3072266 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

新発想ビジネスヒントフォーラムWEB2.0

新発想ビジネスヒントフォーラムWEB2.0

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2004年02月06日
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
(クリックでジャンプします)


第一章 ベンチャービジネスの社会的意義
アメリカの経済学の図書を見ていると、しばしば小規模産業という対象の研究を見つける。
日本ではあまり馴染みのない研究分野である。しかし小規模産業というのは、アメリカの経済学においては、資本主義が健全に発達できるか否かの重要な指針となっている。アメリカの小規模産業だけでなく、中国の小規模産業とか、日本の小規模産業とか様々な研究がある。小規模産業という語はあまり馴染みがないので、ここでは中小企業とかベンチャービジネスということにする。
 戦後の経済史が教えるところによると、資本主義社会は、中世の都市経済の外側に規制を受けない家内生産が発生し、それが自由な農村都市を作っていくという過程を経て登場したのである。
 中世の社会は、地域の封建領主の下で、都市に特権的な職人や商人が存在し、ギルドなどによる市場規制が行われており、農村は農産物を作るだけの農奴であった。これらの都市はそれなりの自治を保っていたが、その自治はギルドの構成員の利益を守るものであって、周囲の地域から見れば特権であった。要するに都市居住者による特権、裏を返せば周辺地域である農村への強い規制の上に中世の世界が展開していたのである。
 このような状態を打ち破るのが、周辺の農村に発生した家内手工業である。イギリスの経済史家モーリス・ドッブは、このような家内手工業の発生を資本主義発生の萌芽とした。これ以来、資本主義の発生は、零細な規制外産業が如何に発生するかに掛かっている、と理解されるようになった。
 アメリカで小規模産業に注目が集まるのはやや観点が異なる。それは寡占(二・三社の巨大企業が市場を押さえ、事実上競争を排除している状態)が社会にとって悪であるという観点であり、社会が独占や寡占に支配されているか否かは、小規模産業、つまりベンチャービジネスが発生できるか否かで決定される、つまりアメリカ型の競争における公平の原理である「機会均等」の原則が維持されているか否か、という点にある。
 日本の場合、ベンチャービジネスなるものが本格的に論じられることはあまりなかったが、最近は様相が変わり、一九九四年九月には公正取引委員会が『「ベンチャー・ビジネスに対する独占禁止法第九条の規定の運用についての考え方」について』を発表し、ベンチャービジネスの資金入手を容易にするために、融資のガイドラインを一部修正した。
 このガイドライン変更は、銀行に対して融資の際に役員の派遣を含め、いくつかの優越的な地位利用を認め、その代わりに中小企業、特にベンチャービジネスが融資を受け易くするというものである。ここでこのガイドラインを取り上げたのは、経済官庁である公正取引委員会がベンチャービジネスの意義を認めたところにあるのであって、ある意味で日本の研究開発における大企業優位の時代が終わりつつあることを示しているからである。
 このように、主張の観点はさまざまに異なるものの、自由競争を旨とする資本主義社会においては、小規模のベンチャー企業が成立できる基盤がなければならないという点では共通している。戦後長いこと規制ずくめだった日本経済にあって、今後の発展の仕方を検討するためには、全ての制度をこの観点から洗い直す必要がある。
中小企業を論じた図書は、多くの場合、大企業で成長した日本経済が駄目になったから中小企業を育成すべきであると言ったり、アメリカの分析を持ち出したりする。しかしこのような分析は、その時々の経済状態に左右されやすく、経済なり産業の構造から見て、なぜ中小企業が必要かということに回答を与えてはいない。それでまず社会的分業という観点から中小企業に適した技術と大企業に適した技術はそれぞれ何か、を検討する。
●個人・中小企業と大企業の発明
 戦前の日本人の発明は、ほとんどがいわゆる素子の発明であった。そして日本人はシステムの開発には向かないと考えられていた。これを大きく変えたのは戦後の各種の技術開発である。特に大型プロジェクトに代表されるように、一つの核になる技術を多数の企業が国の補助金を受けて集中的に開発していた。だから戦後の技術開発はどちらかというと総合的かつ大企業中心のものであった。しかし最近問題になっているマルチメディア分野での技術開発は、ベンチャービジネスが中心で、このような様相をだいぶ変質させている。
 一時期、「最近の技術は大きくなっているから、大企業でないと新たな技術開発が不可能である」という見解が有力であった。とくにトランジスターが主流となった時期には、その品質の問題が重大であって、大企業でないとトランジスターを作る巨大な単結晶は製造することが不可能であったから、それを用いる製品の製造も不可能であった。
