583004 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

正高信男

『ヒトはいかにヒトになったか』

『他人を許せないサル』

『ケータイを持ったサルー「人間らしさ」の崩壊』正高信男 中公新書

 宣伝文句では、「引きこもり」など周囲とのコミュニケーションがうまくとれない若者と、「ケータイ」でいつも他人とつながりたがる若者。両者は正反対に見えるが、実は成熟した大人になることを拒否する点で共通している。これは「子ども中心主義」の家庭で育った結果といえる。・・・・とあります。

 今の「若者」のなかにある現象が、サルの中に見られる現象と同じようだといっています。その「サル化」について考察していくうちに、日本の家庭の変化や少子化問題へと話が広がっていきます。筆者の思いがかなり強く出ていて極論と思えるようなところもありますが、読んでいてなるほど、と思うことがけっこうありました。ぶつ切りですが抜粋・要約をのせてみました。

 親子であっても親には親の世界があることは、子どもにわからせる必要がある。にもかかわらず、大人と子どもの差異などないかのごとく、ひたすら子どもにのめり込み、献身するのが子育ての理想であるかのような風潮が顕在化しつつある。
 「弱いものをいじめるな」「うそをつくな」「人に迷惑をかけるな」など、日本の子どもは親から「言いつけられていること」が最も少ない結果がある。(1999.文部省の国際比較調査)
 現代の日本の親は、わが子を愛することにはだれにも引けを取らない反面、公共の場へ出る準備に関しては、お世辞にも熱心とは言えない状況だ。

 「私は思いっきり子どもをかわいがることにしている。動物だってそうしているじゃないですか。それで何が悪いのですか」といわれることがある。この主張は説得力を持っているようにきこえるかもしれないが、人間は、動物的な水準の養育を受けるだけではサルの一員としての「ヒト」にしか育たない。

 中年(40代くらい)に達すると、人間は他人が自分にとって信頼するに値するか否かを判断する能力が衰える。「社会的かしこさ」(ルールが守られているかどうかを見極める能力など)が衰えるときに、我が子は思春期に入る。「子どもの気持ちがわからない」と悩む親が増える結果となる。

 新世代のこれからの特徴は何か。一言でいうなら、「親になることの拒否」であろう。若い世代が子どもを持ちたがらないのは、政府が言うような、身体的・時間的・金銭的な負担のせいではないのではないか。乱暴だが、若い世代にとっては、「誰かについて全面的に責任を引き受けることへの恐怖」あるいは、「自分が依存される対象となることへの嫌悪」があるからなのではないか。 

 精神的に成長していないと書いても誤りではないだろう。おそらく昔のように16~18歳に初産を迎えた段階まで精神的に成長するには、30年以上を要するのではないか。
 少子化に歯止めをかけるには、「お産は30歳から」という認識を社会に定着させること、同時に、若者が子どもと接する機会を積極的に設けることも不可欠だ。


 赤ちゃんの笑いの仕組みや言語へのつながりのことも書いてありました。
 比較行動学専攻で主にはサル学者のかたですが、『子どもはことばをからだで覚える』(既読)『0歳児がことばを獲得するとき』『父親力』などの著作もあります。けっこう読みやすいかも。


© Rakuten Group, Inc.