2004/11/10(水)02:43
キャリアショック
この書籍は自分がフリーエンジニアになる前に読んだ書籍であり、自分のキャリアに対する考えについて検証するのに非常に役立った本である。
戦後から現代にかけて日本社会に根強く残っているキャリア感と
変化の激しい現代におけるキャリア感の違いを読者に気づかせる為に書かれた書籍と
自分は位置づけている。
本書では、日本におけるキャリアビジョンについて戦後から高度成長時代までは、「富士山登山型」であり、
変化が激しい現代においては北アルプスのような「連峰登山型」であると述べている。
前者は、出世と言う高い目標があり、その一つの目標に向かって計画を立て、長い時間を歩いていく。その目標は絶対であり、決してなくなる事はない。
また後者は、一つの頂上に到達するとまた視界が広がり、次の目標に向かい歩き出す、そのようなビジョンであるとしている。
本書ではキャリアを切り開く人のパターンのポイントとして以下のものをあげている。(本書は後者を全て支持している)
(1)「横並び・キャッチアップ」か「差別性・希少性」か
(2)「同質経験」を活かすのか「異質経験」を活かすのか
(3)「過去の経験」にこだわるのか「今後の動向」に賭けるのか
(4)「指導してもらえる」のか「好きなようにできる」のか
(5)「社会的自己意識」か「私的自己意識か」
(6)「合理的判断」か「直感」か
(7)「会社の論理」か「職業倫理」か
自分も30歳になり、フリーなどという社会的に不安定な立場(?)ではなく、
会社員になり安定した給料をもらい、老後は退職金、厚生年金で暮らすといった考えもなくはないし、
また周り(親・友達)からもそのような事を言われる事がある。しかし、自分の感覚として「富士登山型」のキャリアが本当にしっくりと来ないのである。
一つの会社にいたからといって、年齢を重ねれば給料が上がるという保証もないし厚生年金、退職金制度の崩壊も、マスコミで盛んに報じられている。自分の退職年齢の60歳の時代(30年後)はさらに悪化していると踏んでいる。
そうなのであれば、一つの会社にしがみつくよりも、年齢が若いうちに「連峰登山型」のキャリアを求め、日々短期・中期目標を達成する為に邁進した方が
よほど自分で切り開くキャリア感(虎穴に入って虎子を得る)があってよいだろう。
先が誰もみえないこの時代、目標を達成して先がみえるのはその目標を達成した本人しかあり得ず、
またその先の目標が見えたものがその目標(チャンス)に挑む権利を得られるのである。
人間、歳を重ねるほどに安定志向になるものであり、また年齢と共に道も狭まってくるものである。
道が狭まって将来困らない為にも、若いうちに自分の動機に従ったキャリアを求める事が大事である。
本書でも、会社に合わせ自分の動機に合わない仕事を我慢して遂行し乗り切ってその会社での出世を求めるよりも
自分の動機は何かについて熟考し、その動機に従ったキャリアを選択する事をすすめている。
しかし連峰登山型(一つの頂上に達した時に次の目標がみつかる)であるといっても、それはキャリアについて言及されたものである。その一つ上のレイヤーとして人には自分がなりたい人物像があり、それに達する為の手段としてキャリアというものが存在すると思っている。
自分がなりたい人物像については偶然にまかせるのではなく日々問う事を忘れずに、具体的なものにしていく必要があるであろう。その人物像は、ある会社の重役になりたいというようなレベル(キャリアが手段ではなく目的となってしまっている)ではなく、人としてどのようにあるべきかという自分の理想像といったものであるべきであろう。
その人物像に達する道筋(キャリア)が連峰登山型なのだ私は考える。