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(唐突に書きたくなった。素案レベルと思ってもらえると嬉しい) 物語解析という物語解析技術の解説を書いていて、この日記からもリンクがある。 これはその解説の中で、実はこれまで一度も書いたことがないと思うが、2時間という時間の物語に適した構成になっている。 物語解析はシェイクスピアの物語構成の分析が基礎でこれが2時間スケール。幸いにも現代では映画のストーリー、文庫本一冊がこの規格で作られていて、これに適用するに適している。 しかし、どうだろう。 この世の中にある物語がすべてこの規格で作られているわけではなく、コミックや、ゲーム、シリーズモノの物語は、これを遥かに超える時間のスケールで作る必要がある。 これはどうしたらよいのだろう。 実際には物語解析の長編用の適用になるのだが、これまで一切書いてこなかった、新しい技術体系を使わなければならなくなる。 「未開示情報」という概念だ。 この言葉は誤解を招く。 非常に正確な表現に書き換えれば、伏せられたカードのオープンのコントロールと多層的な未開示情報の配置という言葉になる。 残念ながらこのわたしが今、書こうとしている技術体系についての絶対的なお手本はない。 シェイクスピアが長編作家でないからだ。 次席はディケンズだろうが、代表作デイビッド・コパーフィールドを見ても不完全といわざる終えず、これが文学史の10大小説であることを考えれば、未だに絶対の手本はないと言って過言はないだろう。 私感では、長編物語は歴史物語に敵わない。伝記でもよい。 三国志に勝る、完全に創作した長編物語はない。 歴史は作者が創造したものではないので、人の子に長編は作ってないことになる。 実のところ、わたしも真正面から分析をした長編は少なく、データを示して構造を説明するには非常に時間が掛かる。また、わたし自身の実施も少なく、わたしが直感的に感じている仮説の十分な検証も出来てないし、とりあえずわたしの研究対象から外れているので、たぶん、2、3年は分析に取り掛かることも必要としていないので、ないだろう。 しかし、困ったことに、その間にも高いポテンシャルの作品が、幼稚ながらくたのようなチープなミスを犯し続けている。 研究者も皆無である。 誰かが何かを言わなければならない。 少なくとも、ここを漁るといいよといわなければ、ならない。 大丈夫。 この説明は簡単だ。 わたしたちは、今ちょうど、歴史をたった一人の人間が作っているのを見ている。 ちょうどよかったよ、サンクス、スティーブ・ジョブス。 サンクス、ビル・ゲイツ。 サンクス、ラリーとサーゲイ。 実は、長編物語はそのまま企業の成長戦略と同じ。 つまり、どう歴史を作るかと、まったくイコールなのだ。 迷ったら、企業の成長戦略を見ればいい。 どうそれがコントロールされているかを見ればいい。 実物が目の前にあるというのは非常に助かる。 ■謎の多層的な配置 トランプの神経衰弱で52枚のカードが伏されているテーブルを想像して見てほしい。 物語の語り手はペースをコントロールしながらこれを開示して行き、それを見ている観客は次第に物語の全容が見えてくる。 これが未開示情報のコントロールの概念の大雑把な説明。 どのような絵を伏せておくかは語り手が決められ、めくる順もコントロールしやすい。 一枚の絵を構成しているカードをめくっていくのだから、最終的な筋は必ず通るはずである。もちろん、語り手はどこにどのカードを伏せてあるかを知っているので、観客がもっとも意外性を感じ、物語にのめりこみそうな順で開けばよい。 いきなり開始5分で10枚めくってもいい。 最後のどんでん返しで、15枚ぐらいめくってもよい。 しかし、どうだろう? 全40巻もあるような物語で、伏せられたカードが52枚では少なすぎなくないか? この単層的な謎構成で致命的なミスを繰り返す書き手が非常に多い。 名前を挙げるとファンに猛攻撃を受けそうだから言わないが、一枚一枚のカードをめくるのをちんたらしたり、52枚の各カードを十等分して520枚あることにしたりするみみっちいケースが多い。 めくるなら一気に5枚ぐらいめくらなければならない。 しかし、それに耐えられる物語を作れる人物は少ない。 ここで、ちょっと戻ってみよう。 スティーブ・ジョブスはやっている。 この問題にたいして、幸いにも分かりやすい解説をしている本がある。 TRPGのクトゥルフの呼び声のルールブックがそれで、その中にこのような文章がある。 謎はたまねぎの皮のようにしなければならない。 謎が解けてその皮が剥けると、次の皮が現れるようにする。 クトゥルフの呼び声のシナリオの中でも最高傑作と呼ばれるニャルラトテップの仮面はこの構成をしている。