ロンドン滞在記―スペイン番外編4
スペインに滞在していた時、朝から晩まで、かなり精力的に歩き回っていたので、本やインターネットで、現地について、いろいろ調べたりする時間はなかった。しかし、日本に帰ってから、あれこれ調べれば調べるほど、新たな発見や、驚きが、たくさん見つかって、いちいち唖然としたり、驚愕したりしている。たとえば、私の大好きな、生ハムについて(~_~;)少し前、私が、イタリア食材にはまっていた頃、生ハムといえば、何が何でもイタリア――たとえば、パルマの生ハムであった。私の頭では、最高の食材といえば、イタリアンで、スペインの食材のことなど、まったく考えもしなかった。それは、なぜか?それは、日本に入ってくる商品の種類も品数も、公開されている情報も、あまりに限られていたからである。情報、それは本当に恐ろしいものだ。漫画「美味しんぼ」で、世界最高の生ハム、と、描かれていたのを素直に信じて(~_~;)パルマの生ハム、つまり、プロシュートこそ世界一と、ずっと思い込んでいたけれど――じつは、ヨーロッパの友達の多くに、「どうして? 世界最高のハムといえば、スペインでしょ?」と、いつも言われていたのだ。いわく、「そりゃあ、イタリアの生ハムも、とってもおいしいけれど、世界一といったら、やっぱり、スペインのアレでしょう?」と、言われるのである。スペインのアレ――つまり、スペイン産の生ハムの中でも、とびぬけて高品質で、栄養価が高く、味も、舌触りも最高、黒豚から作られる生ハムの、ハモン・イベリコ……その中でも、とくに、Bellota(ベジョータ)――つまり、どんぐりの実(ベジョータ)を食べさせて、放牧して育てる黒豚から作られる、品数超限定の、ハモン・イベリコ・ベジョータ――それこそが、キング・オブ・ナマハム(つーか^_^;)世界一なのであって、そんなことはヨーロッパの常識、と、グルメを自称する、何人もの友達に言われたのである。ただ、イタリア人の友達は、そうだとは言わなかったが(~_~;)私の大好きな、通信販売のネットのお肉屋さん、「生ハム.コム」のサイトを、まずはご覧ください。スペインのハモン(ハム)について、基本的な情報を、くわしく教えてくれます。生ハム.コムへ! 一般に、スペインの市場にでまわっている生ハムの、ほとんどが、ハモン・セラーノ――つまり、白豚さんから作られるハムだ。こっちだって、相当おいしいけれど、作られる量も多く、一般的なので、値段はとっても安い。そして、もうひとつの生ハムが、黒豚さんから作られる、ハモン・イベリコだ。ちなみに、スペイン在住のかたが、私の盲点をつくような、こんなエッセイを書かれていた。ここをクリック! やっぱりそうなんだ!――と、目からウロコが落ちる想い(~_~;)プライドの高い、イタリア料理の高級レストランでさえも、やはり最高、と認めてしまうほど、ハモン・イベリコはすごいのだ。スペインに行ってから、私にも、何となく理解できたのだが……どちらかというと、スペインの人たちは、一般に、商売っけというようなものが、足りないような気がする。自分の国で、おいしいものを作っていても、それを大量にがんがん作って、がんがん宣伝して、世界中に輸出して有名になろう、金持ちになろう、という野望が、まず、ほとんどないような気がする^^;だから、遠いアジアの果ての、私たちの国までは、おいしい情報が、まったく届かないのである。ただ、ひたすら、ていねいにていねいに、本当においしいものだけを作りたいという、根っからの職人気質。手作業で、大量生産もできないので、自然と、スペイン国内やヨーロッパ内だけで、食されることとなる。もともと、海外輸出用、商売用に作られているものでは、ないのである。この生ハムのことを知っていて、このハムが食べたい、大好きと言ってくれる人だけが、楽しんでくれたら、それでいい、地位も名誉も、お金も、べつにどうでもいいんだよ、というような……そんな達観した心境というか^^;そんな風だから、ヨーロッパ圏外には、ほとんど広まらず、表立った宣伝もしないので、その存在も、ほとんど知られていない。商売上手のフレンチやイタリアンとは、まず、その点がちがう。そして、じつは、生ハムだけでなく、「へー、知らなかった、めっちゃ、おいしいじゃん」と驚くような食材に、スペインでは、山のように出会った。たとえばワイン、たとえばチーズ、大本命のシーフードや、オリーブ漬け、果物等々……こんなに質がいいのに、こんなにおいしいのに、なぜもっと宣伝しないのだ、なぜ輸出しないのだ、なぜ日本で食わせないのだー、と、いつも心中わめいていた私。実際にスペインを訪れてみて、私は、この国の新しい魅力を、たくさん発見した。常に、強烈な太陽の光が射し、マタドールは、命を賭けて牛と闘い、フラメンコ・ダンサーは、情熱のほとばしりを、激しいリズムで刻み、宇宙一強いといわれるサッカー・チーム、レアル・マドリッドがあり――まぶしい光そのもののような、強烈な個性を発揮する国、スペイン。ところが――とりたてて激しい主張をするわけでもなく、静かに、黙々と、自分の信念をつらいて生きる、寡黙で、控えめな人々がいる。「アルハンブラ宮殿の思い出」に代表されるような、せつない、哀愁のメロディーがある。スペインの光と影、というのは、本当だなぁと思った。<今日の食べ物> この国のオリーブ漬けは、本当にうまい!スーパーや、屋外マーケットでは、こんな風に、山盛りのオリーブが売っている。ピクルスは、串刺しの、ちび太のおでんのようなものが多いかな。はっきりいって、このオリーブ漬け、おいしいのよ(ToT)/~~~こんなにおいしいのに、輸出もしないなんて、ずるいよ。何せ、オリーブ漬けだけで、数十種類も味つけのある、お国柄。私は、チリ味と、しょうゆ味が好き。