098299 ランダム
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からっぽ

からっぽ

イタダキモノ~LOVE~


君を見つけたあの日から











今日は朝からご機嫌だな。



普段は休日はたっぷり昼まで眠るカカシが、今日は日曜なのに、休みなのに、朝7時から起きてシャワーなんか浴びたりしていた。

いつもどおりの時間に起きたイルカは、フンフンと鼻歌を歌いながら髪を乾かすカカシをベットの中からぼんやりと見つめる。

嬉しくてたまらないといった風に、カレンダーを眺め、子どものように笑う。

そんなカカシの様子を見て、イルカは優しい気持ちになってふふっと笑った。



この人、本当に可愛いなぁ。



普段は、里の要のすご腕の上忍で、他国にも「写輪眼のカカシ」と広く知られているこの人が、俺の前では甘い甘い顔をして、とろけるような声で愛を囁く。無防備な姿を晒す。



「あ、イルカ先生、起きました?おはようございます。」

イルカの笑い声に気付き、カカシはタオルをかぶったまま振り返る。



「おはようございます。なんだかご機嫌ですね?」

そう言ってイルカが上半身だけ起き上がると、カカシはひょいと腰をかがめイルカの髪をすっと撫でると、おでこにちゅっとキスをした。

それがくすぐったくて、イルカは首をすくめた。

その様子を柔らかい表情で見つめるカカシ。



「うん。だって今日は記念日だから。」

そう呟くと、カカシはイルカの顎をつ、と掴んで上を向かせると、触れるだけの優しいキスをした。



記念日?何の記念日だっけ・・・?

