は固い作品が多いが、後半は一転して柔らかな作品が続き心が和らぐ。 さすがにフランス物の威力だろうか。 ドビュッシーの後は小品が3曲。 武満の合唱曲からの編曲「明日ハ晴レカナ曇リカナ」も無邪気さと素朴さが感じられる心温まる演奏だ。 ジャズ歌手ニーナ・シモンの「Everyone's Gone To The Moon」も意表を突いた選曲。 聞いたことのない歌だが、短いながらも心に響く演奏だった。 最後はドビュッシーの「月の光」で静かにアルバムを閉じる。 録音はSNが恐ろしく良く、無音の中からいきなり音が聞こえる。 細々とした曲が多いように見えるが、短い曲でも存在感があり、アルバムの印象は悪くなかった。 最終的にはほっこりとしたアルバムになっていた。 ということで、大変完成度の高いアルバムで、前作の「おとぎ話」というアルバムもチェックする必要がありそうだ。 Laura Van Der Heijden:Path To The Moon(CHANDOS CHAN20274)24bit 96kHz Flac 1.コルンゴルト:喜歌劇「沈黙のセレナード」より《最高に美しい夜》 Op.36-25(チェロとピアノ編) 2.ジョージ・ウォーカー(1922-2018):チェロ・ソナタ イ短調 5.リリ・ブーランジェ(1893-1918):反映(チェロとピアノ編) 6.フローレンス・プライス(1887-1953):夜(トム・ポスターによるチェロとピアノ編) 7.ブリテン:「ミケランジェロの7つのソネット」より第3番《Sonetto XXX》、チェロ・ソナタ ハ長調 Op.65 13.ドビュッシー:美しき夕暮れ L6(アレクサンドル・グレチャニノフによるチェロとピアノ編) 14.フォーレ:「2つの歌」より《月の光》 Op.46-2(チェロとピアノ編) 15.ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調 L135 18.武満徹:明日ハ晴レカナ、曇リカナ(ヘニング・ブラウエルによるチェロとピアノ編) 19.ニーナ・シモン(1933-2003):みんな月へ行ってしまった(ジェームズ・コールマンによるチェロとピアノ編) 20.ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」より《月の光》 L75-3(フェルディナンド・ロンチーニとアレクサンドル・ローレンスによるチェロとピアノ編) ラウラ・ファン・デル・ハイデン(チェロ) ジェームズ・コールマン(ピアノ) 録音 2023年3月27日-29日、ポットン・ホール(サフォーク、イギリス)

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