音の体験、音の本質
シュタイナーは芸術の源泉も,霊的世界の内に見ている。彼にとって芸術は,霊的世界の永遠性を地上で啓示するものである。文学ではゲーテ,シラーの古典主義どまり,絵画では自然主義以前、音楽ではワーグナーくらいまでである。シュタイナーが現在も生きていて,ルツィファー性やアーリマン性の色合いが濃い現代芸術に触れたなら,それを芸術と呼んだかどうかは疑わしい。彼は霊的世界に原音楽(Urmusik)があると考えている。それは紀元前6世紀のギリシャ時代に密儀を修めたピタゴラス学派が「天界のハーモニー」と呼んだものである。人間は睡眠中,エーテル体と物質体を地上に残して,自我とアストラル体の構成でアストラル界や,さらに上の霊的世界に出ているとシュタイナーは言う。その時,人間のアストラル体はこの原音楽にひたりきるが,死後の場合とは異なり,自我は意識を失っていて,この世界を見ることはできない。人が音楽的才能をもっているということは、夜間アストラル体が味わった原音楽を,昼間思い出せるような素質をもっていることだという。 人間の音体験第一講第二講第三講 音楽の本質第二講第三講第四講