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エビザりのやさしくブンまわしblog

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2007.03.26
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カテゴリ:物語


また・・・揺れるのか」

 体力のルクが高い声を押し殺して聞いてくる。誠はその声に驚き啓二からルクヘと視線を移して『ゆれます』うなづいて答える。

 すぐさまトクが質問をしてくる。
 「溶岩とは何だ。何が大地を揺らしている。そしてあの山に住んでいる悪魔どもはどうなる」
 今度は誠が「えっ」と驚き、啓二が欠伸をやめ、勇太が固まりから解けて来た。
 誠が言葉をもらす。
 「あくまって、悪魔のことかな」

 溶け出した勇太は誠を見上げ、その流れスンダ達へと目を向ける。そして、
 「アクマッってなに・・・。あの山にいるの、悪魔って、なに、魔法でも使うの」
 勇太が口を開いて、聞きたいこと興味のわいたこと、矢継ぎ早に聞いてくる。その顔からは固さが消え、好奇心の塊へと変化させて目を輝かせていた。

 「怖い?こわかと?大きいとかな、それとも小さいとかいな、牙とかはあるとかいな・・・・。」
 急にうるさくなる子供を静かにさせるため、
 「その話は後で話して聞かせましょう」
 太く逞しい声で、族長スンダが話の方向を変える。
 「それよりも当面はジシンの事だ。溶岩の事だ。この先地震がきてその溶岩が・・くるとして・・・。溶岩とはなんだ?・・・とにかく村がどうなるのか何をすればいいのか、それらを教えてもらいたい。どうか、知っているならば教えてもらいたい」

 スンダは勇太たちを見回し、
 「悪魔どもの事に興味を持ってもらえるのは心強いが、あの山からここまで急いでも三日ほど。どうか我々が今からどうすればよいのか、何をすればよいのか、知っているならば教えてもらいたい。このとおりだ」
 スンダが頭を下げる。

 それからしばらく、啓二と誠は地震と溶岩に関して知っていることを一生懸命に話してみた。だが、所詮十年そこら生きてきた知識では、しっかりとした説明は無理だった。理解してもらうには浅すぎる人生経験だった。
 
 まだ、なにかが地中にいると想っている者もいるし、まったく理解できていない者もいた。
 「要するにドロドロに溶けた岩があの山の中にあって・・・で、?」
 「・・えー・・・」
 しばらく同じ説明を何度も繰り返すだけで時間が過ぎていった。それでも知っていることをすべて話し、啓二と誠が、これから起こるであろうことを、知っているだけ分かることだけ全てを話して聞かせた。

 「後は・・よく分からないけど・・・知っていることはこれだけです」
 誠の言葉にスンダが力なくつぶやく、
 「ここにも流れてくるのか。その溶岩とやらに・・・焼き尽くされると」
 族長スンダの脚は震えていた。震える足を押さえつけて立ち上がり、あたりをふらふらと歩き回り何かを考え込んでいた。しばらく歩く音だけが皆の耳に聞こえてきていた。
 トクとルクが、その間も小声で偉大な先祖の巨石の神殿などの事を聞いてきていたが、石の建物がどうなるかは、子供の頭では分からなかった。

 皆が静まり沈黙が続いてしばらく、トクが人を呼ぶ。
 「ルカ、ルカ、こちらにおいで」
 現れたのは勇太に治療してくれた女の子だった。ルカと呼ばれるその女の子は、勇太たちの前まで来ると膝を軽く曲げ「よろしく」と、かわいらしく挨拶をする。

 勇太たちが慌てて頭を下げると、あの甲高い声が聞こえてくる。
 「ルカ、この子たちを」ルクがルカと呼ばれる女の子に言うと、勇太たちのほうに顔を向けて、
 「この子がこれから君達の世話をする。この村にいる間の生活やしきたりなどはこの娘の言うことを守るように」
 そういうとトク、ルク、族長スンダは部屋から出て行った。それを見送り終わるとルカは、
 「ヨロシクね」と、三人に向かいニコリと笑う。
 「しきたりと言っても、これといってないから。取れあえずお腹空いたでしょ。あちらについてきて」

 ルカに言われるままについて歩き出すと、勇太がついてきていないのに誠が気づいた。振り向き勇太を見ると、口を開けたままルカの後ろ姿に見惚れているところだった。

 「おい勇太。この女の子はお前の好みの女のこたい。ほら、お前のクラスの好いとう子。久美ちゃんて言うたかいな、その久美ちゃんにそっくりな娘たい」
 啓二がニヤニヤと冷やかしながら言うと『違うよ。あんな女好いとらんばい』と、あわてて否定してみる。啓二は楽しそうに言葉をつづけて、
 「なんか・・・そうなんだ。久美ちゃんは勇太のことぱ好いとうて、言いよったぞ」とカマをかける。

 勇太はパッと啓二を見上げて『ほんとう』嬉しそうに聞いてくる。
 「ガッハハハ」迷いなく笑う啓二。
 「うそたい。久美ちゃんとしゃべったことはあまりなかぞ。ハッハハハ」
 楽しそうに笑う啓二を睨みつけ、誠に何かを言ってもらおうと誠へと顔を向けてみる。
 「ハッハハハハッ」誠は勇太のふくれっ面と目が会うと心置きなく笑い始めた。勇太は顔をそらして壁を向き、
 「笑えばよかったい」壁に文句を言うしかなかった。
 ほの暗い岩屋からは、より、楽しそうな笑いが満ち始めていた。

