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カテゴリ:読書
晴れ時々曇りといったところ。三多摩の府中のアメダスによれば、日最低気温は10.5℃(06:20)、日最高気温は19.1℃(15:00)。妙にマッタリとした暖かさである。
さて、まずは別件から。私の目に留まった社説対決を取り上げてみよう。 この件に関しては、各紙はあまり対決していない。政治の世界の言葉に重みがなくなり、一段と信用が失われていく状況(言葉と信用のデフレ・スパイラル)に対して、警鐘を鳴らす内容となっている。 このままでは、もはやガラパゴス化やマダガスカル化にとどまらず、海中に沈没してしまうのではないか・・・といった危機感を覚えるのは、私だけであろうか。 それでは、今日の本題である。 2月20日(水)に川崎で購入した新書3冊のうち、2冊目をようやく読破した。そこで、その印象などを述べてみたい。 多田容子氏の『自分を生かす古武術の心得』(集英社新書)である。 本書の帯には、女性ながら武道袴姿で木刀を構えている著者の写真がある。正直に告白すると、この凛々しい著者の写真がなければ、私は本書を手に取っていなかったに違いない。 それはともかく、著者は実は私と同年生まれ。京都大学経済学部を卒業し、数年間の会社勤めを経た後に、時代小説作家に転じたという才媛である。剣豪小説を書くうちに、柳生新陰流を習ったり手裏剣術に熱中したりした(いや、今もしている)経験から、そこでの発見を記したものである。 「古武術」というタイトルからは、身体の動かし方についての秘伝を期待してしまう。確かに、そうした記述もある。しかし、それだけにはとどまらなかった。 身体をうまく動かすためには、身体感覚を静かに研ぎ澄ますことが不可欠らしい。いわば、動と静の双方が必要なのである。さらに、身体の動静は、心の動静と密接にかかわっている。執着心があると身体の動きも固定して伸びなくなるというような、身体の動きと同様に心のありようについても、示唆に満ちている。以上は個人の内面に属する指摘であるが、「個人と個人の関係」あるいは「個人と環境との関係」に関しても多くの言及がある。 このように、古武術は、実にさまざまな「理論」を内に含むものらしい。 とは言え、そうした理論は、何かの教典のように、必ずしも文字化されていない。身体の動きや感覚などは文字で伝えきれるものではなく、弟子の実際の様子を見ながら、その理解度に応じて、経験豊富な師匠が口伝によって指導していくことになる。 うーむ。奥が深い。 その奥の深さの一端を、本書は示してくれるはずである。 私にとってとりわけ興味深かったのは、やはり学習とか教育といった側面であろう。 著者は単に教えを受けるだけではなく、自ら教室を開いて初心者を指導したりしているが、そのくだりから一部を引用しておく。 「習うこと」「自ら工夫すること」「教えること」―この循環を、総合的に行うと、稽古は加速するようである。自らが主宰する稽古会をもつとき、一方通行で教えるだけか、自分の研究にも役立てるかで、長年のうちに大きな差が出そうだ。ともあれ、本書は身体と心を健康に保つためのヒントが多く、日常生活のあらゆる場面で応用できそうな含蓄に富んでいる。そういうことに興味のある人には、ぜひ一読を勧めたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.03.17 06:30:51
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