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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2006.10.07
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カテゴリ:ヒラカワの日常
大田区大森第七中学校に通っていた頃、
クラスの悪ガキといえば、I野くんと井坂くん、そして俺であった。
I野くんは、当時から札付きの不良で、何年か後にクラス会でお会いしたときには
有名な「組」のバッジをつけていて、いっぱしのやくざもんになっていた。
何故か、かれとは何となく気が合うところがあって、
他の不良連中が、「ヒラカワの野郎は生意気だ。ヤキをいれてやるべ」ということで校舎の裏に呼び出されあわやぼこぼなんてことがあったが、そのとき「こいつには手をだすな」といって守ってくれたのがI野くんである。
その後、かれがどのような人生を送ったかは不明である。
想像したくはないが、あまりハッピーな人生にめぐり合うことはなかっただろうと思う。
宿命の力の中には、人知をして抗えぬものがある。
もうひとりの、井坂くんはエレキバンドをやっていたり、不良をしていたりと
なんだかよくわからない男で、夜中にもうひとりのこれもやくざな弟分と二人で黒ずくめの服を着て、忍者のように街を徘徊するといった奇行を繰り返していた。
修学旅行のときには、俺と井坂くんは奈良のやぎを追い掛け回していて時間を忘れてしまい、集合時間に間に合わずに担任の吉村先生(このひともやくざちっくな体育教師であった)に衆人看視の中で「鹿せんべい」を食わされた。
この時、クラスメイトが撮った写真が今でも俺のアルバムに張ってある。
その井坂くんは、どこでどう間違ったのか画家になった。
先日、かれから電話があり、こんど世田谷美術館に作品が展示されるから見に来てくれということであった。
後日、入場券が二枚送られてきた。
この義理堅さもかれの不思議のひとつである。

夜来の雨が上がって、気持ちのよい秋日。オートバイをころがして世田谷美術館へ行った。井坂くんのことは忘れていたのだが、美術館に着くと「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」をやっている。そうか、今日は井坂くんの言っていた美術展の初日だったのか。
ルソーという画家について、俺はあまり書くことがない。
幻想的で美しい絵だとは思うが、なんでこういう絵なんだというところが良くわからない。ルソーに影響をうけたという横尾忠則や、岡鹿之助、曖謳などの絵も展示されていたが、それらももう一つぴんとこない。井坂くんの封書を使ったコラージュも五点ほど出展されていて、こちらはどこがルソーと繋がるのかよくわからない。それでも抑制の効いた表現には惹かれるものがあり、いったいやつはどんな経緯でこんな画風を身につけ、絵の世界にポジションを得たのかと、不思議がふくらむばかりであった。

その美術展で、『秀子さん、ちょっと座ってくれないかな』という小冊子をいただく。えっと、思って中をみると梅原龍三郎による高峰秀子の肖像が数点載っている。、宮本三郎、堂本印象、森田元子の絵もある。解説を読むと、どうやら、高峰秀子自身が世田谷美術館に寄贈したらしい。その梅原の絵をじっと見てみる。梅原も好きな画家ではない。それでもモデルはデコちゃんである。彼女の『浮雲』の空気が自然とたちのぼってくる。
「秀子さんは目が大きいのではない。普通の人より目の力が強いから、大きく見える」と梅原は言ったそうである。なるほど。こういったものの見方が、画家の眼力というものなのだろうと納得する。出来上がった絵は、それでも大きな目が描かれているところが面白い。

美術館を出て、公園のベンチで一服しながらコンピュータを打っている。天高く、ジャングルジムで遊ぶ女の子。木々がまあるい影をつくっている。その間を犬が走る。思わぬ好日となった。





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最終更新日  2006.10.07 23:02:11
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