117 杉山祥子
第117回私は積極的な自然愛好家でも環境保護者でもありません。それでも、太陽の光に体を当てるとほくほくするし、 風が葉をゆらし木の下では深呼吸をしたくなるし、 雨上がりに虹を見ると得をした気分になるし、 巨大な満月を見ると何かいいことがありそうな気がするし、 流れる水に体を任せると人間は水の中で生まれたのだということを実感します。自然の中で気持ちが安らぐということはとても当たり前で普通のことなのかもしれません。一方、老木の剥き出た巨大な根を前にすると 自分がとても小さな存在に思えて心が洗われる思いがします。 老木は何百年、何千年も前から場所を替えず、 堂々と、様々なものや出来事を眺め続けているのです。いつまでも自分の位置を定めることができない私にとって、 それはとても神聖な存在に思えます。歴史ある自然は心地よいだけでなく、 自分の無力さを教えてくれる厳しい存在でもあります。杉山祥子『フラのある生活』