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hikaliの部屋

December 12, 2006
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 特許関連の仕事に就いている関係上、また物語に興味を持っている関係上、
「物語に関する特許ってどんなのがあるんだろう?」
 というのは当然の興味だ。
 電子図書館へ行って、初心者用検索におもむろに「物語」と入力するとでるわでるわ300件以上。一時期、片っ端から公開公報を読んでいた時期があったので、実はこれは全部読んでいる。
 実際、どんな人が出願しているのだろうか?
 これは大きく分けて、
「ゲーム系会社」「素人」そしてもう一つが「パチンコ・パチスロ機メーカー」である。
 この中で群を抜いて出願数が多いのがパチンコメーカー。
 つまりあの液晶表示部に物語性を持たせようと言う出願が多いのだ。
 興味深いが純技術という感じ。
 しかし、この数百件の特許出願の中に、わたしの度肝を抜かせた出願がある。
 発明者を見ると、かなりいい筋。
(これ、昔、わたしもにたようなの考えたことがあるんだよね・・・)
 と思いつつ、しかし、この技術にはシナリオという概念が貧弱すぎる、と負け惜しみのように当時は思った。

 先日、ふと、物語技術の先行文献調査をしようと思い立った。
 わたしが、高い位置に置いて目標としている、ゲームブックの実装案のひとつ(たぶん、ここまで行くのに半年以上かかるだろう)に、特許侵害に該当する可能性がある技術が盛り込まれている。
 説明が複雑なので解説は避けるが、パチスロで使用されている技術にインスパイアされた概念が盛り込まれているのだ。
 こうなると、特許系の仕事では先行文献調査という日常的な業務で解決するしかない。
 あらゆる検索手段を使って、同じ技術がないかを調査する。
 無駄に、マンションの壁の構造やら、発電器の構造などに詳しくなるのだが(<あー、いや仕事です)、特許系であれば避けて通れない日常的なスキルである。
 終業間際に、やろうと決めて、ふと思い出す。
(そういえば、あのすごい出願どうなってたっけ?)
 調べると、なんと審査中。
 まあ、要するに、特許にするかどうかを今調べている最中なのだ。
 玄人的な視点で言えば、
「おー、審査請求したんか・・・。結構本気だな、こいつ」
 ちなみに特許系では、審査請求が一番金がかかる(20万ぐらい)。

 実は、以前より、おもしろい特許公報を紹介して、解説しようと言う企画を何度も考えていた。
 なんと言っても知性の宝庫であるし、最近の技術者が特許公報を読まない傾向にある事を嘆かわしいと思っていたし、そのおもしろさに気づけば、特許という素晴らしい制度の啓蒙にも繋がると思っていたからだ。
 公報を読むことは、一線級の技術者がなにを考えているかを知り、刺激を受けることと全くイコールである。
 わたしは、パチスロメーカの技術者の設計思想を、公報で学ぶことが出来る。
 もし特許になっていれば、その発展系の出願をして、改良技術を固めて押さえ、相手がにっちもさっちも行かなくなったところでクロスライセンス契約、みたいな戦略的な手段で上手く交渉することも出る(この辺はまさに知財ウォーズ)。
 技術開発は協業であって、お互いの権利は契約で上手く調整する。
 発明者は、参考にした発明者を尊敬する。
 知財はこれがなくなったら、終わりである。
 と話が無駄に長くなったが、公報の紹介&解説をはじめてみよう。

 特開2001-129261 データベースの更新方法、テキスト通信システム及び記憶媒体

 発明者は、ゲームライターとして著名な、渡辺浩弐さん。
 かなりいい筋である。
 特許・実用新案公報DBで上の番号(種別は特許公開:A)を入力するか、初心者用検索(特許・実用新案を検索する)で発明者である渡辺さんの名前を入力すると簡単に出てくる。直リンができない仕様になっているので、各自検索してほしい。

 ■【参考】特許電子図書館
 http://www.ipdl.ncipi.go.jp/homepg.ipdl

 では、公報の準備はよいであろうか。解説をはじめていこう。

 ■1ページ目の読み方

 まずPDFの1ページ目を見よう。
 なんだかよくわけのわからない言葉がたくさん並んでいて、右下にこれまた意味不明の図、左下に要約と記された意味不明の文章が書いてある。
 いきなり意味がわからない。
 大丈夫。これは完全に特許業界の言葉で書いてあるから意味がわからないのであって、言わんとしていることは、ゲームに興味がある人なら「なるほど!」とひざを叩いて飛び上がりたくなる内容だ。
 課題のところに、
「リアリティにあふれて飽きの来ないストーリー展開が可能なデータベースを提供する。」
 と書いてある。
 これがこの発明の目指すところであるのだ。
 リアリティにあふれて、飽きの来ないストーリー展開?
 なにいってんだこいつなどと馬鹿にしてはいけない。特許出願はするだけでも何十万ものお金がかかる。少なくとも本人にとっては、それだけの財産をつぎ込んでも守りたい独自技術であるのだ。
 しかも、書いているのは渡辺さんだ(正確には弁理士が書いているのだが、発明をしたのは渡辺さん)。もっと姿勢を正して、果たしてこのゲームの賢人はどのようなゲーム技術を我々に開示してくださっているのかを、注意深く見ようではないか。

 ■【特許請求の範囲】は飛ばす

 2ページ目には【特許請求の範囲】という記載が並んでいて、早速、初心者には意味不明な項目が並ぶ。
 ここは特許的には重要なのだが、実は素人には意味のない部分。
 もし、ここが重要になる局面に突入したのなら、残念なことにここは専門家でないと読めないと思ったほうがよい。大企業にいるなら知財部の人間、さいわいにも知り合いに弁理士がいるなら、お金を払って相談しよう。ちなみにわたしはまだそのレベルにないので、残念なことに太刀打ちできない。