 ところが最近のエレクトロニクスにおいて、LSIの組み合わせと、いくつかのソフト的な思考によって、新製品の開発が可能になってきた。すなわち製品開発の主流が製品のハード的な面からソフト的な組み合わせに移行し始めたのである。通常はエレクトロニクスの分野では、技術開発において三年先程度が予測可能なところであり、五年先は見当がつかないといわれている。このような場合、現在重要テーマとして開発されているものは、五年先には古い技術となり、多数の類似技術が競合することとなる。
 製品の開発基準が異なれば、どのような開発条件が最適かも異なってくる。個人と大企業の中央研究所の発明がどのように相違するかをまず検討しよう。
 一般に重要な研究の種は大企業の研究機関から発生すると思われている。しかし現実にはその逆で、多くの画期的な発明は大企業の研究所とは無関係な個人が作り出す。
 ここではいわゆる画期的な発明がどのようにして出てきたかを見ることにしよう。
  ★表1ー1「発明の各要因」
 (富田徹男・青木国夫 「科学史における作表的分析について」科学史研究 99,1971)
 表一ー一を見て頂きたい。この表はジェークス・星野他訳『発明の源泉』(岩波書店)第二部から動力と情報関係の部分を中心にサンプリングし、発明の各要因について一覧表にしたものである。この中で発明者の項に注目して頂きたい。発明者か発明グループの特定出来る発明と出来ない発明がある。ほとんどの画期的と言われる発明では発明者が特定できる。さらにこの特定できる発明者は多くの場合素人である。例外はトランジスターの発明者のショックレイだけである。
 アマチュアの発明者は、何か自分だけが真剣に取り組んでいるテーマを持っている。しかしその道の研究者ではないから、今までのその分野での技術の常識も開発傾向の知識も何も持っていない。それで常識とは異なったことを考え得るのである。これは丁度趣味に似ている。ある者は将棋が好きだし、ある者は絵を描くこと、またある者は草野球が好きである。中には名人並みなアマチュアもいる。しかしプロとは違う。今述べた発明者はこれと同じである。そして動機も皆異なる。編み物機械の場合、恋人が編み物に夢中で自分と話をしてくれないので、そのための自動機械を作ったという例がある。
 アマチュアの発明にはいくつかの特徴がある。
 第一はテーマがまちまちで、成功の可能性は非常に少ないが、今までの研究の経過と全く無関係に突然予期しない発明(突発的な発明)が現れることである。
 第二は研究投資が非常に少ないことである。勿論企業が研究開発をするのに比べたらの話であり、本人は大変な出費をしているのだが。最近問題になった超伝導や低温核融合の最初の研究の費用は多分非常に少ないものである。
 第三は、しかしながらこの突発的に現れる発明も、なんらかの当時の社会的要求を反映していることである。これは発明者が社会の要求を自分で感知しているからである。だからこの様な発明が成功すると、後になって、その発明が社会の潜在的な要求と合致していたと考えられるのである。しかし実際には沢山の素人発明があって、そのうち社会的要求に対応した技術だけがその後の発達を約束されるのである。
 第四は、この様な発明のうち重要なものが、初めに発明者が予想していたものを越えて多数の機能を持つことになり、その社会的影響が大きくなることである。トランジスターの場合、単なる可動部品のないリレーから計算機の素子・増幅手段と発達し、真空管と交替し更に小型になって現在の状態になった。集積回路は真空管では出来ないから、これはトランジスターだけが持つ機能である。この様な機能はトランジスタを発明した当初には分からない。だから新しい機能の追加が生じる。これが突発的な発明の特徴である。
 一方、蓄積的な発明には蛍光灯が挙げられる。蛍光灯は実用化する遥か以前から多数の研究所で研究がされており、もし完成すればどの様な性格のものになるかは、以前から分かっていたのである。だから完成してもそれ以上のことはない。またシステム技術はそのほとんどが蓄積型の発明である。
突発的発明は個人に向き、蓄積的発明は企業の研究所に向いている。本来特許法が予定しているのは個人的な天才のひらめきであって、企業内努力による蓄積的な開発ではない。
 このようなことからみて、個人といっても差し支えないようなベンチャービジネスが重要な発明(基本発明)を行い、大企業がそれを様々な形で実用化するということは、極めて一般的な構図なのである。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2004年06月07日 21時16分27秒
コメント(0) | コメントを書く


PR

プロフィール

シャルドネ。

シャルドネ。

バックナンバー

コメント新着

フリーページ

サイド自由欄

設定されていません。

カレンダー

ニューストピックス


© Rakuten Group, Inc.
X