グリゴリー・ヤコフレヴィチ・ペレルマンГригорий Яковлевич Перельман、Grigory Yakovlevich Perelman、(1966年6月13日 - )は、自分などよりもひとまわり以上も若い。だが、もう人生を何度か過ごしてしまったような迫力がある。数学者とはいえ、これまで世界的に著名な超人的頭脳が挑んで果たせなかった難題を、ついに解き明かした。豪の者と言うしかない。彼の風貌からは、頭脳の世界で宮本武蔵があらわれたような印象がした。
しかし、この「ポアンカレ予想」という難題も多くの数学者の生き血を吸っている。並大抵の難問ではなかったらしい。昨晩のNHKの番組は、素人の視聴者に理解の手立てを与えようとかなり噛み砕いていたが、空恐ろしさに足が竦んだ。これでは、朗らかな少年が人格を破壊してまで取り組まなければ突破できなかったわけだ。それだけは、伝わった。
つくづく偏差値など、屁でもないと痛感できた。メンデルの法則が試験に出れば、東大出や京大出の秀才は、一秒の何十分の一で正解を見てとるだろう。しかし、メンデルが法則に辿り着くためには、生涯を棒に振っている。どちらが人類史にとっての大貢献者か。そんなことが分からないものは、たわけである。この化け物のような数学者は、数学者の世界ではノーベル賞とも位置づけられる賞を、数学者としては初めて蹴ったらしい。蹴られたフィールズ賞のほうも、蹴られてたまるかとばかりに。受賞者は、賞を授与されることを拒めないと、あくまで賞を押し付けるつもりらしい。しかし、副賞の一億数千万円は、ついに固辞して受け取らないつもりらしい。まあ、この世の果てをみた男ならではの仕業というべきだろう。