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楽天・日記 by はやし浩司

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2009年05月29日
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カテゴリ:旅行記
●類は友を呼ぶ

今回の金融危機で、金融資産を100分の1にした人がいる。
1億円が、100万円。
そういう人の話を、身近で聞いていたので、x00万円くらいなら、
何でもない……と言いたいが、そうはいかない。

相手がそれだけの誠意を見せてくれれば、まだ救われる。
母にも近い人だったが、母の葬儀にも来なかった。
今回も、何も協力してくれなかった。

昔からこう言う。
(私がそう言っているだけだが……。)
『被害者はいつまでも被害を受けたことを覚えている。
しかし加害者には、その意識がない。
あってもすぐ忘れる』と。

「復讐」という言葉もあるが、それを考えるだけで、疲れる。
だから忘れるのが一番。
どうせその程度の人は、その程度の人生しか送っていない。
まさに一事が万事。
万事が一事。
いろいろ噂が耳に入っているが、板取村でも、つまはじき者とか。

さらに言えば、『類は友を呼ぶ』。
その人と親しく交際している人を、私は何人か知っている。
しかしたいへん興味深いことに、どの人も、似たような人。
小ずるくて、どこか薄汚い。

●損論

少なくともこの10年以上、私は悶々とした気分が晴れなかった。
金銭的な損失を問題にしていたわけではない。
事実、それで売れなかったら、山林は、地元の森林組合に寄付するつもりでいた。

それ以上に、信じていた人に裏切られたというのは、信じていただけにショックが大きい。
それに私は、板取の人たち以上に、この村が好きだった。
今も好きだ。

しかしこの村へ来るたびに、ムッとした不快感と闘わねばならない。
それが苦痛だった。
だからはやくスッキリしたかった。
ケリをつけたかった。
山林のことは忘れたかった。
ついでに、それを売りつけた人のことも忘れたかった。

が、悪いことばかりではない。
人は、損をすることで、より大きくなれる。
損を恐れていたら、自分の殻(から)を破ることはできない。
「損をした分だけ、またがんばればいい」と。

人は追いつめられてはじめて、つぎの手を考える。
同じように、損をすることで、より賢くなる。
ちなみに、あなたの周囲で、ケチケチしながら生きている人を見てみるとよい。
そういう人ほど、小さな世界に安住しているのがわかる。

●中切(なかぎり)

母方の兄弟が13人もいる。
そのため、このあたりには、私の従兄弟が、散らばっている。
この中切にもいる。
私たちは、「Mちゃん」と呼んでいた。
当時としては珍しい、背が高く、スラリとした人だった。
夫は長く、中切の郵便局の局長をしていた。

で、ワイフは、相変わらず黙って歩いていた。
距離がわからないから、バス停に来るたびに、バスの時刻表を見た。
朝、7時01分に、板取温泉を出るバスがある。
その時刻は知っていた。
だから、時刻表に、7時05分とあれば、板取温泉からバスで、4分の
距離ということになる。
中切りのバス停では、7時05分となっていた。

「あと4分の距離だから……」と私は言った。
ワイフはウンとだけ、うなずいた。
ワイフはすでに体力の限界を超えていた。
それが私にも、よくわかった。

●絶望

その中切を出たところに、コンビニがあった。
飲み物を買った。
で、そこの若い主人に、「板取温泉まで、あとどれくらいですか」と聞いた。
主人は、「5分……」と言った。

私「歩いていくと、どれくらいですか?」
主「5キロくらいかな……。こ1時間はかかるかな……」と。

私は、この「5キロ」という言葉を聞いて、がく然とした。
「まだ、半分しか来ていない?」「いや、そんなはずはない」と。
「もしそうなら、今までの倍の距離など、とても歩けない」と。

私ははじめて弱音を吐いた。
「従兄に助けに来てもらおうか」と。
ワイフは、その言葉にずいぶんと迷ったらしい。
「そうねえ……」と、小さな声でつぶやいた。

●なしのつぶて

私に山を売りつけた人には、何度か手紙を書いた。
しかしそのつど、返事はなかった。
その私も61歳。
そろそろ身辺の整理をしなければならない。
山林など、もっていても、どうしようもない。
そこで山林を売りに出すことにした。

しかし山林は、町中の宅地のようなわけにはいかない。
売るといっても、その方法がない。
それを扱う不動産屋もない。
しかたないので、私は新聞に、折り込み広告を入れた。
「山林を買ってくれる人はいませんか?」と。
が、この折り込み広告が、その人の逆鱗に触れたらしい。
私のことを、「浜松のターケボー」と、周囲の人たちに言っているのを知った。

「自分に恥をかかせたから、ターケボー」と。

どこまでも、あわれな人である。
心の貧しい人である。
心の髄(ずい)まで、腐っている!

