[BON VOYAGE+97] 後日談/カメラマンと被写体の癒着構造(?)。
業務繁忙のピークはどうにか過ぎたものの、残務処理などで相変わらずブログ更新の余裕に乏しい。ゆえに、今回も、印象に残った出来事だけを飛び飛びに報告していきたい。6月21日(月)。夏至。私の職場に現在入所している研修生への授業も、あと2週間ほどで終わる。他のクラスならいざ知らず、私の担任クラスでは「修了テスト」をするつもりはなかった。というのも、彼らはテスト(に代表されるような制度的な学校文化)というものに不慣れである上に、進度が遅くてテストをするほどの学習量をこなしていないからである。しかし・・・何らかの形で修了テストを実施するよう、上司から指示を受けてしまった。うーむ。テストをすることは、我々教師にはともかくとしても、彼ら学生には一体どんなメリットがあるのであろうか。私にはよく分からない。が、彼らの達成度や現在の実力を厳密に測定するというよりは、むしろ非常に簡単な問題にして「今まで日本語を勉強してきた成果として、これだけのことができるようになりましたね。やればできるんですよ!」と自信を持って退所してもらうための通過儀礼として、形だけのテストを実施するのも不可能ではない。上司からの指示は、結局そういう方向で骨抜きにして(?)、従うことに決めた。6月23日(水)。[BON VOYAGE+94]以降の記事でも既に何度か示唆してきたけれども、この日は担任クラスで4月16日(金)の池袋実習以来ほぼ2か月ぶりとなる外実習があった。行き先は、前期(半年前)の担任クラスで大変な思いをさせられた新宿である。今回のルートは、新所沢駅→(西武新宿線)→所沢駅→(西武池袋線)→練馬駅→(都営大江戸線)→都庁前駅→東京都庁(第一本庁舎45F南展望室)→55楼菜館(昼食)→新宿住友ビル(48F平和祈念展示資料館+51F展望ロビー)→新宿駅→(JR山手線)→池袋駅→(西武池袋線)→所沢駅→(西武新宿線)→新所沢駅、という流れである。このうち、新所沢駅から東京都庁までが3班に分かれて学生だけで移動し、東京都庁から新所沢駅までは教師が引率する。私自身は都営大江戸線練馬駅の改札前で各班の通過を確認してから、都庁の南展望室で学生たちと合流する計画であった。注意すべき地点の写真など、事前に用意周到な準備をしたこともあり、学生たちは(多少時間を要した班もあったとはいえ)特に大きなトラブルもなく、自力で目的地に到達することができた。もっとも、帰りの新宿駅では、池袋経由で新所沢までの連絡きっぷを買うのは難しかったようである。彼らは券売機に並ぶ際に直前の学生の動きをロクに観察していない上に、私の口頭の日本語がなかなか通じないせいもあって、私は「ここを押して!押して!いいから押すのっ!」みたいな絶叫を繰り返すことになった。また、池袋へ向かうには何番線から乗るかという表示の読み取りも一苦労で、ある学生などは「西武新宿線↑」という文字を指差していた。自分がどういう連絡きっぷを買ったのか(ひいては、この外実習の目的)をまるで理解していないということらしい(絶句)。ところで、クラスには雨男か雨女がいるらしく、このクラスの外実習は雨に祟られることが多かった。今回もほとんど雨であったが、都庁の展望室にいる頃だけは奇跡的に雨脚が弱まり、比較的遠くのほうまで見えた。マイカメラを持参した学生たちは撮影しまくりであった。さて、ここからは裏話。某新聞社が特集記事を組むというので、取材のカメラマンがここ数日、私の職場に出入りしていたのであるが、この外実習も取材対象となり、カメラマンが同行していたのである。「あっちを見てください」などと、カメラマンからポーズの要求を出されることもあった。こちらとしてはすっかりモデル気分である。が、よく考えてみると、違う新聞社ではあるものの、お花見の報道写真と同じ癒着構造ではないか?昼食はさすがに別行動であったものの、カメラマンは平和祈念展示資料館で再合流。入館するとき、受付の係員から「11名様でいらっしゃいますね?」と聞かれたが、当方は学生9人と教師1人の団体である。ああ、カメラマンを加えると、確かに11人に見えてしまう。「あっ、いえ、この人は違います」と、のど元まで出かかったけれども、グッとこらえてスルー。この館内は基本的に撮影禁止。カメラマンは「ここに来るたびに思うんですけど、撮影を禁止する理由がよく分からないんですよ」と私に語った。まあ、撮影を許可してしまえば印刷物やウェブなどの媒体で内容が公開されてしまい、施設(ひいては、独立行政法人)の存在理由が失われるからであろう。現に、この独法「平和祈念事業特別基金」は今年9月に解散する予定であったが、議員立法の「戦後強制抑留者特別措置法」の成立によって2013年3月まで存続することになった。新宿住友ビルから新宿駅までの地下道は暗いため、カメラマンのリクエストは高層ビルを背景に地上を歩くことであった。が、雨が強く降っていたので、そのリクエストは却下。結局この日は、新宿住友ビルでカメラマンと別れた次第である。この日の夜は、延期されていた「塾」の第4回が開かれた。しかしながら、私自身は山積する仕事の処理に追われていたので、やむなく欠席・・・。6月24日(木)。高齢者は午前の授業のみ出席することから、午後は若い世代だけが残る。その午後に、担任クラスで小実習を行った。小実習というのは、何らかの課題を達成するため、教室ではなく教員のいる事務室に赴く活動のことである。今回のタスク活動は、今まで学習してきた「いつ」「どこ」「だれ」「なに」などの疑問詞を用いて、担任にいろいろ質問するというもの。質問文を考えるところから始まり、それをメモして口頭で練習し、事務室でのインタビューとなる。で、学生たちの実際の質問は、以下の通りであった。1人目Q1 「せんせい、こいびと、いますか?」Q2 「どんなひと、すきですか?」2人目Q3 「せんせい、しゅみは、なんですか?」3人目Q4 「せんせい、うち、どこですか?」Q5 「なんさいですか?」4人目Q6 「せんせい、けっこんしたいですか?」Q7 「どんなひと、すきですか?」おいこら、ちょっと待った。日本ではそういう質問は好まれない、と先週の交流実習で学んだはずなのに、担任には適用外かよ。しかもQ1やQ6は、疑問詞を使っていないし・・・。うーむ。このコマを担当した教員が私に聞きたいことを、学生たちが代理で質問したような気もしなくはない。思わず面食らってしまったが、私がどう答えたかは読者のご想像にお任せしたい。