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Always むらーのさん

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第二話 ゴールデンパラシュート

第二話:ゴールデンパラシュート

(あらすじ)
三葉銀行とのバルクセールで大幅な利益を計上し、大成功に終わらせた鷲津は、2000年、いよいよ再生の見込みのある企業の買収に着手する。

ホライズンの情報網を使い、目をつけたのはおもちゃメーカーの「サンデートイズ」。かつては、木工玩具で一斉を風靡したものの、創業者の娘である現社長は会社を私物化、放漫経営がたたって、負債を膨らませていた。鷲津は不採算部門からの撤退、強みであるゲーム開発力の強化によってサンデーを再生させ、スポンサーへ売却することで収益をあげようと画策。

サンデーは典型的な同族企業で、全株式の半分以上をオーナー一族で掌握しており株式の取得は困難と考えた鷲津は、債権の買占めを行いメインバンクである三葉銀行を差し置き、筆頭債権者としてオーナー一族をコントロールする作戦に打って出る。メインバンクでサンデーの再生を担当していた芝野と再び相対することとなる。

サンデーの社長・大河内瑞恵に対し、鷲津は、借金をチャラにする代わりに経営から退くよう要求。しかし瑞恵は、「ハゲタカの来るところではない!」と一蹴。しかし鷲津は最初からターゲットを瑞恵の息子、専務伸彰と考えていた。

芝野と伸彰は極秘に鷲津とコンタクトを取り、サンデーが自ら作成した再生計画書を説明。しかしその中身はオーナー一族支配の継承、私物化の温存という鷲津にとって到底受け入れられないもの。鷲津は逆に伸彰に対し、ゴールデンパラシュート(墜落しかかった飛行機から経営者のみ脱出させるためのパラシュート=経営から退く代わりに多額の対価を受け取ること)の提案をする。「社長を裏切れというのか!」とは言っては見たものの、明らかに動揺を隠せない伸彰。

芝野は、鷲津の親子の仲を引き割いてでも金のために動こうとする態度を非難する。しかし、鷲津は表情一つ変えず、7年前に由香の父親が自殺、その後の葬儀で芝野が鷲津にかけた言葉が自分を変えたのだ、と言い放つ。「しょうがないじゃないか、日本は資本主義なのだから」・・・資本主義の論理・・・芝野は自己矛盾のため返す言葉がない。

一方、由香は、半ば強引に芝野とコンタクトを取る。芝野は、7年前の三島製作所の件と由香を結びつけて思い出せない。由香は、その上で西乃屋旅館の破綻後、失踪した西野治の行方について情報を芝野に伝える。

芝野は、工事現場で働く治と再会。しかし、芝野の治を思いやる言葉も治には空しく響くだけだった。銀行というしがらみの中で、何も出来ない苛立ちが芝野を突き動かす。三葉の役員に対し「ホライズンを出し抜きます」と宣言。

果たして、定例の役員会で突然の解任動議、そして採決。役員全員の賛成で瑞恵の解任があっさり決まってしまう。芝野が、伸彰を使い一族を説得、伸彰を社長にする条件で一族を取りまとめた結果だった。

出し抜かれた、思いもしなかった芝野の反撃に苦い思いを抱き、次なる戦いを決意するのだった。

(感想)
第一話で、はっきり説明が無かった鷲津と芝野の過去が明らかになります。一つ7円50銭のねじを製造する三島製作所、1日2000個を朝から晩まで作っても、このねじを使う自動車会社のクルマを一生買うことが出来ない状況の中で、設備投資した工作機の代金200万円を返済できず、回転資金の貸し渋りにあってついには自殺してしまった社長(由香の父)。その葬儀で芝野がかけた言葉がその後の鷲津を変えてしまったという事実。その事実に、芝野は自らの偽善的な態度を思い知らさせるわけです。そして、鷲津は「ハゲタカ」として再び自分の前に現れ、襲いかかろうとしているのです。情に厚いバンカーだった鷲津を変えた出来事があまりに残酷な資本の論理の現実を浮かび上がらせます。

一方、西野治と再会した芝野は、ここでも偽善者として冷たい視線を投げかけられます。バルクセールで西乃屋を追い込んだ直接の原因を作ったのは三葉であり、担当者は芝野であったわけです。治役の松田龍平の冷めた目線が芝野の心を引き裂くのが見えるような場面です。

最終的には、これをきっかけに芝野は、いわゆる「寝技」を決意し、ホライズンに対し一発逆転のシナリオを描くのです。しかし、それは新たな「西乃屋」を作ることと何ら変わりがない。親子の縁を金で引き裂き、新たな憎悪を生み出すことにしかならない。さらに言えば、メインバンクからの「天下り先確保」の算段が見え隠れします。つまり、旧来の日本の体制が鷲津たちを「ハゲタカ」呼ばわりしたところで、自分自身も中身は金の亡者であることにはかわりがないという矛盾が見事に描かれていたと思いますね。


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