それでもなお平穏な日々

2012/04/19(木)09:36

WW2以降の戦争史と本当に危険な国家(1)

軍事(17)

 ネット内を見ていると、軍事(自衛隊含む)について多くの人が意見を交わしている。 意見の内容は個人の考えであるから、それに賛意を示すあるいは反論するは別として、基本的知識に欠ける人が結構な数で見受けられるのは残念である。 政治(特に国際政治)や軍事の面での知識が不足、あるいは欠けている人は、おおむね知識豊富な人から論理的な欠陥や疑問点をぶつけられることが多いのだが、当然知識がない(自分ではあると勘違いしている場合も多い)のでまともに回答できない状態になり、そのうち逆切れして議論の体をなさなくなってしまう。  本稿では、せめてまともな議論ができる程度の基礎知識を持ってもらうために、特にネット上で多く見られる知識の欠如・勘違いについて、根拠となる文書を示しながら、あわせて私の意見を述べていきたいと思う。 また、もし私の記述内に間違っているものがあれば、遠慮なくというよりもぜひコメントで指摘をしていただきたくお願いする。 (過ちを正すに遅きは無し、ご教示いただいた方には深甚なる感謝の意をもって、自らの過ちを正させていただく。願わくば根拠となる文書のアドレス等を添えてご指摘いただければ幸いである。)  相変わらず長い前置きで恐縮だが、こればかりは性分なのでご勘弁願いたい。  今回は「米国だけが戦争愛好国家として叩かれるのはなぜか」である。 ネット内ではイラク戦争などから米国叩きをする言論が蔓延している。 なるほど、アブグレイブの事件などを考えれば米国が叩かれる理由はわかる。あれは確実にジュネーブ条約違反だし、戦争法規的に見て、同じ軍人(自衛官だが)からも到底許される行為ではない。 (ただし派遣された米軍人全てがあのような非道な行為をしているかのような意見を述べることは明らかに間違っている。彼らの大半は自らの職務に誇りと自信を持った人物である。もしそうでないなら、あのような事件は闇から闇に葬られ、永久に日の目を見ることはなかっただろう。) だが、ここで私が疑問に思ったのは米国叩きを行う人のかなりの数が親中国の意見を述べているということである。今回はこの件についての勘違い、誤りを論述していく。  本稿における主要な参考資料は「平成16年版日本の防衛」、いわゆる防衛白書である。本資料は分量莫大かつかなり見にくいため、私のほうで勝手ながら本稿にかかわる部分を要約した。 なおWeb上に公開されている資料のアドレスは http://www.jda.go.jp/j/library/wp/2004/w2004_00.html (防衛白書の資料編のアドレス)である。疑問等をもたれた方、確認をしたい方はこちらで正規の文書を参照していただきたい。また書籍として税込み1200円で販売されており、書店で購入または図書館などで閲覧することができるはずである。 なお資料の関係上、参考にしたデータは第2次世界大戦後の紛争(1945以降)に限定されていることをご了承願いたい。  では本論に入る。 1 戦争・紛争の種別と定義及び要因  本項の内容は「防衛白書」によるものではない。「防衛白書」のデータ・記述に基づき、私個人の見解で体系的に分類・記述したものである。至らぬ点や間違いがあった場合、それは「防衛白書」に起因するものではなく私個人の責によるものである。  まず、紛争を大きく以下の分類に分ける。 (1)独立紛争(戦争)  植民地を持っていた旧宗主国からの植民地住民主体の独立紛争であり、主として旧宗主国軍と現地の勢力の争いである。状況によって周囲からの軍事援助等が存在する。  主な要因は、民族自決主義の活性化、旧宗主国支配からの独立意識の高揚であり、その遠因として不当な差別・搾取・貧富の格差の存在などがあげられる。 (なお旧東側の諸国などの分離・独立に関わるものについては本稿では内戦・反乱に分類した。) (2)内戦・反乱  主に国内の支配権を巡る主義主張の異なる勢力の争いであり、稀に他国の軍事勢力の援軍・介入を含む。また連邦制をとる複数の国家群からの国家の独立などもこの項に含めた。 発生の要因は主として国内の政治的対立、民族対立、宗教上の対立などがある。 (3)国境・領土紛争  2国または複数国間における一地方の帰属または海洋上の国境線等をを巡る争いであり、国境線・領土に関する当事国同士の主張の違いを平和裏に解決できなかった(あるいはする気がない)場合に発生する戦争である。 (4)その他  上記3種では分類できない、またはしにくい紛争。冷戦時の自由主義vs共産主義対立の代理紛争などを含む。例えば、米国によるドミノ理論対抗策としてのベトナム戦争介入、国連軍や多国籍軍による戦闘・戦争などがある。 (以下は防衛白書にあるデータの要約である) 2 アジア地域における紛争  総数28で内訳は以下のとおりである。 (1)独立紛争×2  インドネシア紛争、インドシナ紛争 (2)内戦・反乱×10  国共内戦、マラヤの反乱(英国vs共産ゲリラ)、マラヤの反乱(マラヤ連邦vs共産ゲリラ)、ラオス内戦、チベット反乱、カンボジア内戦、ティモール内戦、タジク紛争、カンボジア武力衝突、ジャム・カシミール地方における戦闘 (3)国境・領土を巡る紛争×15  第1次印パ紛争、朝鮮戦争、金門・馬祖砲撃、中印国境紛争、ゴア紛争、西イリアン紛争、マレーシア紛争(英国・マレーシアvsフィリピン)、マレーシア紛争(英国・マレーシアvsインドネシア)、第2次印パ紛争、中ソ国境紛争、第3次印パ紛争、西沙群島紛争、ベトナム・カンボジア紛争、中越紛争、南沙群島紛争 (4)その他×1  ベトナム戦争 3 中東・北アフリカ地域における紛争  総数24でその内訳は以下のとおりである。 (1)独立紛争×1  アルジェリア戦争 (2)内戦・反乱×10  キプロス紛争(英国政府vsキプロス戦士全国組織)、レバノン出兵(レバノン政府・米国vsレバノン反乱派)、イエメン内戦(イエメン政府・エジプトvsイエメン王党派)、キプロス内戦、西サハラ紛争(モロッコ・モーリタニア政府vsポリサリオ解放戦線)、アフガニスタン紛争(アフガニスタン政府・ソ連vs反政府・反ソ勢力)、レバノン内戦(キリスト教右派(イスラエル及びイラクが支援)vsイスラム教左派・アラブ平和維持軍)、スーダン内戦、アフガニスタン内戦(政府vs反政府勢力、1996.9以降はタリバンvs反タリバン勢力)、イエメン内戦(大統領派vs副大統領派) (3)国境・領土を巡る紛争×8  第1次中東戦争、第2次中東戦争、クウェート出兵(クウェート・英国vsイラク)、アルジェリア・モロッコ国境紛争、第3次中東戦争、第4次中東戦争、南北イエメン紛争、イラン・イラク戦争 (4)その他×5  キプロス紛争(キプロスvsトルコ)、レバノン侵攻(イスラエルvsPLO・シリア)、湾岸戦争、アフガニスタン軍事作戦、イラク軍事作戦  4 中部・南部アフリカ地域における紛争  総数21でその内訳は以下のとおりである。 (1)独立紛争×1  ナミビア独立紛争 (2)内戦・反乱×17  コンゴ動乱(政府vs分離派・ベルギー)、エチオピア内戦、南ローデシア紛争、ナイジェリア内戦、アンゴラ内戦(MPLAvsFNLA・UNITA)、モザンビーク内戦、ソマリア内戦、リベリア内戦、ルワンダ内戦、ザイール内戦、シエラレオネ紛争(軍事革命評議会vs西アフリカ諸国経済共同体平和維持軍)、コンゴ共和国内戦(政府軍vs前大統領派(アンゴラが支援))、ギニア・ビサオ内戦、コンゴ民主共和国内戦(政府(アンゴラ等が支援)vs反政府勢力(ルワンダ等が支援))、シエラレオネ内戦(西アフリカ諸国経済共同体平和維持軍vs革命統一路線)、アンゴラ内戦(UNITAvs政府軍)、コートジボワール内戦 (3)国境・領土を巡る紛争×3  チャド・リビア紛争、エチオピア・ソマリア紛争、エチオピア・エリトリア紛争 (4)その他×0 5 欧州地域における紛争  総数13でその内訳は以下のとおりである。 (1)独立紛争×0 (2)内戦・反乱×10  ギリシャ内戦(政府vsギリシャ人民解放軍)、ハンガリー動乱、ナゴルノ・カラバフ紛争(アゼルバイジャンvsアルメニア武装勢力)、ルーマニア政変、アブハジア紛争(アブハジア、スロベニア内戦、クロアチア内戦、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦、チェチェン紛争、コソボ紛争 (3)国境・領土を巡る紛争×0 (4)その他×3  ベルリン封鎖、チェコ事件、北アイルランド紛争 6 米州(南北アメリカ大陸及びその周辺)地域における紛争  総数11でその内訳は以下のとおりである。 (1)独立紛争×0 (2)内戦・反乱×6  グアテマラの反革命、キューバ革命、ベネズエラの反乱活動、ドミニカ共和国内乱、ニカラグア内戦、エルサルバドル内戦 (3)国境・領土を巡る紛争×1  フォークランド紛争 (4)その他×4  キューバ侵攻(キューバ政府vsキューバ亡命者)、キューバ危機(米国vsソ連・キューバ)、グレナダ派兵、パナマ派兵 7 総括  全世界で総計97の紛争が第2次世界大戦後に起こっており、その内訳は以下のとおりである。 (1)独立紛争×4 (2)内戦・反乱×53 (3)国境・領土を巡る紛争×27 (4)その他×13 (文字数制限のため続く)

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