●山林

素人は、そしてその土地の人間でないならば、山林などに手を出してはいけない。
「投資のつもり」と考える人がいるかもしれないが、それもやめたほうがよい。
買うとしても、何町歩単位というように、山ごと買う。
理由がある。

山そのものには、財産的価値はほとんどない。
価値があるとすれば、その上の木。
「立木(たちぎ)」という。
しかしその管理がたいへん。
木の管理もたいへんだが、隣地との境界をどう守るかもたいへん。
10年も放っておくと、境界すらわからなくなる。

加えて買うのは簡単だが、売るのがたいへん。
まず不可能と考えてよい。
山林というのは、地元の知りあいどうしが、内々で売買するのが慣わしになっている。
私はそれを知らなかった。
私はたしかに、ターケボウだった。

●あと2キロ

「もうだめだ……」と、私も思うようになった。
ワイフはひざが痛いと言った。
私も太ももが、引きつったように痛くなり始めていた。

私「きっと10キロではなかったんだよ」
ワ「……」
私「きっと15キロだっただよ」
ワ「……」
私「ぼくの夢につきあわせて、ごめんね」
ワ「毎度のことよ……」
私「うん……」と。

ビデオを撮る回数も少なくなった。
首にぶらさげたカメラが、ベルトのバックルにカチャカチャ当たる。
心の遠くで、「カメラに傷がつく」と思ったが、それをポケットにしまう
元気もなかった。

と、そのとき小さな看板が目についた。
「板取温泉まで、2キロ」と。

とたん元気がわいてきた!
あと2キロ!

「あと2キロだよ。家から、ビデオショップまでの距離だよ」と。

私たちは丘の上を歩いていた。
その向こうに、赤い大きな屋根が見えてきた。

「着いたよ!」と声をあげると、ワイフははじめてニッコリと笑った。

●板取温泉

このあたりでは、ドイツ語が公用語になっている、らしい。
少し前に通り過ぎた、板取中学校にも、ところどころにドイツ語が使われていた。
ドイツのどこかに似せて、村興(おこ)しをした(?)。
板取温泉も、そういう雰囲気を漂わせていた。

それが正解だったのか?
昔からの板取を知る私としては、違和感を覚える。
あちこちに「スイス村」という表示も見える。
しかしどうして板取が、スイス村?
雰囲気からして、カナディアン村のほうが、合っている。

和室の一部を、水色に塗り替えたような違和感である。
スイスは山の上の国。
板取は、深い谷あいの村。

しかしそれを差し引いても、板取温泉は、すばらしい。
美しい自然の中にある。
私自身は、まだ一度も入浴していないが、評判はよい。

●山の宿・ひおき(民宿)

私はこの板取村が好きだが、ここ数年は、板取村へ来るたびに、
いつもこの「ひおき」に泊っている。
板取村では、イチ押しの民宿である。
場所は、板取温泉の、川をはさんで反対側。
歩いて5分ほどのところ。

住所:岐阜県関市板取3752-1
電話:0581-57-2756

四季折々の自然を満喫できる。
1泊10500円(1名のばあい)。
手元の案内書にはそうある(09年5月)。

案内書には、「通気による冷暖対策のため、閉鎖的な客室構造とはなっていませんので、
ご了承くださいませ」とある。
そのポリシーが気に入っている。

のんびりと山間の田舎を満喫したい人には、お勧め。

●小さな村

そのひおきの主人が、私たちの部屋にやってきて、こう言った。
「山のほうは、片づきましたか?」と。

ギョッ!

この言葉には驚いた。
「どうして知っているのだろう」と。

私は折り込み広告を入れた。
それには、「浜松の林」という名前を明記した。
どうやらそれを読んだらしい。
しかしそれにしても……!

もうひとつの可能性は、以前書いた、私の旅行記を読んだ(?)。
その中で、「ひおき」の宣伝をしておいた。
今、ヤフーの検索エンジンなどを使って、「山の宿ひおき」を検索すると、
私のHPが、かなりトップのほうに出てくる。
それで私の名を知っていたのかもしれない。

もともと小さな村である。
折り込み広告にしても、全世帯で、530軒ほど。
動きが止まったような村だからこそ、その内部では、濃密な情報交換が
なされているにちがいない。

私が「実は今日、片づきました」と言うと、うれしそうに喜んでくれた。

●2万6400歩

ひおきに着いてから、万歩計を見ると、2万6400歩。
生老から民宿「ひおき」まで、1万4400歩ということになる。
私の歩幅で、1万歩で、約7・5キロ。
それで計算すると、生老から板取温泉まで、約10キロということになる。
従兄が言ったことは、やはり正しかった。

しかしそれにしてもよく歩いた。
荷物も重かった。
そのこともあって、ひおきでは、ご飯を、3杯も食べてしまった。
いつものことだが、おいしかった。
気持ちよく眠られた。
午後8時に就寝。
起きたのが午前4時。
ワイフは、午前5時。

まだキーボードがよく見えないときから、この原稿をまとめる。
今は午前5時半。
これから近くの川へ行き、ビデオと写真を撮ってくる。
家へ帰ってからの編集が楽しみ。
「どうか期待していてほしい」と、今、ふと、そう思った。





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最終更新日  2009年05月29日 06時32分41秒
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