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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2008.02.09
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カテゴリ:ヒラカワの日常
自由が丘で、珈琲屋に入って
長閑な時間のなかで本を読む。
カウンターの向こうの薬缶から立ち上ってくる湯気がいい。
つかのま、外の寒さを忘れる。
自慢じゃないが、俺は寒いのがまるで駄目なのである。
許されるなら、日がな布団の中で丸くなっていたいのである。
寒さの冬は、震えて眠れ、か。

夕刻は稽古の予定をしていたのだが、
急用が入って本日も空手の稽古に出られない。
来週は米国行きがあるので、戻ってから本格的に始めようと思う。

夜、自由が丘で借りてきた『善き人のためのソナタ』を見る。
中野翠さん一押しの映画で、
阿部君からも進められていたものである。
噂にたがわぬ、よい映画で、
骨太とは、こういう映画を言うのだろうと思う。

政治家が「骨太の方針」なんていうときは、
どこか内容の空疎を、過大な言葉で飾っているようで
信用できなかった。
小泉―竹中路線の時代の「骨太」のおかげで
俺の中では、この言葉が安っぽいものになっていたのだが、
今回の映画で、言葉が息を吹き返したのである。

話の内容は、ベルリンの壁の崩壊の前後にわたる。
国家保安省(シュタージ)による国民監視をモチーフにしたドラマであり
多分に政治的な要素が濃い内容なのであるが、
そして、こういった主題を扱うと得てして
起伏の乏しい、定型的な政治劇になったりするのだが、
三十代の若い監督は、この映画を
普遍的な人間の彫りの深い心理劇に仕立て上げている。
大変抑制の効いた撮り方をしており、それが
映画全体に張りつめた緊張を与えている。
こちらは、ただひりひりとした気持ちで凝視するだけである。

亡くなってしまったそうであるが、監視役の主演俳優ウルリッヒ・ミューエの
演技が凄い。いや、人間の心理の肌理を、これほどの稠密に
描き出すのを見ていて、演技を超え出てゆく
表現の力を感じざるを得なかった。
社会主義国家に従順かつ清廉なシュタージの役人が、
体制に批判的な舞台演出家を盗聴監視しているうちに、
監視している対象の側に心を奪われ
職務と気持ちが乖離してゆく。
それを、微細な表情の変化で表現してゆくのだ。
歴史の大きなうねりが、一人の人間の心理の変化の中に凝縮される。

こういう映画が出てくる
ドイツという国の底力を感じてしまう。
アメリカ映画は言うにおよばず、
最近の日本映画もまた、ほんとうに語るべきことを語るという
アーチストの飢餓のようなものが、希薄なのだ。
あざといというか、小手先というか。子供だましというか。
日本人を代表して(誰にもたのまれてはいないけれど)
暫く反省する。







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最終更新日  2008.02.11 07:20:26
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