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セルティック中村に続けて、ボルトン中田も英国で大絶賛を受けた。 プレミアリーグ、スコットランドリーグとリーグは違っても、同じ英国。 イタリア経由のメイド・イン・ジャパンが、同じような大絶賛を受けるのだから、よほど日本人にイタリアの水は合わなかったらしい。セルティック(スコットランド2位)も、ボルトン(イングランド5位)も弱いチームでない。それがレッジーナ、フィオレンティーナとイタリア下位チームから移ってくるだけで、こんな状況なのだから、もう相性の問題と言わざる終えない。 なにが違ったのだろうと、サッカー好きなら興味がわくところだ。 プレイスタイルの差なのか、国民性なのか。 うーん、と考え始めると、どうもミッドフィルダーに求められる「特性」のような気がして仕方がない。 イタリアのサッカーはカテナチオと呼ばれる守備重視のサッカーが主流だ。 「カンヌキを掛ける」 という意味のこの言葉は、文字通りガッチリとした守りを重視するサッカーを見事に表していて、ブラジルやスペイン、イングランド、そして日本にもあまり見ることの出来ない特異なサッカーなのである。 日本で守備の堅いチームというと、今ならガンバ大阪なのかもしれないが、得点と失点をよく見てみると、このチームは失点より得点に特徴のあるチームであることが分かる。0-0でも賞賛されるイタリアサッカーと違って、日本のサッカーは「点が入った方がおもしろい」主義でさらにジーコ思想に染まったのか、ついこの間、日本代表の試合で5-4の野球でも乱打戦と言われそうな派手なゲームを行ってようやく、新聞各紙が、 「これはいいのか?」 とようやっと疑問を呈したレベルだ。 4点失った守備陣はイタリアならば銃殺刑なのだろうが、日本では「よいのか?」で終わるのである。いや、純粋に言えば、守備に限ればだめに決まっている。攻撃も5点取ったのは、果たして実力なのか、相手が飽きたのか、と疑問まで浮かんでくる。 そんな守備重視のイタリアにおいて、ミッドフィルダーに求められる役割は、日本での(もしくは他国での)それと大幅に違ってくる。 イタリアにおいて攻撃的ミッドフィルダーとは、いわゆるファンタティスタか、サイドハーフ、もしくはシャドーアタッカーを指す。トッティーはほとんどFW、ネドヴェドはサイド、フィーゴもサイド、カカーになるとようやっとトップ下といわれる日本でもおなじみの名称が当てはまりそうになるが、ちょっとレベルが違う性か、ファンタティスタともセカンドアタッカーとも言われる。 これほどまでもイタリアの攻撃的ミッドフィルダーが特異なのは、イタリアサッカーがカテナチオであるからだ。 守備的サッカーと言われるとどこまで想像するか分からないが、イタリアにおいてはフィールドプレイヤー10人中7人が守備陣なのである。日本であれば3-5-2ならば5人が守備陣、3-4-3ならば4人が守備陣が通例だ。日本代表ならディフェンダー3人とボランチが2人が守備陣、ということは半分は攻撃陣であることが分かる。 しかし、翻って攻撃陣が3人の場合はどうであろう。 「攻撃3人ってことは、3トップか?」 とびびってしまうが、この中には攻撃的ミッドフィルダーも入っている。 なんとも特殊な人々であるかが分かるであろう。 3機編隊で出撃する零戦のようなものだ。 まさに「敵陣に滑空」してゆかなければならない立場なのである。 この特殊性を加味すると、攻撃的ミッドフィルダーに課せられる役割が容易に分かってくる。 ちょっと足止まって敵陣滑空するミッドフィルダーになってみるといい。想像が容易でないかもしれないが、激しい弾幕にさらされ、その中でも敵基地に爆弾を落とさなければならないような気がする。 早く動き、的確に爆弾を落とす。 援護なんて期待できない。もちろん自分が援護する立場でもない。 司令官はいてもおかしくないが、ときどき短く怒鳴るだけの、本当の小隊長であろう。ナポレオンではないし、ましてや皇帝ではない。野性的な感がしてきただろうか。ドッグファイターに必要なのは、インテリジェンスでも繊細なボールタッチでもない。ただ、弾幕をかいくぐり、爆弾を落とす能力なのだ。 さてこのように述べると、イタリアのインテリジェンスあるプレイヤーはどうしているのか、という疑問がわく。これには明快な解がある。よっぽどのテクニシャンであればファンタジスタに、そしてキックが上手いだけならばサイドハーフになるのである。もしくはボランチに下がる。 そういえば中田もサイドやボランチを行き来して嫌がっていたなあ、と思い出すのだが、今年のインテルやユベントスを見ても、イタリアでは典型的な4-4-2を採用しており、この際、攻撃的なミッドフィルダーというのはサイドハーフ以外存在しなくなる。ネドヴェド、フィーゴ、スタンコビッチ、カモネラージがここに入る。 サイドハーフはパスを妨害されないよう、サイドラインを背にして、後ろから攻撃されるのを避ける。これがおもしろくないというのはよく分かるのだが、7人の守備陣に追い回される3人(もしくは4人)というのは、現実的にかなり厳しい状況であることは容易に想像できる。 肉弾戦がだめなら、とりあえずそれを避ける方法を考えよ。 これがイタリアサッカーなのだ。 英国から届く、中田・中村の映像をちらりと見ながら、なんとも優雅なプレイだと、わたしも感心する。イギリスが劣ってるのでも、イタリアが劣っているのでもないが、サッカーというスポーツが持っているプレイスタイルの多様性に少し驚く。 驚いてみて、昔、全く別の場所で感じた驚きに近いことに気づく。 お茶という植物の葉が、その精製法によって、緑茶・紅茶・烏龍茶と多種多様なお茶になることに驚いたことがある。 単純な類推だが、 「日本産の明石の鯛を、イタリアに空輸しエスプレッソに合わせるにはどうしたらいいか」 こう書いてみると明白であって、 「そりゃー、料理人によるし、組み合わせにもよるだろ! ていうか、なんでイタリアのエスプレッソなんだ?」 すなおな疑問である。 どうやら、イングリッシュ・ティーに日本の活きのいいファンタジスタたちはけっこう合うようである。あんまり放送や情報がなくて残念なのだが、全ヨーロッパの舞台に万全の体制で望む、イギリス仕立てのフルコースを見てみたいものである。 言うまでもないけれど、チャンピオンズリーグへの出場だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 29, 2005 02:16:41 AM
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