吾が輩は野良猫である

2013/03/25(月)20:52

絶版から常備配本へ。

出版(18)

    時の流れは予想以上に早いもので、誰にもそれを止める事は出来ない。せめてもう少し遅くなってくれればと思ったりもする今日この頃。  詩集・天国の地図が出版されてからこの3月で8年になった。刊行日が3月15日であり、詩集の誕生日という訳で8歳になったと言うことになり、誕生日を祝って喜んでいいのかどうか…筆者としては迷うところではある。  つまり、人間に寿命があるようにやはり書籍にも寿命がある。それを「絶版」という訳だ。本来ならば、とうの昔に絶版になっても不思議ではなかったが、お陰 様で出版当初の飛ぶ鳥を落とす勢いは毛頭影を潜めてはいるものの、年間を通して僅かながらに流れがあり、倉庫から流通に乗り読者の手元に届く動きが途切れ なかったことで出版契約が自動更新されていた訳である。  絶版はどのようにして決められるかと言うと、書籍の刊行日が古い順に処分されて行く。但し、出版一年で絶版になる場合も時にはある。一年を通して全く動きが見られなかった場合がそれに当たる。  過去にも話した通り、書籍の年間出版数は約7万冊に上り出版ラッシュで書店に置かれない本がその内の70%を占めていると言われている。出版社或いは出版社と契約している物流倉庫には在庫の数で溢れんばかりになっているのが現状である。  わたし自身、一時そのような書籍ばかりを扱う倉庫でバイトをした事があり、毎日4トントラックに零れ落ちんばかりの書籍の塊が運び込まれて来るのを嫌というほど見て来たが、如何に資源を無駄にしているか思い知らされるばかりであった。  今年3月に絶版を迎える書籍は2005年に出版された本が対象である。故にもちろん「天国の地図」もそれに当たる。文芸社からわたしに連絡があったのは昨年の10月末だった。   経済産業省が立ち上げた(コンテンツ緊急電子化事業「緊デジ」)は国の補助により約6万タイトルを電子書籍化しその売上を東北の被災地へ回すというもので あり、文芸社もこのプロジェクトに参加し、同社の書籍から800冊を厳選し電子書籍化する筈であったのだが、諸事情により文芸社はこのプロジェクトから撤 退せざるを得なくなり、その説明とお詫びの内容であった。  同社の出版物が何万冊あるかは知らないが、800冊の中の1冊として「天国の地図」にお呼びが掛かった事は誠に喜ばしい話であったが、結果的にその望みは叶わなかった訳で、更に追い打ちを掛けたのは絶版の話であった。  詩集は現在でも売れ続けてはいるものの、やはり出版社の現状としてこれ以上倉庫に置いておく訳にはいかなくなったようで、売れているのに何故?と疑問を抱いたが出版界の裏側にもそれなりの事情があるようだ。   そして更に話は進み、文芸社のプロジェクト撤退で著者様に多大の迷惑掛けてしまった事のお詫びとして紀伊國屋書店での常備陳列・配本の話になり更に契約更 新も継続される事となり、「瓢箪から駒」ではないが意外な展開になり、わたしとしては「願ったり叶ったり」の結果となった。  「絶版」と「再陳列」では天と地ほどの差がある訳で、まるで強運のわたしの魂が詩集にまで乗り移ったかのようにも思えた次第である。  陳列と言っても出版当初の平積みではなく、最も一般的な「棚刺し」ではないかと思われるが、その辺は書店のオーナーが決める事なのでどう置かれるのか分からないのが正直な所である。   陳列される書店は次の通り。千葉県「紀伊國屋書店・流山おおかたの森店」東京都「渋谷区・渋谷店」「新宿区・新宿本店」「世田谷区・玉川高島屋店」「千代 田区・大井町ビル店」福井県「福井市・福井店」大阪「堺市・泉北店」岡山県「岡山市・クレド岡山店」福岡県「久留米市・久留米店」熊本県「菊池郡・熊本光 の森店」以上となっている。  因みに絶版になった場合その本はどうなるかと言うと、著者の元に送られて来る。まあ、そうなったらバナナの叩き売りではないが、路上で売り捌くと言うのも一つの方法である。  出版当初から購入してくれた読者の中には、「サイン」を約束しながらもいまだにそれが果たせずに心苦しく思っており、出来るだけ早い時期にわたしの体調を見ながらサインさせて頂こうと思っている。  次回作待望論も多く聞かれる中、申し訳なく思いますが、いま少し「天国の地図」を温かく見守り応援して頂けると有難いです。

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