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カテゴリ:読書
書店の雑誌コーナーをふらっと歩いていたら、気になる見出しが目に飛び込んできた。
「気温」「気圧」「水蒸気」の3つでわかる 気象の決定版 地球と気象のしくみがみるみる理解できる天気図がすぐ読める 赤い彗星・・・ではなくて、赤い表紙でおなじみの科学雑誌『ニュートン』の2007年1月号である。 この「決定版」というフレーズにひかれ、思わず手に取ってレジに直行してしまった次第である。 かつて私は大学を卒業した後、社会で7年ほど働いた。その後、再び別の大学に編入学し、2002年1月の気象予報士試験に1回で合格してから、(大学卒業後は正社員になることを前提に)民間の気象情報会社でアルバイトをしていた経験がある。もっとも、その会社は業績が思わしくなく、私が大学を卒業する直前に破産宣告を受けて消滅してしまい、再就職先を失って「流浪の民」と化した私はめぐりめぐって日本語教師の仕事にたどり着いたわけであるが・・・と、その放浪記はさておき、気象の話に戻ろう。 アルバイトの採用面接の際に、部長(ベテランの気象予報士)から「気象現象をとらえる上で最も根源的な原理・法則は何だと思いますか?」と問われたことがある。私は「アジアや太平洋といった広い規模のマクロスケールと、一部の狭い地域に限られた局地的なミクロスケールの、相互作用でしょうか」と答えたのであるが、その人は「重い空気は下に向かい、軽い空気は上に向かう」と、禅問答のような極めてシンプルな見解を示してくださった。 確かにその通りで、この原理があらゆる気象現象の出発点と言える。 そのことを、豊富なビジュアルでもっと丁寧に解説しているのが本誌である。 オールカラーで内容が充実しているのに、税込みの定価が1000円というのは実にお買い得。 気象予報士試験を目指す人には、強力な副読本になるはずである。 ただ、ちょっと残念なのは、いまだに日本式の地上天気図を多用していることである。 気象予報の現場では、日本式の表記を使わない。国際式の表記が基本である。また、地上天気図は予報の「結果」でしかなく、予報の「過程」にはほとんど役立たない。国際的な観測網を経て気象庁のスーパーコンピュータがはじき出す、高層天気図(数値予報)の理解が不可欠なのである。 NHKラジオ第2放送の『気象通報』もそれなりに価値はあるが、インターネットの時代には、北海道放送の『専門天気図』のほうがはるかに有効である。 著名な科学雑誌であればこそ、そうした事実を普及・啓発すべきではなかろうか。 なお、余談であるが、特別付録の「最新版・太陽系両面カレンダー」を見て、冥王星が惑星のカテゴリーから除外された事実を改めて思い知った。 科学的知見を得てしまうと、その分、何か(夢やロマンといったもの)を失うことになるのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.11.21 16:04:41
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