 ■【発明の属する技術分野】【従来の技術】【発明が解決しようとする課題】

 2ページ目の末尾あたりから本題に入ってくる。
 【発明の属する技術分野】【従来の技術】は読んでのとおり。
 なるほどと流そう。
 ちなみに【従来の技術】はその発明者がどれだけ見識があるかを端的に示したパートである。グーグルの明細書を読むと、
「どんだけ勉強してるんだよ!!!」
 と思うぐらい、前提からして高度すぎて、慄いてしまうのだが、まあそこまで深い思考をしている特許公報なんてまれなので、ふんふんと読めばよい。

 【発明が解決しようとする課題】に入ると、突然文章が問題提起を始め、熱を帯び、知性のスパークが煌きはじめる。
 多くの技術文献においてはこのパートは現場でどのような問題が発生しているかの報告書に近い。それを解決するから特許になりうる。現場を経験していない人には現場の問題意識を的確につかむ、現場感がむんむんと伝わってくる部分であろう。
 渡辺さんの公報を見よう。
 ポイントは【0004】の「展開のバラエティが限られてしまい」だ。
 これをどう渡辺さんは解決しようとしているのか。
 興味がわいてきたのではないだろうか。

 ■【課題を解決するための手段】はスルーが基本

 さて、【課題を解決するための手段】と書いてある、なんか一見すると非常に重要そうな部分。これはプロじゃなければスルーが基本。特許公報というのは一番重要な部分は基本的に難解で、素人には理解困難というのが普通なのだ。
 これは単純に、あらゆる可能性を考慮して書かれているから。
 説明するために書かれているのではなく、権利範囲を確定させるために書かれているからだ。
 わかりやすさなんてどうでもいい。
 裁判で争った際に勝てるように書いている部分なのだ。
 特許上では非常に重要だ。
 でも素人にはなんら示唆を与えない。
 裁判で争う気がないならスルーしよう。

 ■【発明の実施の形態】からが本題

 さて、やっと本題に入って来た。
 ここから延々22ページに渡って記載されている内容が、渡辺さんが実施したい内容だ。
 図面も豊富で、解説も具体的かつ例示で豊かに彩られている。
 【0022】に具体的な例示があって非常にわかりやすい。どうやら「男」と「女」がメールを介して進行するゲームのようだ。メールが送信されてきて、それに対する返信が選択肢として表示される。対話形式のゲームブックというところか。
 【0026】に核心に迫る記述がある。
 「プレイヤーが自由に文字を入力できるフリーメール入力のための選択肢」
 鋭い人は多分戦慄覚え始めているだろうが、これは後に出てくるので、とりあえずなるほどと思っておこう。
 【0036】までが骨子である。
 【0051】までが具体的な実装システム。javaを念頭に置いているように見える。
 【0052】からがフリーワードに対する処理法。
 まずエラー時の処理が記載され、これによると相手にスルーされ別の話題に飛ばされるところが、芸が細かく笑えてしまう。
 【0057】からが、言語解析エンジンによる判定部。
 判定に通るとそのフリーワードにNo.が振られ、データベースに登録される。この辺の処理が取りあえず【0073】までに記載される。ユーザの入力ワードを次々とデータベースに登録して巨大化していく、自動ゲームブック生成装置であることがわかる。
 続いて【0087】までが、選択肢の少ない番号にフリーワード欄を生じさせるという処理。芸が細かい。
 わたしはこの辺まで読み、そのセンスの凄まじさに戦慄を覚えた。

 ■発明には改良の余地が必ずある

 さてここで、そのフリーワードに対する返信はどう選ぶかが問題になるのは賢明な読者諸氏にも自明なところだろう。
 【0091】から【0093】までで、そのフリーワードに近い登録済み文章を探し見つければ、その選択肢から選択とある。ここはちょっとがくっとくる。これでは堂々巡りになってしまう。しかもこれまでの会話がまったく考慮されていない。
「改良点だ! おれに任せろ!」
 と思った人は発明者の素質がある。
 【0096】までで、似た文章がないときはエラーと説明される。
 これはがっかりだ。
 続きがあるようだが、これは具体的な態様を説明しているに過ぎない。

 さて、あなたはここまで読んでどう思うだろう。
 渡辺さんの発明は実装してもウケないよ、と思うだろうか。
 それとも、これは画期的な基礎発明だと思うだろうか。
 特許になってしまったら、専門家に相談して迂回する方法を模索するだろうか。

 なんか、知財系の勉強をしていると、審判をはさんだ、定石交渉術ばかりを習う。
 米国のおれの権利だ、裁判だ! というみっともない事件ばかりが目に付くが、毎年何十万件も発生する新たな独占権はほとんど、法律をよく理解した人々の交渉で丸く収まっていく。
「いや、わざわざ大金払って、最高裁まで争ってくれると、勉強する方には助かりますね」
 と勉強している人々は言う。
 もちろん、払うお金を小さくしようとするのが人情であるが、もしあなたが権利者であることを経験したことがあるのならば、何の許可もなく自分の知財を使って大儲けしている人があれば、無限に腹が立つことは想像しやすいだろう。
 迂回だなんて、あからさまな敵対行為だ。
 大企業相手ならよいだろうが、個人相手にやるべきではないことは想像力を働かせればよくわかる。
 優秀な発明者を怒らせれば、二度と交渉の機会は訪れない。

 権利者は大切に。

(やっと、一番重かったネタが書きあがった・・・)






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Last updated  December 12, 2006 08:29:08 PM
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