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Always むらーのさん

Always むらーのさん

第一話 日本を買い叩け

第一話:日本を買い叩け!


(あらずじ)
物語は、一発の銃声から始まる。
ばらまかれた1万円札に、子供たちが群がり、競ってそれをかき集る。その横には血を流した一人の男・・・・
救命救急に担ぎ込まれた男は、処置室でかすかに残った記憶を蘇らせる・・・・

時は遡って1998年。一人の男が日本に降り立った。鷲津政彦(大森南朋)29歳。外資系再生ファンド、ホライズン・インベストメント日本代表の肩書きをもつその男が部下に出したミッションは「腐ったこの国を買い叩く」。
一方、メガバンクの一つ三葉銀行は、バブル期の不良債権の処理にあえいでいた。不良債権は、金融監督庁の監査を前に必ず処理しなければ、銀行がつぶれてしまう。三葉銀行は、ホライズン社への債権のバルクセールを実施する。バルクセールとは銀行が持つ不良債権を「袋(バルク)」に入れてまとめて売ることを言う。そのバルクセールを担当するのは、三葉銀行のエースと呼ばれた芝野健夫(柴田恭兵)。

芝野の前に現れた鷲津は、紹介もそこそこに「お久しぶりです、芝野さん」。芝野と鷲津はかつて、同じ三葉銀行の丸の内支店で上司と部下の間柄だったのだ。鷲津は、ある出来事をきっかけに三葉銀行を辞め、アメリカに渡った経歴を持っているのだ。

東洋テレビの平の経済記者・三島由香(栗山千明)は、そのバルクセールとともに鷲津を追っていた。由香の実家である小さなねじ工場三島製作所は、かつて三葉銀行時代の鷲津が担当していたのだが、折からの不況とそれに伴う貸し渋りにより、父・健一は自殺していた。死にかかった獲物に群がる「ハゲタカ」と称される「バルチャーファンド」の代表として日本に帰ってきた鷲津を冷たいまなざしで執拗に追うのだった。

三葉銀行初のバルクセールに対するホライズンのデューデリ(精査)結果が出た。1000億円を超える債権に対し、三葉の内部の査定は300億。しかし鷲津の出した価格は一部の債権を除き査定価格が1円。査定のついたものを含めてもわずか9%の93億円に過ぎなかった。衝撃を受ける芝野をはじめとする幹部たち。しかし、袋(バルク)に入っていた債権は、そのほとんどが、回収不能なばかりか、反社(暴力団や、政治家の闇金融がらみ)に繋がる債権で、査定はつかないと断じる。三葉側も、反社案件を極秘裏に処理することを優先させ、結局、ホライズンは93億での査定のまま1000億円を超える債権を手に入れることに成功する。三葉側がホライズンの調査能力を甘く見たとはいえ、水面下で鷲津が三つ葉の役員と接触し、すでに取引は成立していたことを知らされ、臍をかむ芝野。

そのバルクセールで手に入れた債権の中に一軒の老舗旅館「西乃屋」が含まれていた。創業100年を超える日本有数の旅館もまた、バブル期の無理な多角化経営のために経営は行き詰まっていた。鷲津は、お忍びで西乃屋を訪れ、「査定」を行う。破綻の原因は経営者である西野昭吾(宇崎竜童)は、バブル期に三葉銀行から身の丈を超えた融資を受け、ゴルフ場経営に手を出し、本来の客層からもそっぽを向かれてしまっていた。負債総額は180億円。鷲津は、その昭吾の息子である西野治に出会い、「金に使われてしまったオヤジは無能な経営者」と鷲津と期せずして同じ意見を言った。

西乃屋へ改めて訪れた鷲津は、昭吾に「返済が出来ないなら、2億で旅館を渡す。ただし、その他の不動産はすべてこちらが頂く」と言い放つ。期限は2週間。むろん、2億が用意できるはずもないことは知っての上で。
結局、期限までに2億が用意できなかった昭吾は、ホライズンの鷲津を訪ね「能少し待ってくれ」と懇願する。しかし、鷲津はすでに西乃屋の債権をライバル旅館グループに売り渡していた。それは昭吾から旅館が失われたことを意味する。激怒する昭吾は「何も残せなかった」とつぶやく。鷲津は「あなたは立派に残せたじゃないですか、息子さんを。息子さんには才覚がある。二人で1からでなおしてください」と声をかける。

呆然自失でホライズンを後にする昭吾。公衆電話から治に「おまえに(経営を)任せればよかったのかな」と一言伝言し、直後にトラックに飛びこんで即死する。

芝野は鷲津に「もう少し待ってやれなかったのか?昔はもっと情に厚かったじゃないか」と詰め寄るが、鷲津は表情一つ変えず「あなたが変えたんですよ」と返す。

一方、西野治は、旅館と父を失い、街をさまよっていた・・・「オレが親父を殺した・・・」

(感想)
まず最初の場面が子供と1万円札という取り合わせが、興味深い。プールに浮かんだ鷲津の顔を覆うように1万円札が流れてくるんだけど、その1万円札をわれ先に奪い取ろうとする子供たちの表情ががまさに「ハゲタカ」に見えてくる。その1万円札を手におもちゃ売り場へ殺到する子供たち。欲しい物を手に入れることだけを考えた行動はあまりに残酷な光景だ。そしてバックには「人生の悲劇は二つしかない・・・・」の鷲津の声がオーバーラップ。この物語の先行きを暗示するこの冒頭の展開が全てだと思いますね。カッコいい。それに見るものを一気に引きこんで行く力を感じた人も多いと思います。

そして、西野昭吾の断末魔の叫びに聞こえるかのような急ブレーキの音。そして西野治の彷徨のラストシーン。続く、エンディングのBGMが人間の哀しさを歌い、宙を舞う1万円札、そしてそれを掴もうとする人々。1万円札はすべて、手に入った瞬間に消えてなくなっていく。最後に少女が両手で掴んだ1万円札は、手を開くと、そこには一輪のひまわりの花。これだけで涙うるうる、カンドーです。

単にシナリオだけを見れば、鷲津(従来の否定)VS芝野(旧来の日本的な考え方)のぶつかりだけに見えてしまいがちですが、見終わった最後の「ひまわり」で救われる、というのが泣かせます。

それと、デューデリの際の三葉銀行とホライズンの丁丁発止のやりとり、そして、1枚も2枚も銀行の上を行く、ホライズンのしたたかさは、被害者面して、外資系ファンドを下に見る銀行をばっさり切って取る、痛快さがあります。これで銀行は今でも法人税を払っていないなんて、とんでもない!って思いますよね。それでいて政治献金だけは再開するなんてもう立派な詐欺行為じゃないか、と思いますよ。

でも、中身自体はそんな上っ面のことではなくて、人の業というか、あやうさを表現したいんじゃないかな、と思っています。その中で、本当の「再生」を目指そうとした鷲津と芝野の葛藤を感じることが出来ます。


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