 食事は果物と味のない薄っぺらなパン。そして、味の薄いスープが出された。味はともかく、これだけの災害時にこれだけのものが出てくるということは、普段からの備えをしっかりしているのだろう。

 啓二と誠は十代の始まりの歳にピッタリの食べっぷりを見せている。それに比べて勇太は口を開けたまま締りのない顔をして一点をみつめていた。その視線の先にはルカがいる。そのルカを見つめている勇太を見つめ、ニヤリと笑うのは啓二だった。

 「おい」肘で突きながら、啓二が誠に話しかける。
 「勇太をみろよ。あれはルカちゃんにまいっとうぜ」
 「ククッ。確かに、みっともなく見とれとうな」
 誠も楽しそうにこたえている。
 「ちょっとからかってみようぜ」啓二の楽しそうな誘いに、
 「でも、もっと気になる話ば聞こうぜ」
 「?」啓二は口いっぱいに詰め込みながら「あっ。悪魔の事ね」
 二人はうなづき、一緒に食事をしているルカに顔を向け、
 「ねぇ、ルカちゃん」誠が声をかける。

 ルカは慌てることもなく、食べものを口にはこびながら誠へ視線を向ける。
 「えーと、僕達の名前を教えてなかったよね。僕が誠でこいつが啓二」
 誠は自分と啓二を指差し自己紹介をする。
 「で、この口を開けてボーとしている締りのないマヌケ顔が勇太」 
 勇太が驚き口を閉じて誠に向く。誠は知らんふりで話をつづけ、
 「で、いきなりでアレだけど・・・」

 ちらりと勇太を見ると唇をとがらせ、誠を睨んでいた。それにルカが気づいてニコリと笑い。
 「なに」誠に聞き返す。誠は少し真剣な顔をつくり、
 「アクマの事なんだけど、アクマって悪魔の事かな・・・。そのことで色々聞きたいんだけど・・魔法とか使うの」

 ルカは少し驚き、そして微笑んで、
 「私は見たことがないから・・・。少しなら話せるけど」
 笑顔を絶やさず答えてくる。そして言いにくそうに、
 「あの、・・・やはり異国の方だから・・・少し言葉が聞き取りにくくて」

 誠と啓二は顔を見合わせ、
 「啓二、お前の訛りと方言がきついちゃろう」誠が笑いながら啓二に言うと、
 「話しようとはお前やろうがぁー、わが言葉が訛っとうちゃろう」
 楽しげに指摘しあう。二人のやり取りにルカがケラケラと笑い、三人が打ち解けあう。残る一人はにやけ顔で口を開けたままルカを見つめていた。

 悪魔はあの山に住んでいるの。ここから何日も歩いたところよ」
 ルカは噴火した山を指差す。山からは黒い煙が休みなく上がり、まるで雲のようにゆっくりと北西へ流れていた。

 「姿はトカゲみたいだって大人たちは言ってるけど、私は子供だから見たことがないし・・・。森でばったり会って大変だった。何て話は聞くけど・・・。」
 ルカはそこで言葉を切った。誠は話をつなげるように、
 「何で大変かと・・ちがった。・・・えーっと、なぜ大変なの」言葉の訛りと方言を取りながら話す誠。
 「襲ってくるらしいの。狩でつかまえた獲物を横取りされるって。そっとついて来て狩がうまくいったとき、油断してたら、それを横取りされるって」
 「襲ってくるの」我にかえった勇太が聞いてくる。
 「うん。そういってた。獲物がないときは人も襲うんだって。ルクおじさんが詳しいはちょうど来たから聞いてみたら」

 ルカは立ち上がりルクへと走りより、勇太たちの前に体力のルクを連れてきた。ルカが誠たちの質問をルクに話して聞かせると、しばらく考え込んでから、甲高い声で、
 「これは、あまり子供達には聞かせないようにしていたんだが、君達には話してもいいだろう。それじゃ、私が出会ったときの話を聞かせるよ」
 ルクはその場に座り込み、三人の顔とルカを見て、話を始めた。
 「私は何度か出くわしたが、そのなかでも奴らの性質が分かる話をしよう・・・・。」

 壁画を見つめながら、勇太がつぶやく、
 「怖いな・・悪魔は・・魔法とかつかえるのかいな」
 勇太が啓二の話を中断させて問いかけてくる。
 「その悪魔じゃないよ。・・こわくて・・嫌な奴のことさ。まぁ・・なにかすごい能力はあるかもな・・。」

 啓二は説明して話の続きをしようとすると、
 「僕達も悪魔にであったりするとかいな・・・・。」不安げに啓二を見上げて聞いてくる。
 「まあまあ、これから解ってくるとたい。まぁ主役は悪魔に会うものだけどな」
 不安な顔でうつむく勇太。ポンと勇太の方をたたいて誠が、
 「英雄とか勇者とかは・・それからは・・・さけられんったいね・・・。がんばれ勇者」
 「・・うん・・」怖い中、勇者といわれて思わずうなづく勇太。
 しばらく考え込み、勇者勇太は覚悟を決めたようにうなづいて、啓二を見上げて話の続きを待った。


 





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最終更新日  2007.03.26 22:03:25
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