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輝きの風景 Ocean View

輝きの風景 Ocean View

第十六部 「再会」

「ここが最後の部屋だな。」
フラットが言った。
僕は相変わらず息切れしたままなのに、フラットなんて軽くジョギングをしたみたいだ。さっきから、階段を上りに上って、最上階の最後の部屋の前まで来たのだ。それまでは、かなりの数との魔術で作られた操り人形の「ガロ」と、戦いっぱなしだった。
しかし、フラットはほぼ一撃で、僕も一撃ではなかったがやっとのことで、追いつくことはできた。けれどもそのおかげでデータサブジェクトがかなり強化されている気がする。リズムや、魔術の番号などもわかってきた。
どうやら、番号は魔術の意味を示しているようだ。うまく説明することはできないが、なんだか考えないで魔術を思うように操れるようになった。
そして、とうとう最上階の部屋の目の前まで来た。というわけだ。
「お前は、お友達を救う。オレは、長を倒す。それでいいな。」
「ええ。間違いありません。」
僕は、息も整ってきたのでなんとか答えることができた。
「プレッシャーを掛ける気はないが、奴らは強いぞ。お前さっきのガロ達で手こずっていたようだが、あれくらい倒せないと、この先瞬殺されるぞ。それにしても、お前の友達はなんでこんなところにいるんだ?それになぜ、居所がわかる?連れ去れているところを見たことがないんだろう?」
質問が多かったが、僕はすべて答えようとした。秘密を守りながら。
「なぜ、居場所がわかるかというのは、データサブジェクトを使ったから。なんで、こんなところにいるのか?・・・、そんなの僕にだって知らないよ。一体何を考えているんだ・・・?」
とは言ったものの、本当はなぜだかわかる。おびき寄せているんだろう。それに罠でもあると思う。僕をここまで来させているんだ・・・。
「心の準備は良いかな?友達思いのぼうず。」
緊張していないようには聞こえるが、緊張しているんだろう。顔に何となく出ている気がする。まあいい、僕だって緊張しているんだ。さっきのガロに手こずっているようじゃ、お前は瞬殺される・・・?ふっ、見てなよ。あれが僕の本当の実力ではないことを・・・。
「言っておくが、助太刀はしない。オレはオレの目的のために、お前はお前の目的のために、だ。ここまで来たのはついでだ。わかったな?」
「ああ、良いですよ。どうぞ。」
僕も負けずに、落ち着いた口調で話した。フラットは生意気なガキめ、とでも言いたげに、ちっ、っと舌打ちしドアをゆっくり開いた。
ギィィィ・・・。
ゆっくり開くドアから、まぶしい光が漏れた。思わず僕らは目を隠した。
目が慣れて、前を見ると、悪い夢でも見ているのかと思った。
なんと、後ろにはもうドアが無く、前には、ライオンの頭にワニの体、手には熊の手がそれぞれについている、バケモノがフラットと向き合っていた。それよりも驚いたのは、下になんと地面がないことだった!空だ!僕らは浮かんでいた!バケモノが、すさまじい勢いで吠えたのち、フラットがバケモノへ突っ込んだ!今までより遥かに速いスピードだ!しかし、相手の腕で止められた!しかし、止まったがすぐに勢いを取り戻し、相手の後ろへ回り込み炎、氷、雷と次々に魔術を繰り出し、相手を翻弄させている。すごい!これなら勝てる!僕も戦いに加わろうとしたが、だめだ。入れない。それだけではないだろう。おそらく足手まといになりかねない。フラットは次々に攻撃をさけながら、次々にリズミカルで複雑な番号を刻み込んでいった。すると、周りから音符のようなものが現れ、相手を刻み込んで行く。一閃一閃、早い!目が追いつかなく、瞬きするほんの一瞬で、相手はドスンと倒れた。僕はしばらく唖然とし、一言目がこれだった。
「なんですか、あれは・・・。魔術にはあんなのはないですよ・・・?」
すると、ピンピンした様子で答えた。
「ああ、こいつはおれのオリジナルだ。どの魔術にも所属しないもので、分類すると、そうだな・・・・あれは・・・`音`だ。音速の早さで相手を切り刻んでいくからな。・・っと、もうこんなはなしをしている場合じゃあないな。なんせ、ここは幻だからな。長時間ここにいると、出られなくなる。」とだけ言うと、また番号を打ちだし、周りの景色が徐々に消えていった。そして、広い部屋へと変わりだした。
「ほう、あのガロを倒すとはな・・・」
真ん中に座っている、黒いマントを羽織った忍者が答えた。こいつもガロか?いや、生きているような気がするが、なんだか違和感がある・・・。
「久しぶりだな、シンガロ。リベンジ戦にやってきたんだが・・。人が増えたな。オレがこの前殺した奴の変わりか?」
フラットが軽い口調で言うと、男が答えた。
「まあそんなところだ しかし前の奴とはひと味違う とてもいいものをみつけたんでね」
そばにいる、僕と同じ背の高さの男を指していった。この男もマントを羽織っていて、顔がわからない。そして、僕はついにわかった!呼吸だ!あのシンガロとかいう男は、生きているようだが、呼吸つまり息をしていない!!
「僕の友達を何処へやった!!」
僕は祐樹を振り絞り、単刀直入に聞いた。男が答える。
「君の友達かい? それはどの友達だね?」
「どの友達もないだろう?とぼけるな!僕と一緒でさっき牢屋に閉じこめられていた、友達だよ!」
しかし、男は本当にわからないようだった。
「なに・・・ 逃げ出しただと・・・ いやそんなはずはない・・・ まあよいわ・・お前には試練を用意してある・・私がだ・・・お前にはこの我がしもべと戦ってもらおう・・負けたら言っておくが牢屋に戻ってもらおう」
ガルバとシーズのことが心配だが、こちらを先にした方がいいだろう。
「わかった。またガロか?」
男は首を横に振った。
「いや違う・・・ガロではない・・・わがしもべこそ・・・我が先ほど言った・・・我が知っている・・お前の友達だ・・・」
言っていることがよくわからないが、イヤな予感がした・・・。
少年と向き合い、僕は寒気を感じた。今まで会ってきた中で1番ヤバイ。殺気が常に目から出ている。しかし、どこか会った気が・・・。いやそんな事はないだろう。
「それでは・・・お前達はお前達で始めててくれ・・我はお前と戦う・・」
フラットをさして言った。
「おうよ!掛かってこい!」

僕と、少年は顔を見合わせた。といっても、少年はマントをはおったままだが・・・。そして、勝負は始まった。
まず僕らは、相手の様子を窺うため、常に間をあけてぐるぐる回った。そして、僕はデータサブジェクトで相手の情報を手に入れようとした。しかし、それは思いも寄らないものであった。僕は、少年に声を掛けた。
「シルア・・?」

この勝負、僕の負けだ。


使命の接続書
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