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◎ 書籍 ◎


2005/01/13

『ぼっけえ、きょうてえ』  岩井志麻子  角川書店   ★★☆☆☆



  『ぼっけえ、きょうてえ』、『密告函』、『あまぞわい』、『依って件の如し』の短編集。


  『ぼっけえ、きょうてえ』は日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞受賞。岡山弁で語られる寝物語は、陰鬱で淫靡でどうしようもなく醜悪。とうのたったシコメの白粉がぼんやりと枕灯に照らされ、匂いのこもった遊郭の一部屋で「きょうてえ」身の上話を語る様子が、まざまざと目に浮かび匂い立つ。古典的な話だが、設定と方言の合いまった世界観は秀逸。


  その他。村社会の閉塞感は伝わるのだが、如何せん過剰過ぎる。「不幸なのは分かったからっ!」と言いたくなるほどに過剰。







2005/01/13

『魔羅節』  岩井志麻子  新潮文庫   ★☆☆☆☆



  短編集。


  「マラ節」だよ? あの"マラ"ですよ? だからなんだ、という話だが、"マラ"なんです。購入時に気付かなかった自分に腹が立つ。内容といえばタイトル通りのキワモノで過剰に不幸を演出し過ぎた感じがね、なんとも。キワモノならばキワモノらしく『姉飼い』位に突き抜けて欲しいなあ。久世光彦のあとがきは良かった。







2005/01/12

『地獄 -自選作品集-』  西岡兄妹   ★★★★☆



  舌足らずさんお勧め。


  絵本。まるで夢を見ているような気分になる。
それは決して心地の良い物ではなく、ドロドロの底なし沼に足を取られたような悪夢。

  細かいタッチで描かれる1コマにはしっかりと関連性のあるものが散りばめられ、突飛ともとれるストーリに繋がりと現実味を与える。これは、眠りに付くと展開される「夢」そのものでしかない。場面は飛び飛びだしカラーであったり白黒であったり、一見関係が無さそうなものでも、頭の中ではきちんとしたストーリーとして夢を成す。そういった夢の一部分を切り取り張り合わせた作品が『地獄』。


視覚・感覚的にオノーラ・キャリントンを思い浮かべれば近いかな、と。







2005/01/11

『獏の食べのこし』  中島らも    集英社文庫  ★★★★☆



  1979年生まれの私はバブルの恩恵も受けず、とうとうと流れる不況の時の下で育ち生活してきた。私たちは「無関心世代」ともいわれているらしいが、当世代の私はそれが至極普通の感覚なのである。
文献や映画等で目にする全共闘時代の若者やヒッピースタイルの若者は、それがマイノリティーであったとしても、ある種トランス状態にある異様な光景に見える。反体制のそれは、私の理解をゆうに超え畏怖の念さえ抱く。拒絶反応に近いかも知れない。
しかし、それとともに鮮烈な色を発するカルチャーに圧倒される。エネルギーの放出量がハンパない。
「無関心世代」といわれる私だからこそ対極にあるそれに恐れ戦きつつも憧れもしてしまうのだ。平伏する。


  さて、本題。ヒッピー臭が漂う中島らもの著作『獏の食べのこし』。タイトルが素晴らしい。こと悪夢に悩まされる私、「絶対食べ忘れられているに違いない」と被害妄想じみた狂気で購入。
内容はというと変態から死、恋愛、ビートルズ、酒、おおよそ人間の営みを網羅したエッセイ集。「あとがき」で獏の食べのこしとは眠ったときに見る夢に留まらず、幾つかの意味合いを含んでいることが解説されている。その文章ときたら、(個人的見解で申し訳ないのだが)タイトルをも超える素晴らしさで、「素晴らしい」としか言い表すことの出来ない私の語彙の少なさときたら。ほとほと呆れるし誰かに罵倒され踏みつけられたい。これは単に性癖なんでどうでも良いけれどもね、それでもぶりぶりに決まったヒッピーオヤジに拍手。





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