唇を合わせながら、イルカは頭を回し記憶の糸を手繰ろうとする。

付き合いだした日・・・?誕生日・・・?いや違う。

何の日だったか思い出せない。



ゆっくりと唇を離し、そっと目を開けるとそこにはニコニコと嬉しそうに笑うカカシ。

イルカはその眩しい笑顔に罪悪感を覚えながら、ニコと作り笑いをした。



「え・・・えぇと・・・すいません、カカシさん。

記念日って何の記念日でしたっけ・・・?」



あえて、さりげない感じでカカシに聞く。



「・・・・・・え!」



カカシはビックリしたようにイルカを見つめた後、ふい、と下を向いた。

その様子にイルカは慌てて取り繕うように続ける。



「す、すいません。カカシさん楽しみにしてくれてたみたいなのに、俺、忘れちゃって。」



ペコペコと頭を下げながら、チラとカカシを覗き見ると、カカシは下を向いたまま肩を震わせていた。



「・・・・・・・っ。」



「カカシさん!本当にすいません。」



カカシが泣いている。俺は大変なことを忘れてしまったに違いない。

イルカはカカシの腕を掴みカカシの顔を覗きこんだ。顔を見て謝ろうと思ったのだ。





「くっ・・・・くぁははは。」



「え?」



「あははは。イルカ先生。そんな真剣に謝らなくても・・・・ははっ。

思い出せなくて当然ですよ。だって、俺しか知らない記念日ですから!」



「えぇ?」



泣いていると思っていたカカシは、必死に笑いをこらえて肩を揺らしていたのだった。

ビックリしたやら、安心したやらで、イルカは大きな溜息をついた。



「なんだ~~。俺てっきりカカシ先生が泣いているのかと思って・・・。」



「焦っちゃいました?」



「えぇ。なんだかすごく大事な記念日を忘れちゃったのかと思って。」



「必死なイルカ先生可愛かったですよ。」





そう言うと、カカシはベットへするりと潜り込み、イルカを胸の中にぎゅうと抱きしめた。

その胸の暖かさに、石鹸のかおりに、イルカは目を閉じた。

朝の光がキラキラと目の裏に映って美しかった。







カカシの体温が心地よくやがてイルカはうとうととしはじめた。



「あの日も、こんな風にいい天気で綺麗な朝だったんですよ。」

夢うつつのイルカに、囁くようなカカシの声が降ってくる。



「・・・へ?」

まどろみはじめていたイルカは、かろうじて意識をこちら側に繋ごうと目を開けた。





そこには

幸せそうに、本当に幸せそうに、イルカを見つめるカカシの両眼。





ぱっと目が醒めた。

心臓がドキドキとうるさい。



こんなに幸せそうな顔で見つめられていたなんて。

すきで、大好きで。愛しくてしかたない。一緒にいられて幸せで。

そんな気持ちが伝わってくるような穏やかな笑顔。





「オレが、イルカ先生を、見つけた日。」



カカシは口の動きがはっきりと分かるように、ことさらゆっくりと告げた。





「俺を・・・見つけた・・・?」



「えぇ。一年前の今日、オレはあなたを見つけた。

もちろんあなたはオレを知らないし、オレもアナタを知らない。

あなたはたぶん出勤途中で、オレは任務明けだったんです。

アカデミーの前の道ですれ違ったんです。」



カカシはその日のことを思いだしているのか、窓の外の爽やかな空を見つめながら目を細めて話を続けた。イルカはそんなカカシの胸にそっと頭をよせ、カカシの話の続きに耳を傾けた。



「それで・・・?」



「それで、ね。任務明けだしね、なんか鬱屈とした気分だったんですよ。

オレはいつものように本を読みながら歩いてて。

前からアナタが歩いてきたのにも気付かなかったんです。すごく、疲れてたんでしょうね。



隣を通り過ぎる時に、アナタはオレに挨拶してくれたんです。おはようございますって。

それで、オレびっくりして顔をあげたんだけど、アナタはもう通り過ぎてて、返事できなかったんです。

振り返って見ると、アナタの背中が朝の颯爽とした光の中に溶けて、すごく綺麗だった。

オレずっと見てました。見えなくなるまで。あんなに重かった気分は、いつの間にか消えてて。



オレね、その時思ったんです。『見つけた』って。」





そうして、カカシはイルカをじっと見つめると「あなたを見つけたんです。」と笑った。





イルカはもう、何も言えず、顔を真っ赤にしながらカカシの胸に顔をうずめ、ぎゅうと抱きついた。





「それがね。1年前の今日。

あれから、イルカ先生のことをちょっとずつ知って、だんだんと好きになって、好きになってもらって、

そして一緒にいるようになって。

一緒にいることが自然になって。



あの日からはじまってたんですよ。きっと。



だからね、今日ね、あなたに聞いて欲しかったんです。

あなたを見つけた日のこと。大事な記念日の事をね。」





そこまで言うと、カカシはちょっと恥ずかしそうにふふっと笑った。



「だから、今日は頑張って早起きしちゃったんですよ。」



イルカの髪に愛しげに指を通し、撫でながら。





「・・・・・・・・カカシさん。俺を見つけてくれて、アリガトウございます。」





嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。

ちょっと泣きそうになりながら、イルカは必死に告げた。

声は、震えて消えてしまいそうだったが、カカシには十分に伝わったようだった。





「ずっと、なんてね、怖くて言えないけど。

でも、この気持ちが続く限りは一緒にいましょうね。」



「・・・・はい。

来年の今日も、またこの話をしてください。その次の年も。

いつでも、はじまりの気持ちを覚えていられるように、ね・・・?」







そうして、

初めてのキスのように。

初めてのセックスのように。



穏やかな、初々しい交わりを した。

ひとつひとつ、お互いの存在を確かめるように。



爽やかな、1年前と同じようによく晴れた朝の光の中で。











月日を重ねても

絶対に忘れたくない

あなたを思うすべての気持ち

愛しさ 優しさ 切なさ 嬉しさ 



君を見つけたあの日から

続くすべての気持ちを







-完-






『多寿の心得』多寿さま宅から強引にお嫁に来て頂きました!!
カ、かわいい…
ワタシ、日常のほのぼのとか大好きなんですよ!!ほんと素敵!(うっとり)
いつもホントお世話になってます…
そしていつもありがとうございます!!ラブチュvvv
また遊んでくださいねvvv



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