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トーマスの思い出

トーマスというアメリカ人男性のお話。

男性と言うよりはまだ少年と呼んだ方が正しい
のかもしれない。

19歳のトーマスはテキサスの田舎町に生まれ育ち、
海軍に志願し、このハワイへ赴任してきた。

海をハワイに来るまで見た事のなかったトーマス。
彼の両親はインディアンの血を継いでいる。

インディアンといえば黒い髪と黒い瞳を
想像させるけど、
トーマスはカリブ海より深い緑色に輝く瞳と、
黄金の髪に白い肌を持っている。

背はそう高くはないけど、
とても均整のとれた体系にジーンズが
とてもよく似合う好少年だ。

両親は国から保護を受けて生活する
インディアンの村に住んでいた。
彼もハワイに来る迄その村で両親と生まれ育った。

家は平屋で電気も電話も通っていなかった。
夜はろうそくの火で本を読み、
いろりの鍋を囲って家族で食事をしていた彼は
純粋で真っ白な心の持ち主でした。

外では沢山の牛を飼っていて、
庭にあまり沢山の牛のフンが落ちているために
夏は臭くて眠れないほどだったそうだ。

ハワイでの彼の友人である日本人女性は、
赤いスポーツ・カーでノース・ショア迄ドライブ
に連れて来てくれたこの彼がまさか、
つい最近までそんな原始生活をしていたなんて
信じられない気分だったそう。

働いたお金の半分はテキサスの両親に仕送りを
している事。
初めて買った車がどれだけ気に入っているかという事、
初めて離れたテキサスから見るものがすべて新鮮で、
日本人を見たのも初めてだった事、

ノース・ショアの海沿いの公園のぶらんこに揺られて
彼は生まれてから覚えてる自分の記憶の限りを
日が暮れるまで延々と彼女に話し続けた。

トーマスとは年も離れてたけど、
友人として時々遊びに行っていた彼女。

その彼女に本当の彼氏が出来た頃から
トーマスは彼女と会う事もなくなりました。

彼女がデートで留守をしている時に
トーマスから自宅にお花が届いていた事が
何回かあったそうな。

ある日彼女は、そのお花の中に一枚の詩を発見した。
そして彼の気持ちを知ってとても驚いた…

僕は透き通る様な肌と美しい黒髪の
東洋の女性に出会った。

その黒い瞳は隠していた心の中を見せてしまう力を秘めている。

僕が今まで恥ずかしくて同僚にも話せなかった
僕の家族の事、
僕の生活、
仕送りの事、

笑いもせず、ただ静かに聴いてくれたよね。
私もそんな生活してみたいって
言った君に僕は正直言って驚いたよ。
同時に嬉しかった。

そんな綺麗な東洋の君が
僕の彼女になってくれたら…
とずっと想っていた。

でも僕は君よりもずっと年下で
僕はきっと君をエスコートする
資格はないと思いました。

後、僕が5年遅く生まれてたなら、
君は僕を一人前として見てくれていたのかな?

いままでどうもありがとう。
これからは前を向いて歩いていくよ。
幸せになってね。
そしてずっとこれからも大切な
僕の親友でいてください。
トーマスより。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日、物置の写真を整理していたら、
学生時代にもらった手紙と何枚かの写真を発見した。

大勢で撮った海辺の水着写真に
その彼も一緒に写っていた。

この頃の私はハワイに来たばかりで
今より6キロも太っていた。
写真の中の私のお腹はちょっとやばい状態。なのに、

その私をこれほど褒めたこの若い少年は
きっと目が悪かったか、
(暗い所で本を読んで育った彼は確かに目が悪かった)

それとも、
テキサスから来たばかりでまだ日本人女性を
見る目が無かったのではないだろうか…。

などと、   
青春の日々を目を細めて振り返る私でした。

もう二度とこんな事起こらないよねぇ~
あぁ懐かしき青春の日々よ…、( ̄。 ̄)ボーーォ    


マントをひるがえす男






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