2008/07/18(金)17:29
ダブル(部落と朝鮮)に言わしてもらりァ(酒井真右さん流)
『酒井真右の十八行小説』
(一九八九年発行)より
冷殺温生---順次の告白---
僕にァ朝鮮人の血、大学の助教授をしてる倅も、大学生の娘っコの中にも、日本人と朝鮮人の血が飛沫いて流れているんだ。
六十二年前、あの関東大震災・・・九月の末に、血を吸ったサーベル、日本刀、竹槍を握った警察や自衛団の厳しい眼をくぐり、山越えして野宿して、
東京から百キロ余り、山狭いの戸数七~八戸の部落、ここの地主の酒井源一旦那の所へ僕が両親(李)は片言の日本語で・・・ ・・・。
おふくろは、僕を旦那の物置で産み落として三日め、親爺としょっぴかれ、町の警察署でブチ殺され、旦那夫婦が、僕だけを隠して育ててくれ、
お主婦さんに先立たれた旦那は、自分の一人娘---現在の僕のかかさ。
現在でも“部落”なんて冷殺されてるが、亡くなった旦那や近所の人たちの話によると、
旦那の七代前の金蔵大尽て人は、天明三年七月の浅間山大爆発のとき、部落、非部落を問わず、乞食以下になっちまった十里四万何千人もの人たちに、蔵から米俵をひっぱり出し、
一月近くも炊き出しをして食わせてやったんだってから・・・ ・・・。
飛行機なら一時間足らずっちゅうが、朝鮮と日本は、万里の地獄壁---。
僕の息子や娘の血で、朝鮮はむろん、アジアも地球まるごと噴きこぼれる温生一つの平和に結びつけなけりァ・・・ ・・・。
(一九八四年一月)
『水の世界地図』
同じく、『酒井真右の十八行小説』
(一九八九年発行)より
野の歴史家
「源・平・藤・橘(げん・ぺい・とう・きつ)よ。
ベーリング寒流で夷島(佐渡)から能登半島へ上陸したのが元(騎馬民族)の源。
平は、ペイルシャ、今のシュメール、昔のスメラ。
七世紀前の隋は『桃(とう)』とも言われたがこれは日本上陸の唐(黒潮系)、つまり藤、
橘は、契丹のきつ、つまり さんか系(黒潮系)。
噂も千人集まれば一人の真実者より本物にうまく化ける!
系図作りの『沢田源内は京の稚児あがりにて江戸に出府せしより、礼金をうけては次々と贋系図を作り・・・ ・・・実在のごとくに礼金高にあわせて記入するは怪しからぬ極みなり』(『史籍編纂』の中の「大系図抄」)
ケイズヤとは警察用犯罪隠語で盗品故売業者。
『五万円にて由緒ある系図を作ります』は中学生相手の歴史雑誌広告。
八五八年清和天皇の十八年も前の八四四年に『源の常』の名が残っている!
四方が海の日本列島に単一民族などとは、権力者たちの虚言とその権力に尻尾をふる奴隷御用学者と天婦羅大学教授ら・・・ ・・・。
真実の歴史に改めなければ・・・ ・・・」
無明峠山中の先生は、今日も日本歴史の探求にいとまなし--- ---。
(一九八六年四月)