2009/02/04(水)05:58
やぶれかぶれな青春期
小松左京には、雑誌「蛍雪時代」の付録として提供された回想録で「やぶれかぶれ青春記」がある。いま、旺文社文庫などで入手が可能だ。これは戦中派の戦前戦後を描写した、知る人ぞ知る佳作である。今回読み進んでいる「小松左京自伝」は、そんな断片的に知る氏の自伝的回想を、より一層精緻に展開されたものだ。
60年代のある時期、関西の10代の少年たちに熱狂的な支持を受けていたラジオ番組があり桂米朝と小松左京の掛け合いはいまも昔がたりである。豪快な笑い声と、博覧強記ありとあらゆる関心事に踏み込んで薀蓄を傾ける熱弁に魅了された。当時、直木賞作家候補にくりかえし浮上しながら、まだ世間に理解されなかったSF小説の黎明期のこともあって文壇からは相当冷遇された人だと思うが、どっこい少なからぬ若い読者たちは小松左京に深く傾倒し続けていた。そう思う。
(つづく)