南風のC級シネマ評論

2006/04/22(土)09:14

Dear フランキー

映画-欧州(13)

今回取り上げるのは、「Dear フランキー」。(公式ホームページ) スコットランドの小さな港町が舞台だ。 ストーリー 世界中を旅する架空の父親を装い、ひとり息子に手紙を送り続ける母親。 それが唯一、息子の心の“声”を知る手段だった― フランキーは耳に障害を持つけれど、聡明で元気な男の子。 彼のママ・リジーは夫のDV(ドメスティック・バイオレンス)から逃げるためフランキーと転々としながら暮らしている。フランキーには「パパは客船アクラ号で世界中を航海しているの。だから航海が終わるまで会えないのよ。」と嘘をついている。しかも彼女は、フランキーのパパを装って、ずっと手紙を書き続けていたのだ。 しかし、母子の前にその“父親”は現れた…。 そんなある日、リジーの想像の産物だった船「アクラ号」がフランキーの住む町の港に寄港するというのだ!父親に会えることを喜ぶフランキーに、リジーは“一日だけのパパ”を探すことに。                   Amazon.co.jpより 静かな映画である。 決して多くないセリフ。 普通ならセリフで伝えるところを、表情やしぐさ、物で伝える。 灰色の空と海をベースにしたモノトーンの映像。効果的に使われる太陽の光。 そして、ぐっと感情移入できるBGM。 それらの繊細な表現が、「優しさと安らぎ」を私の心の中に運んできた。 それぞれの押さえた演技がいい。 特に母親リジーを演じたエミリー・モーティマーが抜群。 フランキーーがクローゼットを開けたことをとがめるシーンでの表情は、今までの息子を守っていた母親の気持ちと、「女でありたい」気持ちをみごとに表現している。 「デイビー」にほのかな恋心を抱く、少女のような顔。(アパートのドアの前のシーンは純愛そのもの) さらに、病院に前夫を訪ねたときに見せた毅然とした顔・・・などなど、どれをとっても魅力的だ。 この映画のキーワードは、DV(ドメスティック・バイオレンス)、離婚、母子家庭(お祖母ちゃんもいるけど)、聴覚障害などと決して明るい物ではないが、登場人物それぞれの優しさが、この物語を「未来あるもの」にしている。 ラストのフランキーの手紙は、その優しさの集約。 久々に本物の映画を見た気がする。

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