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2007年08月07日
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一月に、父親が他界して以後。順序だてて晩年に父親を取り囲んでいた関係者たちと出会い交渉を行っている。まあ、どいつもこいつもワルなのである。幾分とも礼を尽くして関係者と呼んでいるが、実妹などの緻密な調べでは追いはぎ、強盗の類と大差ない。しかし、本人たちは証拠がなければ、健常な市民でございますと、平然としているというわけである。


しかし、ここでもわが母子には怒りがない。あるとしても希薄である。そもそも、晩年に自分の周囲に、こういう「ちょいワル」なヤカラを好んで配していたのはほかならぬ父親なのである。ジャングルで土民の酋長のように君臨していたカーツ大佐のようなものだ。人は、小銭で狂喜乱舞する場合がある。そういう人間観察を好んで積極的に愉しもうという部分も人間にはあるらしい。戦後、そういう性格の男たちを大量に輩出してきたのがこの地上の現実である。小銭に群がるクズのような人間模様。それを好んでいたのがわが父親なのだからしょうがない。


この世に、巨悪など滅相もない。


ほかならぬ、あなたや私の周囲を見渡せばいくらでもそういう中途半端なワルがいるわけだ。いわゆる巨悪と呼ばれるものも、そういう中途半端なワルの中からでてきた猫又(ねこまた)のようなものだ。本質的に人間に、それほどご大層な差異があるとは思えない。われわれだって、戦場で他国の人々を殺戮してきた祖父母の末裔だし、株式市場では日常のように利食いと称して他人さまの専用離脱なさっていた資産を平気で頂戴することを楽しみに暮らしていたりする。まあ、泥棒と大差ないといえば言えないこともない。



そういう父親の関係者たちにインタビューをしている理由も、次第に曖昧になってきているのだが、曖昧になっているからいいので明瞭になれば告訴することになる。この世は適当にしているから、仲良くできるという面もあるのだ。ホッブスは、万人が万人に対する狼であると著書の中で書いている。しかし、狼同士がしばしば同じ閨の中で肩モミしあっていたりするのが人間社会だ。野生の世界でも、食餌に満足している野獣同士が案外相互干渉せずにいたりするということはあるのではないか。


面白いことを言う関係者がいた。



父親が、わが母と婚姻に及んだに際して「親のおしつけ」だったと独白していたという証言があった。父親が親というのは、自分にとっては祖父のことだ。生前、息子の自分にはそういう下手なことは、言わなかったが他人さま、それもフトコロを狙っていそうなギャング同然の連中に、自分の婚姻についての禍根を正直に述べているところが愉快だ。まあ、それぐらいの事は思っているだろうと推量していたので、驚きはしなかったけれども、よりによってそういう連中に対してしか、ホンネを語れないというのは人間社会の複雑な側面をあらわしている。


さっさと意に添わぬ結婚だったのなら、はやばやと離婚しちまえば良かったのにと妹は言う。理由は、よく分からないが滋賀のある年代の人はそういう時に不思議な見栄体裁を気遣ったものらしい。どうやら世界の中心が、自分の自我よりもそういう見栄体裁を仕切る「世間」で出来上がっていたらしい。これは、実の親子といえど、隔絶した差異性である。あの「バカの壁」ではないが、理解を越えている感覚的な相違。これは乗り越え難い。親子、夫婦間でもこのジャンプは、終生難しいのではないか。








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最終更新日  2007年08月08日 05時45分22秒
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