このシナリオは、全世界5都市をまたにかける構成になっており、これがそのまま皮に当たる。 ニューヨークでの謎が解けると、実はそれがロンドンの組織に繋がっていることが分かる。ニューヨークでのカードは全部開くのだが、実はその先にロンドンに伏せられたカードがあるみたいな。 これは分かりやすい。 謎が多層的に存在しているのだ。 そして、非常に重要な技術的解決が実はここにはある。 ニャルラトテップの仮面は製品として出されたシナリオなので完成した状態で売っている。しかし、実際、物語を作る際には、重要なシリーズ通しての謎になる部分はとうぜん作っておくが、「3枚も先の皮まで詳細に考えておく必要はない」ということ。 皮が剥けてから考えればいいのである。 長期的にビジョンは持っておく、中期的な計画は策定しておく、短期的には何を実行するかを、つまり具体的な物語を作っておくのはこの部分だけでいいのだ。 その先は皮が剥けて状況が変化してから考える。 ゲームのように完成品を納品しなければならないものは大変だが、コミックや、アニメ、長編小説はこのスタンスでよい。 つまり、会社の経営と同じでよいのである。 そうそう、進捗の状況を見ながら、戦略は作り直せばいいのだ。 ■三歩先で準備していく感覚 この視点に立って、スティーブ・ジョブスがどのような物語をAppleという会社で描こうとしているのだろう。 長期的にはソニーのような会社になることらしい。 中期的にはデジタルエンターテイメント分野への革新的な新規参入(しかも次々と)。 短期的にはiPhoneの販売戦略、iPodの次世代商品などなどだろう。 しかし、現時点で、長期的にどんな製品が出るかをスティーブ・ジョブスが答えることは出来ないことは受けあいだ。10年後、どんな新技術が出ているかは、誰にも想像が出来ない。どんなガレージ企業が市場を制覇しているか分からない。マイクロソフトとグーグルがどうなるかも分からない。 ぼんやりとは分かる。 長期的な視点で緻密な計画を立てることはほとんど意味がないことは誰にでも分かる。 では、どうするのか。 これも分かりやすい。 三年後の製品化に向かって今から開発を開始するのである。予算を組むのである。 その間にマイルストーンがある。 どんなに先見性のある企業であっても、現実に先行できるのは三年ぐらいであろう。 この三年の情報格差を使って、あたかも物語が無限に続いているように見せるのである。 あなたの目の前に52枚のカードが伏せられている。 しかし、その先に3年分の伏せられたカードがある。 それ以上はない。 スティーブ・ジョブスは、その156枚のカードを絶妙のタイミングめくる。 完璧なプレゼンテーションをして、今年分のカードの20枚ぐらいを一気にめくる。 1層奥のものも5枚、2層奥のものを2枚めくる。 ユーザが感激し、商品が売れている間に、次の52枚を作り始める。 観客は、ジョブス・デジタル・シネマで永遠に続くように感じるAppleのデジタル革命の物語を、ぽかんと見続ける。 この感覚だ。 そして、その足跡が歴史となる。 ■長編物語はステップを踏んでいく感覚で 朝の連続ドラマ小説や大河ドラマ(これは歴史物語だが)を見ていて、上手い作品は、このステップの踏み方が上手い。 好評だった純情きらりは、少女時代、上京時代、味噌屋の若女将時代、戦争時代、戦後時代と、大体一ヶ月ごとに(6時間ごとぐらい?)ヒロインの環境をがらっと変らせている。そのために人物関係等に変化が生まれ、物語展開が変化する。 つぎつぎとやってくる厄介ごとが伏せられたカードで、それを解決することでカードが開かれる(未開示情報という言葉が結構微妙なのである、実際のところは)。 環境が変ると降ってくる厄介ごとも、解決方法もがらりと変る。 実はこれが、あれだけ長期に渡って物語を続けられる秘密なのだ。 これを意識すると、大分改善する物語が結構あるように思う。 長々書いた。 物語解析に比べ、むず痒くなるような雲みたいな表現で始終しているのは、ひとえにわたしの研究不足。かちっとしたことを言えるだけのデータがないのです。 エウレカ7を見ながら、丁寧に作ってるなあと思いつつ、これはやばいなぁ、言わねば、という感じ。29話を17話あたりでぶちかますぐらいに豪快にカードをめくるとよかったのに。 え? カードがなくなる? 豪快に開示している間に、気付いたら次の層が出来てるよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 19, 2007 01:13:06 AM
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