吾が輩は野良猫である

2009/06/13(土)18:53

5年目を迎えて。

ペット(41)

今年6月で「タラコ」♀は5歳になった。心のリハビリを続けていたわたしは、精神科医のアドバイスを受け、早朝散歩を日課に取り入れていた。鬱を患っている人間にとって朝は最も苦手な時間帯。一日のリズムを整えることが鬱回復の基本なので、教科書通りに早朝散歩に励んでいた。梅雨の走りを思わせる灰色の雲が限りなく続く空を見上げながら、朝靄のかかったまだ薄暗い公園で、眠気を振り払いながら公園のベンチに腰掛けた。その時、どこからともなく子猫と思われる鳴き声が聞こえて来たのである。その声は必死に親を探す子どもの泣き声にも似ていた。声は聞こえるが、その姿は全く見当たらなかったが、無造作に生い茂った林の中であることは察しが付いた。わたしよりも先に通りかかった中年の女性がその鳴き声に気付き、林の中を捜し回っていたが、見つかる様子もなくその女性は捜すのを諦めて足早にその場を去って行った。わたしは早速、鳴き声のする林の中に分け入り、子猫の姿を追ったが中々発見出来なかった。そして漸く一匹の寅猫を見つけ、奥深い林の中から抱き上げた。生後一ヶ月くらいだろうか、子猫はわたしの腕に爪を立て必死にしがみ付いてくる。よほど不安と空腹で一杯だったのだろう。そうして子猫は神戸家の一員になり、この日まで病気にも罹らずすくすくと育った。家族4人で暮らしていた頃は、タラコは家内にべったりだった。一番愛情を注いでいたのは家内であったし、猫は男性よりも女性になつくようだ。男性の野太い声が苦手らしい。拾い主のわたしのところへ自ら寄って来ることは殆んどなかった。5歳という年齢は人間に例えると35,6歳になり、最も成熟した時期であり大人の猫と言えるが、この頃から体力が低下し始める。猫の寿命は最長で25歳、人間で言えば115歳前後。ここまで生きられる猫はギネス級である。人間が動物と暮らし始めてから一万年以上経つが、動物がペットとしての地位を築いたのは1970年頃になる。ペットの語源は「撫でる」であるが、愛玩動物という意味の方がより多くの人に知られているだろう。しかし動物は人間の玩具ではない。猫がよく「ふにふに」をする光景を見て、非常に愛らしいと思うだろう。その行為は子猫の時の名残であり、母乳を求めて母猫の乳房を揉む習性が残っているのである。ペットは人間の寂しさを紛らわしたり、子どもの相手をしたりするが、あくまでも人間の代用品ではなく、神が人間に使わした兄弟なのである。ペットに深く寄り添えば、その偉大さにきっと驚くことだろう。

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